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14 またしてもイベント発生!

 登場人物紹介


今井いずみ……主人公。異世界で20年程勇者として過ごした後、元の世界に返ってくる。

エディタ・ヴェッシャー……駐日大使の娘。

ゲルトルート・バルナ……エディタの学友。






 ★★★★






「それで?私への相談ってなに?」


 私達は誠司さんが用意してくれた一室に入り、それぞれの前にお茶が配られたのを確認してからそう切り出しました。


「はい……それでは――ゲルトルート、私に相談した内容をいずみ様にもお話しになってあげて」


 ゲルトルートというのはロビーで一緒になった少女です。

 名前はゲルトルート・バルナ、エディタのご学友みたいですね。


「えっと、はい……。実はこのような物が私宛に送られてきました」


 そう言って、震える手でカバンの中から大型の封筒を取り出すと、私に向けて差し出しました。

 私はそれを受け取ります。

 そして封筒を手に取った瞬間、違和感を覚えました。

 だって中身にふわりとした得体の知れない物が入ってる感触がするんです。

 嫌な予感がしますが中身を見ずに突き返すわけにもいきません。


「開けてもいいの?」


 と、一応断りを入れゲルトルートが頷くの見てから封筒の中身に手をいれます。

 中身はと言うと――。

 きゃー!!!

 なんと言う事でしょう!

 中からは大量の髪の毛が出て来たではありませんか!


「うわっ!」


 これには私もびっくりです。

 慌てながら髪の毛を放して、封筒の中に戻します。


「な、なんなのよ、これは?」


 そう言って私は封筒ごとゲルトルートにつき返します。

 思いっきり掴んじゃったよ、気持ちわるい……。

 そんな私を笑う事も無く、ゲルトルートはその封筒に自らも手を入れると、同じように髪の毛を――では無く、紙を一枚取り出しました。

 そんなのも入ってたんですね。

 髪の毛にびっくりしてぜんぜん気が付かなかったよ。

 そしてゲルトルートはその紙のみを私に向けて差し出してきます。

 それを私は黙って受け取りました。

 えっと、これは便せんですね。

 手紙を書くのに使うアレです。

 当然のように文字が書かれていました。

 日本語――ではなく外国語、それもドイツ語の様ですね。

 えっと、何々?

 そこには読みにくい文字でいろいろ書かれていましたが、要約するとこういう内容です。


『――妹を預かっている。指示に従え』


 ほほぅ……。

 これって誘拐事件のテンプレよね?

 でもこれが以前のエディタの誘拐事件とどう重なるのか、さっぱりわかりません。

 私は便せんから眼を離すと、ゲルトルートに視線を移します。


「この髪の毛ってバルナさんの妹さんの?」


「はい、そうだと思います……。その封筒を見つけて以来、妹の姿を見かけていませんから」


 と、あいまいな雰囲気でゲルトルートは答えました。

 ふーん。

 絶対の確証はないんだ。

 まぁ髪の毛だけじゃね~?

 普通は家族の髪の毛とか送られてきても、絶対の確証なんて持ちようがないよね。

 でも実際に妹さんは帰ってこないし、状況的にその可能性は高いってことか。

 私は再び便せんに眼をやると、今度は裏まで確認する。

 でも裏にはなにも書いてなかった!


「で、指示って何だったの?」


「はい、指示はスグにメールで送られてきました。それには警察などには知らせない事、父に妹がさらわれた事を連絡する事、これ以上妹の身体の一部を失いたくなかったら、私からも指示に従うように父を説得する事などが書いてありました」


「バルナさんのお父さんにはもう知らせたの?」


「はい、私の父は今は本国にいて……スグに連絡しました」


 あー、はいはい。

 なんでそのお父さんを直接脅さないんだろう?

 って思ったけど、日本にいないんだ。

 髪の毛みたいな物証を外国に送るには時間掛かるもんね。


「父は大変驚いていました。そして『これからのことは自分に任せるように』そう言いました」


「じゃ、バルナさんのお父さんは犯人の指示にしたがって何かをしてるわけね?」


「……そう、だと思います。心配して父に連絡をとっても『大丈夫だから心配するな。ゲルトルートは出来るだけ普段通りの生活をしろ。妹の事を聞かれたら病気だと言え』そればっかりで……」


 そう言ってシクシク泣き出してしまいました。


「あぁ、ゲルトルート泣かないで。大丈夫、だいじょうぶです。私も力になりますから」


「でも、エディタ」


「話は聞いた通りです。いずみ様。警察にも頼れないとなると、もう私達にはいずみ様のお力に頼るしかないのです」


 って言われてもねぇ。


「……そのままバルナさんのお父さんに任せるわけにはいかないの?」


「女性の髪を切り落として送りつけてくるような卑劣な相手ですよ?仮に全面的に言う事を聞いても、そのまま無事に帰ってくるとは思えません!」


 まぁ、そうよね。

 何が目的か知らないけど、無事に目的を達成した後は殺しちゃった方があとくされ無さそうだし。

 という台詞が喉元まで出掛かったけど、何とかかみ殺すのに成功し別の言葉を口にします。


「だからこのまま座して見てるわけにはいかないって訳ですか」


 私は先程手に取った大量の髪の毛を思いだします。

 さっきは不意な事で気持ちが悪いと思いましたが、事情を聴くとそれなりに可哀想に思えてきました。

 髪はまた伸びると言いますけど、あの長さまで伸びるには一年以上掛かるでしょうしね。

 それに、もし別の身体の部位が送りつけられでもしたら、その時はもう取り返しがつきません。


「良いわ、協力しても。そして妹さんの無事を確認しましょう」


 仮に見付からなくても、私自身には何にも影響もない、所謂他人事、暇つぶしには丁度良いかも知れませんし。

 そんな事を思いながら自分を納得させつつ、私は自身のティーカップを口元にはこびました。

 そして立ち上がる良い香りを嗅ぎながら、「今回の『イベント』は予想外の展開になって来たわね」、そう小さく呟いたのでした

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