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10 仲間になり損ねたいずみ

 車内の3人の男達は、しばらく口をパクパクと動かしていたが、急に我に返ったようになると、何事かを叫ぶ。

 すると、車のスピ―ドが目に見えて上がりました。

 おっと、都心のど真ん中で、そんなスピードで走って大丈夫?

 そう思いましたが、どうも60キロ以上は出てるはずなのに上手く車を避けながら走っています。

 わー、すごい。

 スピードって映画に出てくるバスの運転手かな?

 運転テクニックはかなりありそうな感じです。

 でも私の事を無視したまんまってのが気に入らないですね。

 先程の私の声が聴こえなかったのかな?

 そう思ってもう一度言いました。


「それで、私は仲間にして貰えないの?分け前は9割――と言いたいけど、特別出血大サービスで半分くれればいいから」


 でもそれに対する返事はとてもとても酷い物でした。


「おい、あの女を撃ち殺せ!」


 その言葉と共に、前部座席にいた男が何処からか銃を取り出します。

 あれ?

 私が居なかった20年の間に銃刀法は大分変わったのかな?

 そんな事を思っていると、男は窓を開けて、照準を私に向けています。

 それを見た私は「はぁ~」と溜息を吐くと、その手をガシっと掴んであげました。

 そしてそのまま手に力を込めます。


『ベキィ』


 そんな聞きようによっては心地の良い音が耳に届きます。

 それと同時に、銃を私に向けていた男が、車内で良い声を大声で響かせました。

 声は良いけど、音程が酷く乱れています。

 音痴ですね!

 私は音痴な声をいつまでも聞いていたくなかったので、そのまま手を引っ張ると車内の男を窓から出して手を離してあげました。

 後ろを振り返り確認すると、男はアスファルトの地面に対して背中から華麗に受け身を取り、空気の抜けたボールのように十数センチほど数回バウンドするとそのまま動かなくなってしまいました。

 そんな所で寝てるとあぶないよー。

 って思った傍から大きめのトラックに轢かれている所を目撃します。

 ほらね?

 私は次に後部座席側の扉に両手を掛け「うんしょ」と言う掛け声と共に思いっきり扉を外側に引っ張った。

 すると言葉に出来ない様なものすごい音がして扉が開きました。

 私はその隙に開いた扉から車内に乗り込みます。

 いくらスキルを使っているといっても走っているとそれなりに疲れるのだ。

 そして凄い顔をして固まっている男に対して私はニコリと微笑むと、


「うーん、仲間にしてくれそうもないし、その娘は帰して貰うわね?送って貰う約束をしてるのよ」


 と、言ってあげました。

 すると、


「ち、近寄るな!こ、ここ、この娘を殺すぞ!」


 などと不思議な事を言い始めました。

 ????

 わざわざ殺すなら誘拐する必要ないですよね?

 オカシイです。

 なので指摘してあげました。


「え!?わざわざ誘拐したのに殺しちゃっていいの?」


 でも男は私の疑問には答えずに何処からか銃を取り出すとエディタに対して銃を突きつけます。

 ほー、本当に撃っちゃうんだ―。

 そう思ってしばらくじっとみつめていましたが、どうした事でしょう、なかなか撃とうとしないのです。


「???まだ撃たないの?」


 よーくみると男の手は震えています。

 それに引き換え、エディタの様子は何という事でしょう、気持ち良さそうに寝ていてスヤスヤという寝息まで聴こえて来そうです。

 こんなに気持ち良さそうに寝ているなら、起こすのも可哀そうかな?

 銃を撃たれたら大きな音がして起きてしまうかも知れないし、当たったら痛そうだし。

 そう思った私は少し姿勢を崩し、エディタの手をやさしく掴むと共に、両足で男の身体に対してキックを入れました。

 先程の心地よい音を10倍にしたような音がして、男の身体がまるでヨガでもしているようなポーズを取ります。

 そしてその姿勢のまま男の身体は反対側の扉に叩きつけられ、衝撃で扉が開くと、男はそのまま扉の外へ落ちて行ったのです。

 落ちた男は最初に窓から落ちた男と同じように背中側から華麗に受け身を取ると、同じく数回バウントして地面に寝ころび、トレーラーに轢かれました。

 なんでみんな道路で寝ちゃうんでしょうね、危ないよ?

 まぁ、いいや。

 これで後、残るは運転手だけです。

 ふーむ。

 私は面白い事を考え付くと運転手に囁きます。


「時速80キロ以下に落とさないでくださいね?簡単でしょう?」


 私がそう言うと運転手は声にならない声を上げながらコクコクと頷いてスピードを上げます。


 映画のスピ―ドバリの凄腕ドライバーです。

 このぐらいは簡単にこなせるはずですよね?

 でも、窓ガラスが割れ、後部座席の両扉が壊れた車内は、バタバタとした音が鳴り響いて煩いですし、折角スヤスヤと寝ているエディタをその音で起こすのも可哀そうだと思えました。

 私は着ている上着を脱いでエディタをそれで包むと、両手に抱え上げて、タイミングをみてヒョイって車から飛び降りた。

 無事着地した私は、そのまま前方を走る車を見送っていましたが……。


「あっ」


 思わず声が出る。

 車は赤信号をそのまま突っ込むと、横から来たスポーツカーみたいな車と接触し横転したのでした。

 そこにちゃんと信号を守っていたはずの大型タンクローリーが突っ込みます。

 しばらくすると花火みたいな光と共に大きな音が上がりました。

 私はその光をチラ見し、背を向けて歩き出します。

 そして私は思いました。

 はぁ……この娘どうしようかな?

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