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さて今日も元気に行きますか! 教室の扉を手をかけた。
「おはよう! 今日もいい天気だね!」
クラスメイトからのなにを言ってるのという顔をされつつも挨拶しながら窓際の自分の席についた。
「ん? なんだよ、なに言ってんだこいつみたいな顔してんの?」
俺の挨拶が気に食わなかったのか遼がすごい顔してるな・・・なにがいけなかったのだ?
「いや、ほんとなに言ってんだよってツッコミ入れたいんだよ、外見ろよ、それはもう盛大に雨降ってんじゃねーかよ」
あーそういうことか、遼もまだまだ甘いな!
俺が青春のイベントフラグを教えてやろうじゃないか!
「ふっ、遼よ、俺たちは蒼海中のハゲ地獄から抜け出し部活も勉強もほどほどに青春を取り戻すと誓ったではないか! そして男はさておき歳の近い美少女ばかりときた! そこに雨が降る日ときたら・・・イベントフラグは立つものよ!」
俺は拳を握り胸の前に持っていき続ける。
「雨の日の下駄箱、傘がなくて立ち尽くす美少女、傘を持って通りかかる男子・・・「傘は?」「忘れちゃって、でも弱くなったら帰れると思うから」からの傘を貸すのか! 相合い傘を狙うのかはそのときの男子次第! さぁ男子よ! 傘を取れぃ! ってことよ!」
いい終わる直前にビシッと遼に指を指し言い切ってやった。
周りでは会話もなくこちらを見ている人の気配。
うんうん、これは納得してもらえただろうな!
「えっと、このクラスの中で朝から雨降ってたのに傘忘れた人いますか?」
ん? はっ!? そうか、今日朝から雨じゃ傘忘れるわけないじゃん!?
見たくない、見たくないけどこれは振り向かねばならないのだろう・・・意を決して振り向くとやはり手を上げてる人はいなかった。
そうだね、なんで気がつかなかったのだろうね、いやこれかなりドヤ顔で語ってたぞ、俺。
どうする!? この状況はかなり痛いぞ!?
んー・・・俯きながら考えたけど答えが出ない。
助けを求めるように遼を見て助けてサインを出したら遼は呆れた顔をしてとある方向へと指を指していた。
そして一言。
「お前、本当、刺されるぞ、まったくよ結局惚気みたいになってんじゃねーかよ」
遼の指の先には少し顔を赤らめて申し訳なさそうに手を上げる天使の葛城さんがいた。
「やばい、抱きしめたい!」
「いや、お前、なに言ってんの? 誰かじゃなくて俺が刺してやろうかこのやろう!?」
「え? 俺、今口に出してた?」
「思いっきりでてたわ! 見ろよ真っ赤な果実の出来上がりだよ!」
遼はさっきと同じ方向に指を指すと顔を真っ赤にした天使葛城さん・・・俺、今日放課後は体調不良で部活出れないな!
「遼、俺さ・・・」
「はいはい、貸しひとつな」
流石俺の親友だ、バスケも普段の生活もすげー助けられてるなぁ、俺も助けられてばかりじゃなく助けなきゃな! 俺が遼と付き合ってくれる子を探すというのもありだな。
なにせ高身長でイケメン、学力もあってバスケもうまいからな。
俺がバスケとそこそこの学力以外に取り柄がないのに彼女ができたんだからな、遼に足りないのはグイグイいく勢いと相手だな! ならば今がチャンスか!?
「一弥、余計なことすんなよ? 俺は俺のタイミングでやるからさ、相談があるときは俺からお前に言うから。
くれぐれも余計なことはすんなよ」
な、なんでだなにも言ってないのに!?
「あれ、また口に出してた?」
「顔見りゃわかるわ、人の顔見ながらなんか閃いたみたいな顔しやがってよ、グイグイいく勢いがないわけでも相手がいないでもからな」
な、こいつ、実は読心術の使い手なのか!? ならばこれでどうだ!? 葛城さんかわいい葛城さんかわいい葛城さんかわいい。
「いや、別に読心術とか使えないからな? お前とはバスケでの連携もそうだし濃い中学時代だったからな、あとはくだらないことを考えてるときは顔に出やすい、そのくせバスケのときはポーカーフェイスができてるからな、不思議なもんだよ」
「お、おう、それ褒めてるの?」
遼は笑いながら「半々だな」と言って肩を叩いてきた。
「おー、座れ座れ若人よ、楽しい楽しい数学の時間だ」
ボサボサ頭に数学の先生なのに白衣を着てるよくわからない鰐渕先生が入ってきたので、鞄から教科書とノート、筆箱を出して授業を受け始めた。
ーーー
「あーやっと昼だ、腹減ったわ」
午前中の授業も終わりお待ちかねの昼飯タイムだ。
今日は木曜日だから昼は葛城さんとは別々だ、本当は一緒に食べたいけど葛城さんにも交友関係はあるからし、俺から提案して二人で決めたのだ。
入り口からこっちに歩いてくる遼が自分の席に座ると。
「あ、今日は別々の日か、んじゃ一緒に食うか」
「おう、遼は・・・購買部で買ってきたのか」
「そ、親父が今出張でいなくてさ、俺のためだけに弁当作ってもらうのも申し訳ないから帰ってくるまで購買部で買うからいい無しにしてもらったんだよ、あとはバスケ部でも朝練の日が増えそうだしな、その分早起きしてまで作ってなんて頼めないしな」
なるほどな確かに作ってもらうとなるとそう言う話にもなるか。
「それで、お前のその弁当は彼女のお手製か?」
遼が揶揄うような感じでのぞいてくる。
「そうだったら超絶嬉しいけどな、自作だ」
「「え?」」
遼は俺が料理くらいはできるのは知ってるだろうに、まぁとはいえ中学時代は弁当を作る余裕もないくらいにハゲの地獄がきつかったからな、自分で弁当作ろうとも思わなかったけどさ。
というか、今、遼以外にも疑問符投げかけてきた奴いなかったか?
声がした方、自分の隣の席を見ると俺と弁当を交互に見てる女子生徒が一人。
「えっと、どうかした? 弁当でも忘れたの? 遼のパンでも食べる?」
「いやなんで俺のパンなんだよ! もう購買場になんも残ってないんだから勘弁してくれ」
遼がすっと残りのパンを俺から遠ざけると隣の女子生徒が口を開いた。
「いや、あたしもお弁当はあるから高田くんのパンを取る気はないんだけど。
神代くん、それ朝自分で作ってるの?」
「そうだね、最近母さんの仕事が忙しくなってね、最初は俺も購買部で考えたんだけどさ、買えない場合、食べたいものがない場合、行くのが面倒というのを考えると残り物とか簡単なものでもいいから自分で作った方がいいという結論で作り始めた! 今日からだけどね!」
「なんか、初めてにしてはお弁当のクオリティが高いのよね」
「まぁ母さんが夜遅くなるときは晩飯は俺が作ってるしね、えっと・・・星野さんはお母さんが作ってくれてるの?」
「そう、弟が中学生なんだけど運動部でね、結構量食べるから作らないお昼代が・・・ね、そのついでというのもあれだけど私もお弁当なの。
って神代くん名前覚えてくれてたんだ、ちょっと嬉しいね」
「ふ、同じ学年の女子生徒の名前はちゃんと思えているさ、なにせ良き青春をおくるには必要不可欠だろう?」
「いや、覚えるのは良いことだけど絶妙に肯定しずれーよ」
「あはは、神代くんと高田くんって面白いね。
一応自己紹介しとくね、あたしは星野 美紀、部活は陸上部、よろしくね」
「じゃあ俺たちも・・・」
「大丈夫よ、二人とも色々有名だしね」
ん? 色々有名? な、なにが有名なんだ、遼はまぁいい奴でイケメンで頭もいいし運動もできる。
俺はなんだ? バスケくらいしか自信はないんだけどな。
はっ!? 天使葛城さんの彼氏というところか!
「そうか、遼は文武両道のイケメン、俺は天使のハートを射止めた罪深き男といことだな」
「お前って本当に絶妙に肯定否定のし難いこと言うよな、俺のことはともかくさ、お前の場合は嫉妬五割、馬鹿な発言三割、バスケ二割だな」
「そ、そうだね概ねそんな感じだね、でもあたしの周りでは嫌われてるってことはないよ、漫才というかね、見てて飽きないしね」
まてまて、なんだ馬鹿な発言って、今までクラスの奴と喋ってても特に変なこと言った覚えないぞ。
んー、思いつかんな。
「あー、悩んでるとこ悪いけど、朝の相合い傘の件とかだからな」
パンを食べ終えてゴミをまとめながら遼が言ってきた。
そして話を打ち切るかのようにチャイムがなる。
キーンカーンカーンコーン
「ちょ、まてよ! このままだと馬鹿なままになるから!」
「あ、そうだ二人とも連絡先交換しようよ」
「え、あ、うん、よろしく」
俺の訴えはスルーされ、三人でスマフォを振ってLIMEの連絡先を交換した。
なんかこう話をはぐらかされた感じがするのは・・・気のせい?
まぁあと数時間後には俺にはご褒美タイムがあるからな、小さいことなんて気にしないぜ! 放課後が楽しみだなぁ。
ーーー
雨のおかげで一つの傘の下二人肩を寄せ合い下校、傘を忘れた彼女を家の前まで送って親密度アップ!
なんて考えてた時期が俺にもありました。
はい、雨上がってますね、もうなんだろうね。
部活サボって葛城さんの帰れるようになる時間まで図書室で時間潰してたら雨が小降りになったと思ったら今はもう完全に止んでるよ!
「なにしてんだこんなとこで、お前バスケ部だろ? 部活どうしたんだよ」
雨が止んだだけじゃなく雲の隙間から陽までのぞき始めてた空に絶望し、突っ伏していた俺に誰かが話しかけてきたが・・・気分じゃない、無視だ無視。
「いや、数秒前まで外睨んで起きてただろうが、無視すんじゃねーよ」
面倒くさい、が仕方ない。
「おう、なんの用だよ鈴木、俺今忙しいんだよ」
「いや、部活サボって図書室いる奴が忙しいわけあるか」
うるさい奴だな、鈴木・・・なんだったかな? タケル? タロウ? 同じ蒼海中だけど部活違ったしクラスも一回一緒になったくらいだし。
あ、そういやこいつさつきさんに振られてたっけか。
「んで、暇そうだから声かけたのか? タケルくん」
「そうだな、聞きたいこともあったしな、あと隆な、た・か・し」
そう言って俺の向かいに座った。
こいつとの接点がほぼ同じ蒼海中ってこととさつきさんに告白して轟沈したことくらいしか知らない。
「お前さ、葛城と付き合ってるって噂なんだけどさ、どうなの」
「あぁ、そうだよ」
それだけ聞くと「ふーん」と言いながら数学の参考書とノートなどを出して勉強を始めた。
え?それだけのために俺の前に座って安眠妨害してきたの? 馬鹿なの? 死ぬの?
ムカつくが葛城さんとの下校時間までは我慢だな、他の場所は雨でグラウンドが使えない運動部が空いてる教室とかで筋トレだなんだってやってるからな。
もう少しの辛抱だ、耐えろ俺っ。
ピロン。
おっ、部活終わったのかな。
スマフォスマフォっと・・・ん?
【残念、俺でした。】
ぐぬっ、遼め! 俺で遊びおって! だが落ち着け俺は葛城さんと一緒に帰りたいがために部活をサボっているのだから。
というか遼がLIMEできるってことは今日サボらなくても葛城さんよりも部活終わったのか?
【もしかして部活終わったの?】
【いや、今休憩中、お前が寂しく図書室あたりで待ってんのかなと思って】
ぐぬぬぬっ!
【今、忙しいんですけども!】
【サボってる奴の台詞じゃないな(笑)】
【鈴木についさっき同じこと言われたわ!】
【鈴木?】
【A組にいる同中の鈴木 隆だよ、さつきさんに告白して轟沈した奴だよ】
【あぁ、言われてみたらいた気がするな、そんでなんだって?】
【んー? なんか俺に葛城さんと付き合ってるのかーとか聞いてきたからそうだって言ったらふーんって言ってなぜか目の前で勉強始めた】
【葛城さん人気だからなやっかみで何かしてきても不思議ではないからな、一応気を付けろよ】
【おうよ、サンキューな】
ピロン。
【あ、葛城さんから連絡きたから今日は先に帰るな、埋め合わせは今度なにかで!】
【あいよ、気をつけて帰れよ、あと明日は朝練あるから遅れんなよ】
さっきの絶望感から一転してウキウキだわっ!
俺が急にニコニコし始めたからか不機嫌そうな目で鈴木が睨んできたがスルースルー。
【お疲れ様、私やっと部活終わった。
神代くん部活はどうかな?】
【お疲れ様! 俺ももう帰れるよ! どこで待ち合わせる?】
【じゃあ下駄箱で待ち合わせね、雨は止んでるけど傘は忘れないでね】
くぅ、この気遣いがたまらないなぁ! もう本当に葛城さんまじ天使。
鞄と傘持ったから忘れもんはないな、ならば図書室からは退散だな。
「なんだ、帰るのか?」
立ち上がると鈴木が話しかけてきた。
「あぁ、葛城さんが部活終わったから一緒に下校だ、そいじゃ勉強頑張れよ」
「あぁ」
テンション上がって鼻歌にスキップが自然に出てしまい図書委員に咳払いからの物凄い睨まれたので静かに図書室を後にした。
ーーー
「ごめんね神代くん待った?」
「ううん、俺も今着いたとこだよ・・・なんかデートの待ち合わせみたいだね」
照れながら頬をかいた。
「ふふ、確かに。
下校デートとも言えるのかな? だからいいんじゃないかな」
笑顔で嬉しいこと言ってくれるよぉ! 葛城さんまじ天使!
「じゃあ帰ろうか!」
お互い友達との世間話でこんなのが面白かったとか、あの先生は意地悪なところあるよね、などと他愛無い話ではあるが盛り上がっていると時間というのは早いものである。
「早っ! もうここかよっ!」
「ふふ、そうだね、なんかあっという間だったね」
「はぁ、本当は家まで送っていきたいんだけど晩飯の材料の買い出しして作らなきゃだからなぁ・・・つれぇ」
「それはしょうがないよ、それにお母さんに親孝行だ思って頑張ろう!」
ガッツポーズで励ましてくれる葛城さんまじ天使。
「そうだね、じゃあまず買い出し頑張って帰ろうかな。
葛城さんも気をつけてね! 蒼海中と緑山中の学区の境目とはいえまだ距離あるからさ」
「うん、ありがとう」
「あ、そうだ、葛城さん、今週の土曜日って予定あったりする?」
「特にはないよ」
葛城さんは俯きながら少しもじもじしてる、なにこれかわいい。
「良かったら遊びに行かない?」
「うん、行きたいな」
「よっしゃ!じゃあ土曜日の九時頃に駅前の交番でいいかな?」
「大丈夫だよ、土曜日楽しみにしてるね」
「俺も楽しみだよ! じゃあまだ明日学校でね!」
葛城さんの背が見えなくなったし帰ろうかな。
えっとスーパーで卵と鶏胸肉とささみと、適当な野菜買って帰るか。
こうして俺は上がり過ぎたテンションでノリノリで料理をし、やり過ぎた結果・・・翌日の弁当の中身が決まったのであった。
誤字脱字報告、感想よろしくお願いします。
サブタイトルはいいものが浮かんだらつけたいと思って本編書いてたら忘れてたので思いつき次第つけていきます。