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12 爆誕! ジャパニーズNINJA

 扉が開いてお手伝いさんがエディタ用の紅茶を運んできました。

 既に布団から身体を起こしているエディアにニコリと微笑みながら、布団のそばにある小さな台にティーセットを置いて立ち去ります。

 エディアは自分でティーカップに紅茶を灌ぎます

 今、少し手が震えていたような?

 気のせいかな?

 エディアは紅茶を一口飲むと、それで落ち着いたのか私の方に向き直ると口を開きました。


「何が……あったんでしょうか?」


 意を決したように正面から私に問いかけてきます。

 なので私はシンプルに答えてあげました。


「貴女、誘拐されかかったのよ、やっぱり覚えてない?眠らされていたみたいだから無理はないけど」


 これにはエディタも大変驚き――と、言いたい所だったのですが、返って来た答えは意外な物でした。


「そう……ですか」


 あれ?

 あまり驚いた様子がありませんね?

 自分が狙われると知っていたのかな?

 その後、エディタは自身の身体を見回したりペタペタと触ったりしていましたが何かに頷きます。


「薄っすらとだけ……覚えています。でも私は特に怪我などはして無いようです。またいずみ様が助けてくれたのですね」


「えぇ、そうよ。と言っても、大した事はしてないですけど」


 そう、私にとっては大したことでは無かったし、実際にこういった他人のトラブルを『イベント』などどと呼んで介入するのは好きなたちなのですが、あえてそんな事は言いません。


「大した事無い……そうですか」


「そうそう。全然大した事なかったから、あまり気になさらないで」


 そう言って私はニコリと微笑みます。

 これは謙遜では無く、実際に大した事はなかったのだ。

 これでこの件は一件落着、あとはエディアが大使館に連絡してだれかを迎えによこさせて――などと考えていたのですが。

 エディタは自分自身に言い聞かすように暫くなにやらブツブツと呟いて、そして納得したように頷きながらこう言ったのです。


「そうですね、そうですよね……いずみ様はやっぱりジャパニーズNINJAなんですね!」


「うん、そうそう――って、えっ!?」


 と、トンデモ無い事を言い出したのですよ。

 !!!!!?????

 この娘は何を言っているの?

 最初は冗談で言ってるのかと思ったのですが、どうにもエディタは本気で言っているようでした。


「だって、私は確かに見たんです!大使館での事件で!いずみ様が何も無いところからいきなり現れるのを!」


 やば、見られてたんだ。


「えっと、いや……それは……」


「それに先程の事件だって!彼等は銃を持っていましたし、彼等を制圧したあと、私を抱えて結構なスピードで走る車から無傷で飛び降りましたよね!私、薬でぼーっとしていましたが薄っすらと覚えているんです!」


 私はそれには答えずに微笑みながら静かに紅茶へ口を付けました。

 そして、不味いことになったなぁ、やっばいなぁ、どうしよっかなぁ。

 と、頭を悩ませていました。

 正直に『私は異世界を救った元勇者で、特殊なスキルを幾つも使えるんです』

 なーんて言っても頭オカシイ人に思われるだけですよね。

 でもだからってNINJAってのも……。


『そうです、よくわかりましたね。実は私、NINJAなんです』


 って、真顔になりながら自分で言う姿を想像したけど。

 ……無理むりムリ、やっぱり気恥ずかしくて言えない。

 想像するだけでおかしくて顔が火照ってしまいます。

 でも、そんな私を見てエディタは何かを勘違いしたようでした。


「……申し訳ありません。NINJAとは世を忍ぶ者と伺っております。昨日今日知り合ったばかりの私へ気軽に正体を明かしたりは出来ませんよね。今の話は忘れてください」


 そう言ってエディタは静かに頭を下げ、それでいて『でも、私は分かっていますから』

 なんて感じの笑みを浮かべます。


「えっとぉ……私は……その……NINJAでは無いです」


「はい、分かりました」


 なんだろう、この否定をしてるのに気恥ずかしい感じは……。

 それになんとなく負けた感じがするのが悔しいです……。

 ま、まぁ、それはおいて話を元にもどしましょう。


「そ、それでその――誘拐犯についてなんだけど、心当たりとかあるの?」


 そう私に問われたエディタは首を横に振ります。。


「うーん、そうですね……私も駐日大使の娘として、ある程度そう言ったテロとか、犯罪被害の可能性があるのは承知していますが、具体的にはさっぱりわかりません」


 デスヨネー。

 あー、誘拐犯の一人、運転手あたりからイロイロ聞いておけばよかったカモ。

 特にあの運転手、最後はとてもとても怯えていたからチョット脅せば沢山喋ってくれたような気がする。

 でももう後の祭りです。

 まぁ生きていれば警察あたりがイロイロ聞き出してくれるんじゃないかな、生きていれば。


「そう……なんだ。若しかして、誘拐犯から何か聞き出しておいた方がよかったかしらね」


「そうですね、でもあの手の実行犯は基本的に何も知らないと思いますよ」


「まぁそうかも。下っ端はいつだって何も知らされないから。問題は命令した黒幕って所か」


 そんな事を言って自分を納得させつつ、私は自身の空になったティーカップへポットから新たに紅茶を灌ぎました。

 そして立ち上がる良い香りを嗅ぎながら、「『イベント』はまだまだ続きそうね」、そう小さく呟いたのでした。

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