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ピピピ、ピピピ、パチン


朝五時、中学のときの習慣で休みの日もこの時間に起きてたしな。


「歯磨いて顔洗ったら走るか」


部屋を出て一階へ行くと父さんがコーヒーを片手に新聞を読んでいた。


「父さん、おはよう」


「おう、一弥、おはよう」


父さんに挨拶をすると冷蔵庫から牛乳を出しコップに注ぎ一気に飲み干す。

コップを水で濯いでシンクに置き洗面所へ向かう。

洗顔に歯磨きを終わらせて自室で着替えてランニングに出ようと部屋を出るとだらしない格好でゆいさんが出てくる。


「ゆいさん、おはよう」


「んー、かず、おはよ」


だるそうに挨拶を交わすと洗面所に向かっていく、その後に続き一階にへ向かう。


「ゆいさん、今日は荷物とかあるの?」


中学のときは買い物があると日曜日に荷物持ちと男避けとして付き合わされることが多かったので今も習慣で聞いているのだ。


「んー、大丈夫。

ていうかあたしたちのことは気にしなくてもいいわよ、あんたにはもっと他に気にするとかあるでしょ」


んー、ゆいさんがいくらモテるからといっても家族だしな、見られて困るわけでもない。

けど今は青春真っ只中美遊さんとのことがあるからな。


「わかっ・・・」


「ゆいちゃんがかずくんと出かけないなら私が貰っていくわねー」


さつきさんがパジャマ姿で腕を掴んでくる。


「さつきさん、おはよう」


「んー、おはよー」


さつきさんはものすごくマイペースなんだよなぁ、いや、まぁ、学校では凛としたイメージで通ってるんだけど・・・というか猫被ってるんだけど、家ではもうマイペース全開。


「ちょっと! さつきはもうちょっと空気読みなさいよ!」


「こらー、お姉ちゃんを呼び捨てにするんじゃないのー、さつきお姉ちゃんでしょー」


朝から元気ですねこの姉妹は。

父さんは我関せずで新聞読んでる・・・と思ったらなんか肩が震えてる、てか口押さえて笑い堪えてるよ。

止めなさいよ。


「さつきさんもゆいさんも早く顔洗ってきたほうがいいよ、そろそろ母さんも起きてきて渋滞になるからね」


さつきさんから解放されたので玄関でランニングシューズを履き「じゃあ行ってきます、朝食にはもどるから」と父さんに言って家を出た。


ーーー


日課となったランニングコースを右耳のみにワイヤレスイヤホンをつけて音楽を聴きながら走っていると左側に並走してくる人影があった。


「おう、一弥、おはよう」


「遼か、おはよう」


お互い連絡をとって始めたわけでもないが中学三年間の習慣からか同じ時間、同じコースを走っていることが多い。


「なぁ、遼くん」


「なんだい、一弥くん」


蒼海中のハゲ地獄にいたときは考えもしなかったことを遼に聞いてみる。


「練習のない日曜日ってなにしたらいいんだ?」


「いや、それを、俺に聞く?」


「いや、だってさ今まではさつきさんとゆいさんの荷物持ち兼男除けとかしてたけどさ、ゆいさんが気にするな他に気にすることあるだろ、なんてまともなこというもんだからさ」


「お前の中でゆいさんの株どんだけ低いんだよ」


「とはいえさ、急に美遊さん呼び出して出かけるのも迷惑だろうしさ」


「お、やっと名前呼びになったか、彼氏彼女っぽくなったな」


言われてみるとそうなのかなと意識してしまい無駄に照れてしまった。


「遼は今日どうすんの?」


遼は少し考えてから「んー、自主練と勉強かなー」というので。


「んじゃうちこいよ、高校生らしく自堕落に遊ぼうぜ。

あ、飯どうする?」


「朝飯は食ってから行くよ、帰ってシャワーも浴びたいしな」


「んじゃ昼と晩だけ作ればいいな」


「いいのか?」


「なにを今更遠慮してんだよ、気にすんなよ」


そう言って遼の背中を叩いて笑う。


「そうか、じゃあ帰ったら母さんに話して準備して行くよ」


遼と別れ家へと帰ると母さんが朝食の準備をしていた。


「一弥さん、おかえりなさい」


「ただいま、シャワー浴びてくる」


手早くシャワーを済ませて食卓へ。

今日はなぜか朝からオムライスが出てきた、俺は平気だけどさつきさんたちが、と思ったけど普通に食べてたわ。


「母さん、この後さ遼を呼んでてるんだけど晩飯も一緒にいいかな?」


「全然いいわよ、あ、でも、ごめんなさい、お昼はパパとマスターのとこに行ってこようかと思ってるのよ」


「あ、大丈夫だよ、ゆっくりしてきてよ、昼は俺作るから」


朝食を済ませて部屋に戻ってCatchを設置してブマスラEXの準備をしていると。


コンコン


ん、遼かな、早いな。


「おー、空いてるぞ、早かったじゃん。

今準備してるから待ってな」


「待ってあげるけど、あたしは遼じゃないからね」


へ? 凄い速さで首が回った、それはもう自己ベスト更新だ。


「いいから準備しなさいよ、遼が来るんでしょ、後でさつきも呼ぶし」


「あ、そうだね、やる人は多いほうがいいよね」


まぁ、混ざってくるのはいつものことだからいいか。

でもいつもは遼が来てからくっついてくるんだけどどうしたんだろう。


「かず、彼女ができたことさつきにはもう少し黙っといたほうがいいかもしれないわ」


「ん? なんで?」


「さつきはあんたのことが好きすぎるのよ、今知って勝手に嗅ぎ回られて彼女のとこに突撃されても嫌でしょ?」


「そう、だね、さつきさんものすごい行動力だからね」


さつきさんは小学生の頃から俺のことを溺愛するペットを撫で回すようにかわいがり、中学を卒業するまで荷物持ち兼男避けという理由もあったが外出するときに連れ回されていたのだ。

俺も頼まれればさつきさんとゆいさんの買い物には付き合った。

おしゃれを知らない俺なんかでも楽しそうに買い物するからそれでもいいかなと。

でも最近不安なのがさつきさんに彼氏がいないのは俺がに構いすぎてるからなのでは? ということ。


「ゆいさんさ、さつきさんって彼氏いないの?」


「んー、いたことはあったわよ、男避けのためではなくちゃんと好きで付き合ってたんだけどね」


んー、気になる言い回し、聞いたのは俺だけどこの先聞いていいのかな。


「それ、今聞かないほうがよさそうな気もしなくはないんですが」


「まぁそうね、今度あんたとマスターのとこに行く機会があれば・・・ってことで」


同じ屋根の下だからね、いきなり扉がドーンとね。


バターン!


「かずくーん!遼ちゃん来たよー」


「さつきさん! ノック! しかも扉が壊れちゃうから!」


さつきさんの後ろから遼が手を上げて「よっ」と挨拶してくる。

俺も手を上げて「いらっしゃい」と言って招き入れた。


座布団とコントローラー、飲み物を人数分用意して準備を完了。


「え、かずくん、お姉ちゃんも混ぜてくれるの?嬉しいー」そう言ってあぐらかいてブマスラEXを起動していた俺の背中に抱きついてきた。


あばばば、だめだから、当たってるから! 座ってるときは避けれないから! いくら姉でも物理的に当たる感触はだめだから!!


ゴツンという音とともに柔らかい感触がなくなった。

残念ではあるが相手はさつきさん、姉である。


「あざといわ! 普通に座布団に座んなさい!」


「ゆいちゃん、いつからそんな暴力的になったの、昔はあんなに「お姉ちゃんお姉ちゃん」って言ってたのに、ぐすん」


「嘘泣きもやめい、まったく、困った姉を持ったわ」


まぁ、いつものことだな、ゲームしよ。


ーーー


俺は何度目かわからないゆいさんからの罵倒を受けていた。

それはなぜか? ふ、ゲームの中では皆平等、そして弱肉強食なのだよ・・・ふははははははははは。


「いや、あんな、ステージの端で八〇%も溜めてたら誘ってるのかな? って思わず」


「ぐぬぬ、ゲームなんてろくにやったことないくせにこれだけはなんで上手いのよ! 次は叩き落としてやるわ!」


こらこら、女の子がぐぬぬなんて言っちゃあかんよ。


俺以外の三人は発売日からこのゲームをやってるらしく俺も少し遅れて始めたのだが初心者でも入りやすくわかりやすいシステム、やり込めばやり込むほど上手くなるのがスポーツの練習に似てるような感じがしてハマってしまったのだ。


そして、さらにゆいさんがぐぬぬと言い始めたところで。


コンコン


「はーい」


「ママとマスターのところにデートに行ってくる、お昼はよろしく頼むな」


「わかりました、ゆっくりしてきてね」


「「「いってらっしゃい」」」


そして、また、ぐぬらせてしまった。


ものすごい睨んでくるが大丈夫、俺とゆいさんの間には物理的な壁があるのだ、さつきさんと遼という鉄壁がね。

越えてこようもんなら即離脱ですよ。


ーーー


休憩をはさみながらも結構長いことブマスラEXやってたな、もうすぐ父さんたち帰ってくるかな?

てか、帰ってきて、お願い。

もうゆいさんが大変なことになってるのよ。

半泣きなのよ、もうちょっとなにかあると泣いちゃう。

いや、確かに俺も悪い、けどね。


ゆいさんが逃してくれないんだもの! わざと負けようもんなら舌打ち、逃げようとすると舌打ち、負けると舌打ち・・・。

これ詰んでるよ。

遼、さつきさん、大人気ない奴なみたいな顔で俺を見るな、絶妙負け方できるほど上手くなのよ!


「ゆいさん、俺も一弥も中学のときほど部活が過酷じゃないですから、またやりましょ? いまは一弥に花を持たせておけばいいんですよ、今度コテンパンにしましょうよ」


遼くん、フォローありがとう、次はお前もコテンパンにしてやる。


「コテンパンにしてやるわ、かず、覚えてなさいよ」


目に涙を溜めて睨んでくる。


「あ、お手柔らかにお願いします」


俺がそう言うとゆいさんは「ふん」と言ってそっぽ向いた。


これはご機嫌取りにコンビニスイーツでも買ってくるか。

時間的には父さんたちはまだ帰ってこなさそうだな、食後のデザート用に買い物に行くか。

立ち上がって財布を取る。


「ちょ、ちょっと飲み物買いに行ってくるね」


遼のほうを見ると遼もこっちを見ていてなんとなく意図は察してくれたのだろう。

ゆいさんに見えないように手をひらひらとさせていた。


扉を開けて部屋を出て閉めようとするが閉まらない。


「痛いよ、かずくん」


さつきさんが扉に挟まっていた。


「あ、ごめん、さつきさん、どうしたの?」


「私も行く」


おぉふ・・・いやまぁいいか、コンビニスイーツを買いに行くだけだしな。


「わかりました、じゃあ行きましょうか」


ーーー


最寄りのコンビニに行くと入荷直後なのかスイーツ用の冷蔵棚に大量にコンビニスイーツが鎮座していた。


さつきさんは自分の食べたいスイーツをカゴに入れていく。


待って、もう今持ってるの入れたら全十種類コンプリートですよ、並んでるのを「ここからここまで」とかやっていいのは富豪だけですからね!?


「さつきさん、食べ過ぎでは?」


「むぅ、かずくんは私がそんなに食べるように見えるんですか?」


いや、見えないけど甘いものは別腹と大半の女性が思っているとの噂を聞きましてね。


「種類があればゆいちゃんも機嫌なおすかもしれないじゃないですか、残ったのをみんなで食べればいいんですよ」


確かに選べるというのはいいことか、その作戦でいこう。

飲み物を適当に選び会計を済ませる。


さてと帰ってご機嫌とりをしますか。


ーーー


「ただいまー」


「おかえりなさい、もうご飯できるわよ」


あ、意外と時間かかったんだな、とりあえず冷蔵庫に入れておこう。


「一弥さん、ゆいさんと遼さんを呼んできてくれるかしら?」


「はーい」


二階に上がると力を抜き、気配を消して、抜き足、差し足、忍び足。

俺の部屋の前まで来た。

イケメンな遼と少し残念なとこはあるが美人なゆいさんが同じ部屋に二人きりだ、何もないわけがないのだ。

面白がっているところはある、でも遼になら、ゆいさんにならと思うことはある。

大切な親友と大切な姉が結ばれるならいいことなのだよ。


耳に意識を集中だ。


「りょ、遼だめだって」


「ゆいさん、俺、もう我慢できないんです」


おぉおおおおお! これまさか俺って遼の弟になるフラグきた!?


ガチャ


「この馬鹿を殴りたいんです」


「へ?」


拳を握り込み震わせてる遼の姿。


「えっと、遼くん、と、ゆいさん、これからお楽しみです、か?」


「ほらね、こいつこんなことばっかり言ってんですから」


「かず、あんまり遼に迷惑かけんじゃないわよ」


ゴツン、ゴツン


遼とゆいさんは俺に拳骨を落として「先に行くぞ」と言い階段を降りていった。

部屋をチラッと覗くとなんにもありません、あの二人にはなんにもありませんでしたわ。


飯食おう。


ーーー


他の家族がどうかわからないが、うちの家族は仲がいいと思う。

父さんと母さんは今もデートと言って週末出かけることが多い。

言い合いもあるが姉弟関係も良好だと思う。

親子でも出かけるし大抵のことは言える。


だからと言ってね、いきなりスイーツタイムに爆弾を投げるのは無しだよパパン。





誤字脱字報告や感想よろしくお願いします。

サブタイトルはいいものが浮かんだらつけたいと思って本編書いてたら忘れてたので思いつき次第つけていきます。

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