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異世界から君を取り戻す  作者: 佐央 真
第三章 初陣
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先へ

 嶺鷹は妖魔の言葉を確認するや否や、一振りで5、6体もの妖魔を倒し、耳を研ぎ澄ませて一斉に聞く。


 「ぐあぁっ……ゆる、さ…ない」

 「どこ、だ、あい、つは……」

 「がぁぁ、あいつ、だけは……」

 「憎い、憎…い」

 「卑怯、も、の……ゆるさ、な、い……」

 

 「なるほど。これでは確かに長期戦になりそうだな」


 妖魔を斬り倒しながら、嶺鷹が呟いた。

 けれども、さすが龍の爪と呼ばれるだけあって、一度に妖魔を倒せる数が璃羽のとは違う。

 そんな彼が妖魔の声を聞けるというのなら、分散する方がいいだろう。


 「嶺鷹、いけるか?」

 「問題ない」

 「それじゃあ、手分けして妖魔から聞き出すぞ」


 璃羽も妖魔と戦いながら嶺鷹に声をあげた。

 とその時、彼女の手元のホロパネルは青色のままで、アビリティ表示に何かが追加されたことにいつなが気づく。

 

 「え……龍導機構……なんだこれ!?」


 ーー《攻撃速度》:Lv4.2

   《貫通力》:84%

   《ブレイク成功率》:73%


 「龍の爪・斬牙機構(ドラク・クロー)……!?」


 いつなが呟くと同時に、璃羽が妖魔に向かって双剣を振りかざすと、


 ――ブウオォォォンッ!!


 まるで嶺鷹が攻撃したような突風が吹き荒れ、鋭利なV字カーブを描く2本の刃のように斬り裂き、一気に4、5体ほどの妖魔たちが吹き飛んだ。


 「え……?」


 それを見ていた嶺鷹やいつなはもちろん、繰り出した璃羽自身も驚いて呆然とする。

 もしかして、先程イヤーカフを嶺鷹に取り付けたことが関係しているのだろうか。

 あの嶺鷹の頬に現れた龍の鱗のような青い紋様、まさか彼に龍姫の力を分け与える代わりに、彼の力を璃羽に分け与えるよう作動したのかもしれない。


 「フッ、その様子であれば手分けしても良さそうだな。いつな、姫を頼む」


 嶺鷹はいつなにそう告げると、何の気兼ねもなく颯爽と一人、妖魔たちの中へと消えていった。

 彼がイヤーカフをつけているなら、連絡は簡単に取り合える。

 多少離れても問題はないだろう。だが、


 「いつな、私たちもいくぞっ」

 「いや……ちょっと待て。お前の右手」


 そんな時、いつなの言葉で璃羽が急に立ち止まった。

 どうやら先程の嶺鷹の技の威力が強すぎて、右手を少し痛めている。

 数値として表示されていた。


 「大丈夫か?」

 「あぁ、大丈夫なんだけど、流石に嶺鷹みたいに連発はできないな。負担が大きすぎる」

 「緊急時以外は使わない方が良さそうだな」


 いつなが璃羽の手の具合をみてシステムを停止させると、ホロパネルが赤色に戻り、少し勿体無さを感じつつも璃羽は、気持ちを切り替えて双剣を握り直した。

 しかしその一瞬の隙をついて、四方から妖魔たちが彼女に向かって襲いかかってくる。


 「……っ!」


 するとその時、彼女を守るように傍に降り立ち、妖魔たちを手甲鈎で引き裂く一人の男が現れた――影早だ。


 「姫! ご無事で?」

 「影早、 来てくれたのか」

 「お一人なのですか!? 嶺鷹殿は?」

 「あいつは先に行ったぞ。手分けした方が効率がいいだろ?」

 「何て無謀なっ!」


 影早は憤慨しながらも璃羽の腰を引き寄せると、安否を確かめるように力強く彼女の身体を抱きしめた。

 あまりの突然のことに、璃羽は赤面する。


 「なっ……影早!?」

 「無茶はおやめ下さいっ。とにかく……貴女が無事でよかった」


 よほど心配してくれていたのか、影早は璃羽の耳元ではぁと深いため息をついた。

 それは有り難くて嬉しいことではあるが、異性に抱きつかれるのに慣れていない璃羽はどうしていいのか分からず、ただあたふたする。


 「あ、あのっ、影早……私は大丈夫だから、とりあえず離してくれない、か?」

 「あ……失礼しました。つい」


 影早はそっと身体を離し、璃羽はドキドキしながらもホッとしていると、腰の巾着袋が何やら殺気立っているのに気づいてゾッとした。

 いつなが怒っている、どうしてかは分からないが。


 「とにかく姫、塔へ戻りましょう。ここは危険です」


 影早が妖魔を斬り裂きながらそう言うが、当然ながら璃羽は首を横に振る。

 

 「いや、私はこのまま戦う。影早もついて来い」

 「え?」

 

 璃羽は双剣を構え、ホロパネルを赤く光らせた。

 彼女のその勇ましい姿に影早は目を丸くするが、そんなことも気にせず璃羽は妖魔たちの動きを見定め、飛び出していく。


 「妖魔たちの声を聞く。目的を聞き出すんだ!」

 「え……目的?」

 

 どうして璃羽がそんなことを言い出したのか、影早には皆目分からなかったが、このまま彼女を一人にはできないと、彼は急いであとを追った。

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