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異世界から君を取り戻す  作者: 佐央 真
第四章 人形妖魔
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苛立ち

 「かっ影早、とにかく、そのっ離してくれないか」

 「返事を聞くまで、離しません。姫……答えて下さいませんか? 俺は貴女のことが、知りたい」


 影早の言葉に、璃羽は余計に動けなくなった。

 今までこんなストレートに気持ちを伝えてきた人などいない。

 例の娘の話は聞きたいが、影早の気持ちを利用していいものなのだろうか?


 ーーそりゃあ影早は真面目だし、頼りになりそうだし。おまけにイケメン……というより美少年だし。私からしたら、寧ろ勿体ないくらいの人だ。

 でも……


 「影早、私は……」


 璃羽は両手をゆっくり前へ動かした。

 やっぱりその気もないのに、彼の大切な気持ちを踏み躙ることはいけないことだ。

 璃羽はちゃんと今の気持ちを伝えた上で、話を聞き出そうと決め、口を開いた。が、その時。


 「ーーまずは姫から離れて貰おう、影早殿」


 影早の背後から、突然キラリと刀の刃が光り、彼の首へとヒタリと当てられた。

 全く気づきもしなかったが、その瞬間から恐ろしい程の殺気がヒシヒシと漂ってくる。

 鋭い目をした銀髪の男、嶺鷹が今にも影早の首をはねんとしていた。


 「嶺鷹っ!?」

 「影早殿、この方はそう易々と触れていい方ではない」


 嶺鷹の殺気に当てられ、影早の腕から力が抜ける。

 その隙に璃羽は素早く彼から離れると、あからさまに嶺鷹の後ろに回り隠れホッと息をついた。

 助かった、と思う半面、じとっと嶺鷹を睨む。


 ーー易々という割に、お前は易々と抱き上げて私を塔から落としてくれたが?


 「……申し訳、ありません」


 苦々しく顔を歪ませながらも、影早が謝罪の言葉を出すと、それを聞いた嶺鷹は静かに刀を鞘に収めた。

 しかし影早は納得していないようで、案の定続ける。


 「けれど、俺は本気です。諦めるつもりはありませんので。姫……返事を待っています」

 「……影早っ……」


 嶺鷹の前でも堂々と宣言して、影早はその場を去っていき、そんな紳士的な彼に、璃羽は少なからずもドキッとした。が、


 「おい……俺は忠告した筈なんだが?」

 「うっ。この声は……」


 怒りで物凄く低い声を出す、途轍もなく聞き慣れているそれが嶺鷹の肩から聞こえ、そこから現れた小動物に、璃羽はヒッと思わず小さな悲鳴をあげた。

 もしかしたら殺気の半分は、こいつからかもしれない。


 「いつな……お前も来てたのか?」

 「馬鹿なのか! 何で勝手に一人で出ていったんだ!?」

 「だって、そうやって止めるからだろ」

 「当たり前だ!」


 いつなは怒鳴って尻尾をピンと立てた。

 どうにも気持ちが収まり切らない様子で目をつりあげていると、彼を抑えるように嶺鷹が振り返り割り込む。


 「少し落ち着け。怒り過ぎた、いつな」

 「お前こそ落ち着き過ぎなんだよ! 何で知ってて止めなかった!?」

 「えっ! 気づいてたのか、私が抜け出したこと!?」


 璃羽が驚きながら訊ねると、当然とばかりに嶺鷹はこくんと頷いた。


 「姫の力量は、戦闘時に理解していた。目的も大方分かっていたし、気配を辿れる範囲内であれば問題はないだろうと判断したのだ」

 「気配を辿れる範囲内って……」


 ーーだいぶ離れていた気がするが……


 「それに、刀をいつなに預けていたのでな。それが終わるまでは、この耳飾りで様子を窺うことにした」

 「おかげでめちゃくちゃ急いだがな!」


 いつなの刺々しく言う文句が突き刺さりもするが、嶺鷹の能力を侮っていた事実に、璃羽は内心悔しさを覚えた。

 本気で蒔いたと思って、影早に自慢までしてしまったのだーー正直、恥ずかしい。

 更には影早との会話も一部始終聞かれていたことも、顔から火が出るくらいに恥ずかしかった。

 きっと聞いていたいつなからしたら、さぞかし笑いのネタになっただろう。


 ーーうぅ、悔しい……!


 だが一方で、いつなの怒りも収まらなかった。

 危険なことだと分かっていた筈なのに、璃羽を影早と二人きりにし、あまつさえ璃羽にあんな触れ方をしてくるなんて。


 「ふざけた告白までしやがって……」


 腸が煮えくり返る。

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