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ピピピ、ピピピ、パチン
「んー、朝だな」
毎朝の日課をこなしますか。
牛乳を一気飲み、洗顔、歯磨き、ランニング、朝シャン、朝食作って弁当を詰める!
そして登校前に二回目の歯磨き、二回する意味はないんだけどね。
さて、一週間後のテスト終わるまで部活無しだからな、早く家出て迎えに行って一緒に登校しようかな。
「いってきまーす」
ーーー
閑静な住宅街、暮良の制服もちらほら。
あれ、高橋 凛さんと渡辺 鈴音さんが俺に向かって歩いてくるな、なんだろ? 俺なにかやらかしたっけ?
「「おはよー」」
高橋さんと渡辺さんが手を振りながら挨拶してくれたので「おはよう」と返す。
「神代っち、美遊のお迎え?」
高橋さんが首を傾げながら質問してくる。
「そう、テスト期間で部活ないから一緒に登校でもと思ってここまで来たんだけど・・・なんにも言わずに来てしまったのでどうしようかと思ってて」
「ふーん」
渡辺さんがなにを考えたかのかいきなりインターホンを押した。
ピンポーン
「んじゃ、あとよろしくね、美遊には先に行った伝えといて」
『どちらさまでしょうか?』
「お、おはようございます、神代といいます。
美遊さんのクラスメイトで、お迎えに来ました」
『あら、ちょっと待ってね』
バタバタバタバタ・・・ガチャ
「お、おはよう、か、一弥くん、ちょっと待っててね、もうすぐ出れるから」
「おはよう、ゆっくりでいいよー」
慌てる美遊さんかっわいいー。
ていうか勝手に迎えに来たの大丈夫だったかな、渡辺さんがインターホン押しちゃったからもう悩んでもしょうがないんだけど・・・。
勝手にはしゃぎ過ぎてるな、やばい。
色々考え込んでいたら再度玄関が開き「いってきまーす」と美遊さんが出てきた。
「ご、ごめんね急に迎えにきちゃって、部活ないから勢いできてしまって」
「う、うん、大丈夫だよちょっとびっくりはしたけど一緒に行こう」
手を差し出すと、すっと手を取ってくれた。
「そういえば、凛ちゃんと鈴ちゃん見なかった? いつも一緒に登校してたからそろそろくると思うんだけど」
「あ、さっき家の前で会って話したよ、さきに行ってるって」
「そうなんだ、じゃあ、行こうか」
今日から遼が図書室で勉強会をするので一緒に勉強しないかと誘うと参加してくれるとのこと。
もちろん、同じ図書室だが離れたところでひっそりと美遊さんと勉強したい。
テスト範囲や昼飯をどこで食べようかなどの話をしながら登校し教室へと向かった。
「それじゃ、美遊さんまたお昼にね」
と手を振って自分の席に向かった。
「まぁ、神代さん、朝からお熱いことですな」
普段とは違う口調で星野さんがからかってきたのでお返しをしてやろう。
「星野さんは今日の勉強会不参加みたい」
「ちょ、ちょ、ちょ、言ってない言ってない! 出ますから」
仕返しはすんだので授業の準備しよう。
ーーー
午前中の授業が終わり待ちに待った昼飯の時間!
美遊さん行けるかな聞いてみようかな。
「美遊さん、どう?」
「お昼ご飯食べに行こうか」
一緒に行けるとのことなので。
「ありがとうございます!」
周りからは「なんでお礼なんだ?」や「葛城さんと昼飯とかご褒美だろ」などの声が聞こえたが大体あってる、俺なんかと飯食ってくれる天使だからな!
ロッカーから屋上で食べるときに使うレジャーセット出して手を繋ぎ屋上へ向かう。
「一弥くん、この間言ってたお母さんへのお弁当はもう作ってあげたの?」
「テスト終わったら気合い入れて作ってあげようかなと思ってるんだ」
「そうなんだね、私もお父さんに作ってあげるお弁当のために練習中なんだ」
「お父さん、羨ましいな」
「ふふ、一弥くんにも作ってあげようか?」
え? これは、命と引き換え的なやつかな? それでもいいか!
「う、うん、ぜひ! お父さんの後にでも作ってくれたら嬉しい!」
「気長に待ってて、テスト終わってから練習再開だから」
「待つ待つ!」
あぁ、楽しみ増えたなぁ、これ、もう、青春してる気がする!
ーーー
ホームルームも終わったし、遼の勉強会をするために図書室への移動するか。
だとその前に遼に伝えとくか。
「遼、ちょっと離れたとこで美遊さんと勉強してるからさ、なにかあったら呼んでくれ」
「はぁ、気が重い、教えるのはいいけど人が多いと大変なんだよな」
「高田くん、ごめんね、こんなことになっちゃって」
「いや、悪いのはあのデレデレしてる馬鹿だから、星野さんは気にしないで」
なんかデレデレ馬鹿って聞こえたな、そこまで言うなら全力でいちゃついてやろうか。
目の前で頭なでたり、頬をぷにぷにしてやろうかこのやろう。
教えてほしいと言ってた佐々木、片瀬、三雲はどうかな・・・と思っていたら、もう鞄抱えて待機してたわ。
遼、お前、俺のこと惚気すぎて刺されるぞとか言ってるけどさ、お前もじゃねーか。
まぁ俺には美遊さんがいるからねなんとも思わんさ、心にゆとりがあるね!
さ、美遊さんに声かけに行こう。
美遊さんに声をかけようと近づくと高橋さんと渡辺さんと三人で話していたので席に戻って待っていた。
すると遼が準備できたのか先に行くとのことだったので見送った。
しばらくして美遊さんが近づいてくるのがわかったので席を立った。
「一弥くん、凛ちゃんと鈴ちゃんも一緒に勉強してもいいかな?」
「あ、遼に聞いてみようか? なんなら無理矢理にでもやらせるよ」
「いや、高田くんの勉強会じゃなくて、私たちの勉強会になんだけど」
ピシャーーン
図書室デート的なのが・・・いやいやここは懐の深さを見せましょう! 三年間もあるんだからこれぐらい、ね、うん、ね。
「うん、わかった、じゃあ図書室行こうか」
「ありがとう、二人に伝えてくるね」
そう言うと二人の元へと走っていくので後を追った。
三人とも準備は済んでるらしく行けるとのことなので教室を出た。
前を美遊さんと渡辺さん、高橋さんと並んで歩いているのを後ろからついて歩いた。
いや、付け回してるわけじゃないからね、俺、美遊さんの彼氏だからね。
とか変なこと考えてると高橋さんが歩く速度を落として俺のほうにきた。
「神代っち、今日はごめんね、美遊と図書室デートの邪魔しちゃってさ」
「そう思うなら遠慮してくれればよかったじゃないですか」
「いや、そうなんだけどさ・・・赤点取るとお小遣い下がるから必死なのよ!」
確かにバイトしていないとお小遣い低下は死活問題だな、仕方ないな、共感できる理由だったしな、決してその剣幕が怖かったからではない。
ーーー
図書室は静かに。
遼の勉強会してるテーブルでは隣の席の取り合いが始まっていた。
わたしが、あたしが、交代よ、もう十五分すぎたなどの会話が飛び交っていた。
勉強しろよ。
そしてこっちの勉強会は平和だ。
すごく平和・・・だが納得がいかない。
美遊さんが正面に座っているのだ、うんかわいい、けど違う。
だが、仕方ないのだ、美遊さん優しいし、友達だからね。
さて俺は俺で勉強しようかな、テスト範囲を聞いてから各教科の「テストに出るぞ」と言われてた場所やよく使う式、文法、年号を抜き出し各教科分を覚えていった。
まぁミスってたら轟沈するんだけどね。
何事も集中すると時間が過ぎるのは早く、あっという間に下校時間になっていた。
「んー、帰りますか」
「そうだね、凛ちゃんも鈴ちゃんも頭パンクして大変なことになってるし丁度いいね」
美遊さんの両隣でテーブルに突っ伏している二人。
「なんで二人ともそんなに普通な感じなの?」
ふ、その疑問に答えてあげよう。
「わからないとこが出たらできるだけその日に復習して解決したり、それでもわからないときはわかる奴に頼るからね」
そう、先延ばしすると覚えることが溜まっていくんだよね。
「くっ、神代っち、正論だわ、でも正論には負けない!」
いやどんな抵抗だよ、まぁいいけどさ。
「一弥くん、今日は凛ちゃんたちと帰って家でも叩き込むから別々に帰ろうか」
なん・・・だと。
落ち着け、テスト期間中だけだ、うん、落ち着け、どーどー。
「神代っちごめんねぇ、美遊はもらっていくねぇ」
ニヤニヤとそう言ってくるのでアイアンクローをしてやりたかったが流石に女子にやるのは躊躇われるからな、一言だけ。
「ふ、お小遣い下がらないように足掻くがよいぞ」
「きぃー!」
こっちがふざけている間に遼のほうも解散になったようだ。
「料理、お疲れ様」
「はぁ、本当に疲れた、星野さん以外話聞かないんだよ、座るとこなんてどうでもいいから勉強してほしかったわ」
これがあと二日あるのか・・・手を合わせておこう。
「なんで手を合わせてるのか知らんが殴らせろ」
「いやいや、見て! 俺もどこぞのお小遣い低下が怖い人に美遊さんが取られてるの! 俺も辛いんだから慰めなさいよ!」
遼は少し間をおくと鼻で笑った。
おーよろしい、これは戦争じゃ!
「テスト終わりの部活覚えておけよ、今の俺のリードを広げてやるからな」
「ふん、ちょっと手加減して花を持たせてやっただけだよまたすぐ抜いてやる」
俺と遼が子供のような言い争いをしていると星野さんが間に割って入ってきて「ほらほら、下校時間だからね、帰ろーよ」と言い争いを止めて交互に二人の背後に周り背中を押して帰宅を促してきた。
俺はおふざけモードを終えて鞄を持ってみんなと歩き始めた。
校門でみんな「お疲れ様また明日ね」と言って別れ帰路についた。
ーーー
晩飯も食べて風呂も入ってあとは寝るだけだな。
と思ったけど遼を見返すためにテストも頑張ろうじゃないか!
テスト範囲を再確認して、可能な限り問題を解き、年号、文法を覚える。
図書室でやっていたことと変わらないがわからないところは無くしていこう。