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07 拠点確保と半七親分

 ホテルで朝食を取り終えた私は、タクシーを拾っていた。

 さすが高級ホテルだけあって食事も一級品でしたね。

 車で揺られてると、眠くなってしまいましたが、そのタイミングで目的の場所についたようでした。

 車から降りると目の前にそびえたつのはファイナンシャルシティビルディング。

 そう、私はこのビルに戻って来たのである。

 その目的はと言うと……。


 ★★★★★


「いずみ、何の用事だい?私はこう見えても忙しいんだけどな」


「あははごめんね、誠司さん。うんとね、用件はさ、私、今住むところがないのよ。でね誠司さんが持ってる使ってない別荘を貸してくれない?」


「別荘?それはいいが……実家には帰らないのか?」


「うーん、あの家はちょっと帰りづらくてね……」


 実際問題として私は家族……両親と折り合いが悪い、だから積極的に会いたい相手では無かったりする。

 なのでずっとホテル暮らしをする事も考えましたが――。

 やっぱりホテルに長期間泊まるのはなんとなーく気が引けるのよね。

 なんでだろう?


「そうか、まあ空いている別荘なら幾らでも貸してやるが何処が良い?軽井沢か?それとも葉山のか?」


「うーんと、そうね。その二つもいいんだけど、ほら、おじい様が佐倉に別荘を持っていて、一緒に行ったこともあったじゃない?覚えていないかな?アソコってまだあるの?」


「佐倉……?あぁ、あの古い武家屋敷か、そう言えば祖父が好きだったな。まだ手ばなしてはいないと思うが……。もう何年も行ってないぞ?本当にあの場所でいいのか?」


「うん、あの場所がいいの。軽井沢より東京に近いし」


「……わかった、いずみがそういうなら手配しておく」


 そう言いながら誠司さんは溜息を吐いたのでした。


 ★★★★★


 私は、久々に佐倉の別荘へと来ていた。

 誠司さん曰く、ここ何年も誰も来ていない、との事だったけど、それでもキッチリ管理はされていたらしく荒れている様子はなかった。

 私はなつかしさに駆られながらも、管理人に手渡された鍵で扉を開ける。


「ガラリ」


 そんな音を立てて、開いた扉の向こうも私の記憶にある通りだった。

 内装は昔ながらの日本家屋。

 なんでも江戸時代が終わるまでは本当にお武家さんが住んでいた、本物の武家屋敷らしい。

 それをおじい様が買い取って、別荘として使っていたってわけだ。

 そして私はおじい様が使っていた部屋をまず覗いた。

 幾つもある本棚にはおじい様が好きだった時代劇の本が多数並べられている。

 こっちの棚は池波で――こっちは……あ、半七捕物帳だ。

 思わず手に取るとさらに驚く事があった。

 奥付が昭和二十五年?

 うわっ、古。

 まさか初版じゃないでしょうね?

 本棚にある本を改めて見回す。

 どの本も古めかしい。

 若しかしてこれ皆、初版本?

 はえー、それは知らなかったな、さすがおじい様。

 これだけ本があれば暇つぶしには事欠かないわね。

 久し振りに半七親分の推理に酔いしれるのも良いかもしれない。

 本棚にはある本には薄い埃も被ってはいない。

 どうやら定期的に清掃はされているようだった。

 他の部屋も覗いてみたけど、ちゃんと洗濯機や乾燥機、電子レンジや大きな液晶テレビなどもあり、文明の利器が用意されている。

 短期滞在だけではなく、長期間暮らす分にも申し分のないようね。

 そんな事を思いながら、各部屋をみて回っていると、


「本当に今日からここでお暮しになるのですか?」


 と、管理人が声を掛けてきた。


「ええそうよ」


「了解致しました、宜しければ家事などはこちらで人員を手配致しますがどうされますか?」


「ありがとう、お願いするわね。あぁそれと、滞在は長期になると思うからそのつもりで」


「畏まりました」


 一瞬驚いたような顔をした管理人でしたが、スグに頷く。

 これだけの家を維持するには、それなりにお金が掛かってそうだよね。

 と言っても、ウチの一族からしたら対した事ない金額なのでしょう。

 この管理人にも、それなりの金額が支払われているはずです。

 お金があれば、大抵の事は実現出来てしまうし、通常の手段では時間が掛かる事も、お金の力で短時間で出来てしまう事が多いのは私も異世界で経験済だ。

 まぁ言ってみればセレブの世界よね。

 こっちの世界のお金は、厳密にいえば私の物じゃないけど、今の誠司さんなら私が頼めばなんでもやってくれるから同じこと。

 そんなこんなで私は住む家を手に入れたのでした。


 ★★★★★


 次の日の朝、私は朝食を食べていました。

 献立は紅茶にトースト、ハムエッグです。


「別に気にしてないから、これでも十分美味しいですよ?」


「す、すみません」


 そう言って頭を下げるのは、管理人が手配してくれて、今日の朝から来てくれたお手伝いさんです。

 なんでも食材は既にあるものだと思っていたらしく、何も無いことが分かると慌てて何処かから材料を持ってきて作ってくれたのが上記のメニューというわけでした。

 まぁこれでも十分美味しいけどね。

 とはいえ、若干の物足りなさは残る。


「ちょっと良い?明日からはご飯でお願い出来る?」


 そう、物足りなさの原因はご飯が食べたいからなのでした。

 なにせ異世界にいる間はご飯……お米はなかなか食べられなかったのです。

 一部地域では食されていて私も食べる機会がありましたが、味は好みに会わず――、はっきりと言うと不味い物でした。

 まぁこっちの世界で言えばタイ米に近い感じだったのかな?

 お米が食べられる、と期待した分とてもとてもガッカリしたのを覚えています。


「は、はい。お好みのメニューは御座いますか?」


「そうねぇ……ご飯と味噌汁、あとのおかずは焼魚とか?和風が良いです」


「和風ですか……、分かりました!」


「足りない調理器具があれば買っても良いから。炊飯器みたいなのも必要なら買ってくださいね?」


「はい。たしか外国暮らしが長がかったんですよね、私、頑張っちゃいますから楽しみにしててください」


 そうそう、管理人にはそう言う設定にしておいたんだっけ。

 しかし頼もしい。

 この方の料理の腕は知らないけど、私の楽しみが一つ増えたのでした。

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