34 突然現れた人物
私は今とあるお屋敷を目にしていました。
先程のパトカーが壊した門から数百メールぐらいかな?
そのぐらい歩いてやっと見えてきたお屋敷です。
幾ら東京都内から離れた場所とはいえ、結構な敷地面積がありますよね。
などと、私も自身の本家が日本では有数のお金持ちなのを棚に上げつつ、そんな事を思っていました。
目的の場所を目にした私の歩みも自然と早まります。
そして、そのお屋敷まで残り10数メートル、そのぐらいまで近づいた所で、前方から音が聴こえてきました。
大勢の靴音と、そして何匹かのワンコの声がします。
暫くして前方から武器を手にした大勢の人影が姿を見せると、私に向かって声が掛けられました。
「止まれ。お前は何者だ?」
なんか以前にも聞いた事がある台詞です。
こういう人達は同じような事しか言えないんでしょうかね?
何度問われても、残念ですが自己紹介はしてあげません。
「あら、私の事を他の方から聞いてないの?折角パトカーを飛ばして急いで来てあげたのに」
「パトカー……だと……?」
「えぇ、そうよ。偽物だったからか乗り心地はイマイチだったけど。だから、そこを通して欲しいんだけど?」
「……何者か分からん者を通すわけにはいかん」
「それは残念。でも、まぁいいわ。ソレだったら勝手に通るから。ここの主人にわざわざ会いに来てあげたのよ」
「それで不審者を、はいそうですかって通すわけないだろ」
そう言って中央で通せんぼしているのは、ここの集団のリーダーさんかな?
なかなか凄みのある風格を漂わせています。
ここまで対話を重ねたのに関わらず、通す気はないようですね。
私は対話を諦めて、先程の声を無視して足を一歩進ませたところで。
何という事でしょう!
1匹のワンコが激しく吠えながら、私の元へ向かってきたではありませんか!
私は心の中で、ゴメンね?と謝りつつ、自身に向かって飛び掛かって来たワンコを、軽く蹴り飛ばしました。
私の足は見事にワンコの顔面へクリーンヒットすると、ワンコの大きな口から、尖った歯と血が勢いよく飛び出していくのが見えました。
そして、その歯と血をあたりに飛び散らせながら壁にぶつかるとおとなしくなりました。
よーくみるとヒクヒクと動いているので、死んではいないようです。
よかったぁ~。
死んじゃったら寝覚めが悪いもんね。
以前同じような状況でワンコを銃で撃ち、死なせてしまったことがありましたが、あの時に少し、ほんのすこーしだけ心が傷んだのです。
「ペットはちゃんと管理してないとダメじゃない。危ないわよ?」
私はそう言ってニコリと微笑んであげます。
危なかったけど、私は気にして無いから安心してね?
そんなメッセージを込めた笑顔だったのですが……。
私のそんな気持ちを彼等は理解してくれなかったようですね。
暫くの間、男達は壁にぶつかったワンコを惚けたような顔でじっとみつめていましたが、ゆっくりと私に視線を向け始めると、無言で手にした各々の武器を構え始めます。
その様子をみた私は、はぁ、またこの展開か、そう思って溜息を吐きました。
私は別に積極的に闘いたいわけじゃないのに、なんでいつもいつもこうなってしまうんでしょうか。
そんな時です。
彼等の後方から声が上がると、人垣がゆっくりと割れ始めたのですよ。
例えると、映画で何時か見た、モーゼが海を割るシーンみたいな感じです。
そしてその割れた人垣の奥から仕立ての良いダークスーツを来た人物がゆっくりと歩いてきました。
その人物はそのままゆっくりとした足並みで、私の前にたどり着くと、お辞儀をしました。
ほほぅ。
誰だか分かりませんか、この方はちゃんと礼儀を弁えた人のようですね。
私もお返しとして一礼します。
頭を上げた所でその人物は言いました。
「主人に貴女様をご案内するようにと言われております。このまま私に着いてきて頂けませんか?」
「……それは願ったりかなったりだけど、この周りの人達は大丈夫なの?貴方に着いて行って、背を向けたとたんに後から攻撃されるとか嫌なんだけど?」
私がそう指摘してあげると、その人物は苦笑しながら言いました。
「この者達がお客様に対して既に失礼な事をしでかしてしまったみたいですね。主人に変わって改めてお詫び申し上げます」
そう言って再度深々と礼をしてくれます。
そしてその人物は周りの人達を一瞥した後言いました。
「君たちの先走った行為は主人に伝えなければならん。そしてその行為に対する主人の君たちへの評価は追って伝えられる」
「そ、そんな……じ、自分達はただ職務を……」
そんな事を言いながら先程のリーダーさんが地面にへたり込みました。
そして尚もブツブツと何かを呟いています。
「これでご安心なされましたか?一緒に着いてきてくださいますね?」
そして改めて私の方へ向き直ると顔に笑みを浮かべながらそう仰ったのです。
「……良いでしょう。着いて行きます」
こうして私はこの人物について行くことになったのでした。
はてさて、鬼が出るか蛇が出るか楽しみですね。




