16 こんなこともあろうかと
「妹の安否を確認すると言っても、具体的にはどうされるのですか?」
まぁ普通はそれが一番気になるよね。
でも私には良い方法があるのだ。
「少し待っていてね」
私はそう言うと、一旦部屋の外に出て、辺りをキョロキョロと見回します。
よし、だれもいないな。
私は一人頷くと、おもむろに空中へと手を伸ばしました。
すると手の先が少しずつ消えていきます。
これがスキル【亜空間収納】です。
そして吸い込まれた手をさっと大きく動かすと、何もない空間にホログラムが浮かび上がるように、幾つかの荷物が表示される。
たしかしまってあったはずだけど――あったあったこれだ!
私は笑みを浮かべながら目的の物を取り出しました。
そしてソレを手に持ったまま、二人が待つ部屋へと戻ります。
「いずみ様、それは……?」
机に置くと、二人はソレをじっとみつめました。
が、なんだか分かっていない様子です。
「これはね、風水羅盤と呼ばれる物よ」
「風水って……あの?中国で発祥したという占いの?」
「あ、私も妹と一緒に見た香港映画でそんな感じのを見た事があります。でもこれは中国の文字?ですか?」
を、眼の付けどころがシャープですね。
勿論中国文字じゃありません、異世界文字です。
でもメンドクサイのでそこは説明しません。
「えっとね。これはね。普通の風水羅盤とはちょっと違うのよ。まぁ見てなさい」
不思議な顔をしている二人を後目に、私は風水羅盤に手を静かに置いた。
これは異世界製の特別な『風水羅盤』と、呼ばれる物です。
アストラルコーティングという私には説明が難しい技術で作られていて割と便利な機能が備わっています。
その一つに『失せモノ探し』という機能があって、今から実演するのはソレです。
私はもう片方の手で封筒から髪の毛をホンの一房ほど取り出すと、風水羅盤の上におきました。
すると中央のコンパスがクルクルと不規則に回りだして――暫くすると一方向に固定されます。
「妹さんは向こう側にいるわね」
私はドヤ顔でコンパスが指し示した方向に向けて指をさしましたが――。
あれ?
どうした事でしょう、二人は呆然としたまま無反応です。
暫くしてやっとゲルトルートが口を開きましたが、
「そ、そんなので本当に妹の居場所が分かるのですか?」
などとおっしゃってくれました。
むー。
失礼な方ですね!
「これは特別製だと言ったでしょ?この風水羅盤にはね、同一の物体から分かたれた物を指し示す機能があるのよ。これは妹さんから切り取られた髪の毛でしょ?コンパスの先にはこの髪の毛から分けられた物、つまり髪の毛が途中で切り取られた妹さんがいるはずよ」
私の説明を聞いて、二人とも一応納得したような顔をしている。
まぁこの風水羅盤の機能はそれだけではないんですが、今は説明する必要も無いでしょう。
「納得した?では二人とも準備して。このコンパスが指し示す場所に行ってみましょうか」
私がそう言うと、エディタは満面の笑みを浮かべて、ゲルトルートは半ば困惑したような顔でそれぞれ頷くのでした。
★★★★
そこは中央線の最寄駅から数キロほど離れた場所に立てられた、とある住宅でした。
高さが数メートルはある、一般の住宅より高い壁に囲まれた家。
外見からでも広い庭があるのを察せられます。
そうです、コンパスが指し示す先はこの家になっているのです。
結構な広さの家のわりに、正規の入り口と見られる鉄製の門の前には表札も掛かっていません。
如何にもぁゃしぃ雰囲気をプンプンと漂わせていますね。
おそらく近所の人達も普通の家じゃないって思っているんじゃないでしょうか?
そんな家を私達三人は監視するにはちょうど良い場所に立てられていたマンションに入り、上から遠巻きにじっとみつめています。
「ここ、人通りがあまりありませんね」
「そうですね、これではうかつに近づけません。いずみ様、これからどうされますか?」
「うーん、そうねぇ……」
コンパスは確かにあの家――正確には敷地を指し示しています。
普通に鉄製の門を叩いて『こんにちわ、そちらにバルナさんの妹さんがいますよね?迎えにきました』
なーんて言っても帰してくれるはずはないですし。
と、なるとひそかに忍び込んで――って感じになるんだけど結構な広さの家です。
部屋を一つ一つ探すのも大変そう。
それに、駅から少し離れているとはいえ、このような広い家を建てているとなると、それなりに財力がある事を物語っています。
普通に考えて、警備かなにかあるんでしょうね。
どうしよっかな。
しばらく考えてみたけど、良い方法は思いつきません。
なのでシンプルに行くことにしました。
「私が何とかしてみるから、貴女たち二人はここに残っててね」
「えっ!?なんとかって「分かりました」」
ゲルトルートは不安そうに何かを言いかけますが、エディタがその不安を打ち消すように言葉を被せました。
エディタの顔はなにかものすごい期待で一杯になったような感じです。
……そうだった、エディタは私のことをNINJAと勘違いしてるんだっけ……。
まぁNINJAも勇者も一般人に取っては余り変わらないと思うけどさ。
なんだかなぁ~。
私はそんな気持ちを隠すように作り笑いを浮かべると、二人に手を振りながらコンパスが指し示す家に向かうのでした。




