04 イベントがやってきた
私は貰った100万をもって会社からでると、服屋を探した。
何と言ってもこの服装は目立つ。
19世紀にいるヨーロッパ貴族のような格好だしね。
と言っても私はドレスではなく、動きやすいパンツ姿だけど。
服を着替えたら、次は久々に現代の食事でも……、などと考えていたその時。
少し先に人だかりが出来ているのに気が付いた。
ん?警察の人もいるね、なんだろう?
何かの事件かな?
私はあたりにいる人を捕まえて尋ねる。
「これ、何かあったんですか?」
「ん?俺もニュースで知って、駆けつけてきたんだ。ほらこれだよ」
そう言ってスマホを見せてくれる。
『――大使館を占拠したグループの目的はまだ分かっておらず、また、大使の安否もまだ不明です』
ふむ、そう言えばこの先に以前から大使館があったような気がする。
「ふーん、ありがとう。そんな事件が起きてたんだ」
私はお礼を言いながらも、頭では別の事を考えていたのだった。
★★★★★
現代に戻ってから思っていたことがある。
異世界で手に入れた力は、一体どの程度この世界で使えるか?
先程使ったスキル――【カモフラージュ】や【洗脳】、そんな力だ。
異世界では勇者の一人として基本的に偉い人に使われることが多かった。
でも――こっちに戻ってまで、そんな生活は嫌。
戻った時から、これからは出来るだけ好きに生きて行こう、そう思っていた。
とはいえ、人里離れた山奥で、人に関わらず仙人のように生きていたいわけでは無い。
もともと、私は野次馬根性というか、事件などに首を突っ込むのが好きだ。
以前人にこう言われたことがある。
『貴女が係わらなければ、もっと穏便に解決していたのに』
……そう、私は内部から物事をひっかきまわすのが好きなタイプなのだ。
そして私には、異世界で身に付けた様々なスキルがある。
なので、この事件にも係わる事に決めたのでした。
私は大使館に最も近い場所へと移動する。
「ダメダメ、もっと下がって!」
勿論建物に近寄れるはずも無く、警察官が規制線を張りながら声を張り上げて野次馬を近づけさせないようにしていました。
私はその警察官の視線が別の方向を向いた隙にスキル【カモフラージュ】を使用した。
そして透明になった私は、規制線を超えると大使館の建物に向かって走り出す。
そのまま玄関から建物に入る――わけは無く、建物の裏に回る。
さすがに正面から入るのは不味いでしょ。
犯人グループはきっと武装しているだろうし、急に玄関扉が空いたら問答無用で発砲しかねません。
なので私は裏に周り、建物の中に入れそうな場所を探したのです。
幸い、空いている窓を見つけたので、人がいない事を確認してから内部に入る。
ここは……調理場みたいね。
包丁を見つけて一瞬、手に取りかけるが辞めておく。
この世界の刃物に頼るより、たぶん素手の方が強いと思うし、もし私の素手での攻撃が通用しなさそうなら、そのまま逃げてしまおう。
私は建物の中を出来るだけ足音を立てないように進む。
暫くすると、広間のような場所で、人影が見えた。
ふーん、武器を持ってるのが5人……ね。
しゃがんで、手を頭に乗せている人達が10数人、それを取り囲むように銃を持って立っている人達が5人。
なんとも分かりやすい。
そして幸いな事に、【カモフラージュ】の効果はまだ切れる様子がない。
私はそのまま足音を立てずに近づくと、そのまま一人に軽めのパンチをお見舞いした。
「ガッ――」
声にならない声を上げ、相手はそのまま倒れ込む。
素手で戦闘を行う【格闘スキル】はやっぱり通用するみたい。
ここで通用しなかったら、人質になっている人達には悪いけど、そのままスタコラさっさと逃げる予定だったのだ。
自身の【格闘スキル】が通用すると分かった瞬間、私はそのまま次の相手にターゲットを移す。
はい、二人目。
「ウッ――」
はい、三人目。
「グェ――」
はい、四人目。
「アッ――」
と、順調だったのはここまで、四人目を倒す瞬間、【カモフラージュ】の効果が解けてしまったのでした。
急に現れた私の姿をみて、離れた位置に居た最後の一人が何事かを叫びながら銃を構えようとする。
あ、やばいなこれ。
私はそれをみた瞬間、スキル【気孔弾】を使用していた。
このスキルは手の先から『気』と言われる何かを放出して、敵を攻撃するスキルだ。
威力はソコソコで離れた敵を攻撃出来るのはいいんだけど、これは再使用時間が割と長めなので連続使用出来ないのよね。
「ホワッ――」
幸い銃の引き金を引く前に私の【気孔弾】が命中し、後方に大きく吹き飛んで壁に激突すると動かなくなってしまった。
私はそれを見て「ふぅー」と息を吐いた。
そして周りを見渡す。
周りの人達の様子はというと……突然の出来事にビックリしているようね。
『皆さん、大丈夫ですか?』
私はとりあえず英語で話しかけたみた。
あ、日本の大使館に勤めている人達だから日本語でも大丈夫だったかも。
でも、あっけに取られていた人達は、私が話しかけた事によって状況を理解したみたい。
「オー!!」
「サンキュー!!」
などといった歓声が一斉に湧き上がる。
そして一人の女の娘が何かを言いながら私に抱きついてきた。
歳は高校生ぐらい?
正直外国人の歳はよくわからないが、私より若いのは確実っぽい。
そして涙を浮かべながら、早口で何かを捲し立てる。
えっと……これは英語、じゃないか。
うーんとドイツ語かな?
ドイツ語は学生の時、第二外国語で取っていたので少しは分かるけど……。
さすがに二十年以上も使ってないうえに、こう早口で捲し立てられると聞き取れません。
なので私は、
『もう少しゆっくりと話してください』
女の娘の顔から涙を優しく拭いながら、そう話しかけるのでした。




