30 突然の出来事
その日の事、私は珍しく外出をしていました。
いくら読書好きとは言っても、さすがに毎日部屋に引きこもっているわけではありません。
たまにはこうして外出し、お日様の光を一杯浴びないと病気になってしまいますからね。
目的も無くブラブラするのも、たまには良い物です。
途中、眼についた本屋に吸い込まれるよう入ると、時代小説コーナーを確認します。
今日は双葉文庫の発売日なのかな?
双葉文庫のの本が平詰みになっていました。
あまり、メジャーじゃないかもだけど、双葉文庫の時代小説もナカナカいいのよね。
あ、『おれは一万石』の新刊だ!
私はその本を含め、眼についた時代小説を幾つか見繕うとレジへと並ぶのでした。
そして買い物を終えた私は、お店を出て暫く歩みましたが……。
うーん。
なーんか嫌な感じがしますね。
この感じは人の悪意です。
別に恨まれるような事はしてないんだけどなぁ。
などど思っていた所で、私は立ち止まりました。
なぜなら目の前に、とある男性が私の前に立ちふさがるように立っていたからです。
一見するとなんの変哲も無く、普通に見える男性。
しかしその目は違いました。
なんとなく暴力的なモノを感じさせるその目で私はじっとみつめられます。
おや?
こんな真昼間からイベントの到来かな?
そんな事を思っていると、案の定男性が話しかけてきます。
「すみません、お嬢さん――」
何か話しかけてきましたが、私はその男をスルーすべく足を早めて脇をすり抜けようとしましたが――。
私はガシっと手を掴まれると同時に手首に鉄のワッカが嵌められます。
そうです、所謂世間一般には手錠という名前で知られているやつです。
よく状況を飲み込めない私に対して、その男は自身のポケットから定期入れのような黒っぽいモノを取り出すと周りに向かって言いました。
「警察のモノです。いま通報のあった被疑者を確保しました。暴れるかも知れませんし危険ですから皆さんは離れてください」
はー?
暴れて危険って何よ?失礼な人達ですね。
私はクマか何かのかな?
と、思った所で黒塗りの車がスゥーっと近づいてくると、男が一人降りてきて私に向かって囁きます。
「アンタ強いらしいな。だがここで抵抗すると周りに被害がでるぞ?それは困るだろう?」
そう言ってニヤニヤと嫌らしい顔をする二人組。
むー。
次はこんな絡め手できましたか。
でも私は別に周りに被害が出ても構わないんだけどな。
そう思いましたが、取り敢えずここはおとなしくする事にしました。
なぜなら私を何処に連れて行こうとするのか興味があったからです。
まさかとは思うけど本当に警察じゃないだろうし。
そして特段の抵抗もせずに車に乗せられました。
「皆さん、ご協力感謝します」
そんな声が聴こえると、二人とも車に乗り込み動き出します。
私は無駄だと思いつつも、尋ねてみました。
本物の警察の可能性もあるし一応ね?
本物の警察だとしたら、暴れると誠司さんに迷惑が掛かるだろうし、そうなるとちょっぴり私の心も痛むのです。
「ねぇ?逮捕状とかあるの?あるんなら見せて欲しいのだけれど」
昔みたドラマの知識です。
たしか『踊る大捜査線』とかいうドラマだったかな?
織田裕二が演じる青島さんが犯人を逮捕するときにそんなモノを見せていた記憶があります。
「逮捕状なんてないさ」
男は相変わらずのムカつくにやけ顔をしながら言いました。
「なんで?」
「知らないのか?現行犯逮捕には逮捕状は必要ないんだよ」
「現行犯?どんな罪の現行犯なの?」
「ふん、説明する必要は無いな」
「へー、じゃ説明できないって事でいいの?」
やっぱりこの男達は本物の警察じゃ無さそうね。
じゃ、とっちめても誠司さんに迷惑がかかる事は無いんだ。
私は安心して、クスリと笑いました。
すると私のその態度が気に入らなかったのか、
「少しは黙ってろ」
そう言ってニヤニヤ嫌らしい不快な笑み顔に張り付けたまま自分の足を上げ、私の靴の上に置くとグリグリと踏みつけてきます。
ちょ、靴が汚れるじゃん!
実の所私は、偽警察だと分かってもこの直前まではおとなしく車でドナドナされるつもりでした。
本当ですよ?
どこに連れていかれるか、興味があったんですから。
でもこの男にされた仕打ちに、我慢が出来なくなってしまいました。
なので私は、
「えぃ!」
そうやって掛け声を上げると両腕に力を込めて手錠の鎖を引きちぎりました。
スキル『物理攻撃力アップ』のお陰で、私はとてもとても常人では真似の出来ない力を発揮できるのです。
この位、本気を出せばわけがありません。
そして、私の異常な行動をみた二人の男は、
「えっ!?」
「う、うそだろ?」
と、先程までの勝ち誇った態度は何処へいったのやら、情けない声を上げました。
私は自由になった腕を使って相手にパンチを叩き込みます。
その瞬間、車内にとてもとても大きな声が響かせてくれました。
そしてそのまま男はだらしのない顔をして伸びてしまったようです。
私はそんな男のポケットをごそごそとあさります。
あったあった。
目的のものは無事に見付かりました。
手錠の鍵を探していたのです。
そして無事鉄のワッカを外した私は、いまだに『信じられない』そんな顔をして車の運転をしている男の頭の頭を優しく掴むと言いました。
「このまま私を連れて行くはずだった場所まで運転してくれないかしら?勿論安全運転でお願いするわね」
そんな事をいいつつ、掴んだ頭に少し、本当にホンの少しですよ?
力を籠め始めました。
そんな私のお願いを運転手は何やら言葉にならない声を上げながら、コクコクと頷くとそのまま運転してくれます。
その様子をみた私は優しく微笑むのでした。




