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28 ビデオチャットって便利だね

 私の意見に二人とも賛同し、早速ゲルトルートが父親に連絡を取ってくれました。

 そして今、私達の前にはその方がいます。

 と、いっても実際に目の前にいるわけではありませんよ?

 何と言っても今、ゲルトルートの父親は遠い欧州にいるんですから。

 そんなゲルトルートの父親に面と向かって話しかけられるのはビデオチャットと言われる文明の利器のお陰です。

 私のいなかった20年の間に、世の中は便利になった物です。

 そんな画面の向こうの彼は、怯えたように見える暗い顔をしていました。


「初めまして、バルナさん。では早速ですが話してください。この私達の手元にある『前国王の遺言書』は本物なのですか?勿論、私達も正式に公表されるまで秘密にされるもの、という事は分かっています。でも実際に今現在こうして私達の手元にあるのですから、秘密は秘密ではなくなってますよね?どうでしょうか?正直に教えてくれませんか?」


 私がそう切り出すと彼は暫く何も言わずに私達を見守っていた、ように見えました。

 そしてしばしの沈黙の後、やっと決心が付いたのか力のない声で言いました。


「そうですね。貴女の言う通りだ。それに貴女――今井いずみ様には娘を救出してくれた御恩もあります」


 そう言って画面越しにペコリと頭を下げるバルナ氏。

 そうそう、私は恩人なんだからさ、なんでも隠さずにしゃべっちゃってね。


「では教えてください。コレは本物?」


 そんなストレートな私の物言いに対して、


「……そうです」


 バルナ氏はやっとと言う感じで言いました。

 ふーん。

 じゃ、これはやっぱり本物の国王の遺言書決定ね。

 それを一緒に聞いたエディタやゲルトルートが息をのむ。


「この遺言によればエディタの選んだ、三人の殿下のうち一人が国王になるような事が書いてあるけどどうしてなの?」


 まず一番聞きたいのがこれです。

 ですが帰って来た答えは私達の期待を裏切るものでした。


「そ、それについては私も大変驚きました。エディタ・ヴェッシャー様は母親が先々代陛下の娘とはいえ継承順位的には決して高い順番では無く、そのような方の名前が出てくるのは想定外です。ただ――」


「ただ?」


「……はい、ただ、前国王陛下はエディタ様の母親であられるマルガ様の事を大変気にかけておいででした」


「そうなの?」


「はい、元々、マルガ様のお相手に関しても爵位の無い者は王族のお相手に相応しくない、そんな意見が多数だったのですが、マルガ様が見初めた相手だから、と言う事でまだ国王になる前の前国王陛下が必死に兄君であられる先々代陛下を説得し、婚姻が決った、と聞いています」


「そ、そんなお話し初めて聞きました……」


 エディタが知らなかった、と小さく呟きます。

 新しく新情報が入ったけどそれだけでわざわざ遺言書にエディタの名前を載っけるのかな?

 それも3人の候補と結婚させようとして、結婚した相手が国王になるんでしょ?

 あまりに不自然でなりません。

 結局、この件に関してバルナ氏は何も知らないも同然なのね。

 私は半ばガッカリしながら二番目の質問に移りました。


「では次の質問なんだけど……『デルブリュック・ロイス・ユンゲレリーニエ』って人は何者なの?遺言書によると3人の殿下の次に有利な立場にいると思うんだけど?」


 先の質問のように余り詳しい情報は帰ってこないんだろうな。

 と、思っていた私でしたが、この質問の効果は絶大だった様です。


「……『デルブリュック・ロイス・ユンゲレリーニエ』」


 そう呟くとバルナ氏は押し黙ってしまいました。

 なぜでしょうね?

 どうもエディタの場合とは違い、何か事情をしっているようです。


「エディタにも聞いてみたんだけど、まったく聞いた事ない名前の人みたいね。そんな人が3人の殿下の次に有利な立場にいるのが不思議じゃないかしら?」


 そんな私の言葉の後に、エディタも言葉を続けました。


「そうですよ、ユンゲレリーニエの家はかなり前に王家から別れた家のはずですよね?一応王族の末席とは認められ、ロイスの家名を名乗る事を許されていますが、そんな方が王位につく可能性があるなんてとてもとても不自然でなりません」


「それは――」


 バルナ氏は何かを言おうとして急に言葉につっかえたように押し黙りました。


「だ、そうよ?それでもう一度聞きますけど『デルブリュック・ロイス・ユンゲレリーニエ』とは何者ですか?前国王とどんな関係があるのですか?なぜ遺言書に名前が出てくるのです?」


 私がそこまで言うと、バルナ氏はビデオ越しでも分かるぐらい深い溜息を吐きました。

 それからハンカチで顔を拭き始め、それでやっと落ち着いたのか口を開きます。


「『デルブリュック・ロイス・ユンゲレリーニエ』、その方はよく存じております。前国王陛下がその方を遺言書に記した理由も。『デルブリュック・ロイス・ユンゲレリーニエ』は――」


 そこで言葉を切ったバルナ氏は、今更のように辺りを伺うとやっと、と感じで言いました。


「前国王陛下の血を引いておられるのです」


「えっ!?って事はつまり――」


「そうです、前国王陛下の御子であられます」


 そんなバルナ氏の予想外の言葉に、私達は3人はお互いの顔をじっとみつめるのでした。

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