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俺の名前は神代 一弥、暮良高校に入学したての一年生。
中学生時代は部活三昧でろくな青春がおくれなかった。
だからこそ高校からは自由な学生生活をおくりたい。
そして入学式を経て、一年B組のクラスメイトとの顔合わせをしていたときに目が釘付けになってしまった。
いわゆる一目惚れだった。
そして今その子が目の前に来てる、やばい、緊張する。
入学してすぐ告白することで失敗したときにどうなるかは理解してる。
でも気がついたら彼氏ができていたなんて後悔はしたくない。
だからこそ、今!
「おまたせ、神代くん用事ってなに?」
あぁ・・・葛城 美遊さんかっわいい。
風が吹くたびに煌き揺れる綺麗な黒髪、煌き揺れる、煌き・・・。
うん、俺にはポエム的なのは無理だな語彙力が足りないな。
とにかくかわいい! 肩まで伸びた綺麗な黒のロングヘアに整ったご尊顔、華奢なラインなのに出るとこは出るとこは出ていてもう誰もが虜になるであろう美少女!
「あ、あぁ、えっと、全然大丈夫! まだ高校入学して一週間でお互いあまり知らないとは思うんだけどさ」
ここで深呼吸。
「一目惚れしたんだ! 葛城さんかわいいから他の奴に先越されたくなかったから! 付き合ってください!」
葛城さんは驚いた顔すると、ふふっと微笑みながら話し始めた。
「私、神代くんのこと知ってるのよ」
「え?」
俺は葛城さんとどこかで会ってたのか!?
これ答えられなかったら超失礼じゃね!?
まさかの超絶大ピンチが訪れたんですけど!?
「蒼海中でバスケ部にいなかった?」
蒼海中は俺が青春をバスケに捧げた呪われた学校・・・おかげで遊んでいた思い出も少ない。
そして彼女もいたこともなければ・・・。
「も、もしかして同中!? いや葛城さんみたいなかわいい子見逃すわけないんだ・・・いやでもスパルタハゲコーチの
練習で目が死んでたから見逃したのか?」
あのハゲだけはまじでいつか頭引っ叩いてやる!
「ふふふ、私は緑山中だから違うよ。神代くんたちの学校と練習試合をしたときに見たことがあったの」
なるほど練習試合か・・・流石にハゲのハードスケジュールでの練習試合だから他校の女子生徒はリサーチできてなかったんだよな。
「それでそのときにさ漠然と蒼海中チームみんな上手いなと思って見てたんだけどさ、二人だけ綺麗に動き出すからすごいな、誰だろうって気になってさ、男子バスケのマネージャーに聞いて神代くんと高田くんのこと知ったんだ」
え、知ってくれてるうえに気になって誰なのかを調べてくれた? もしかしてこれは期待してもいいか?
「だからまさか同じクラスで、しかも告白してくれるなんて思ってなかったから驚いたよ」
焦っちゃだめだ、焦っちゃだめだ、でもこのままだと心臓が痛いぞ。
だから、聞こう。
「じゃあ、俺と・・・」
葛城さんは少し照れながら。
「うん、よろしくお願いします」
「よっしゃああああああ」
と盛大なガッツポーズを見て、ふふふと笑ってくれた葛城さんもかわいい!!
ーーー
昨日告白が成功して葛城さんと下校したテンションが抜けない俺。
トイレから教室にもどるときに自然と鼻歌にスキップが出てしまい、それを見た葛城さんがふふっと微笑みながら手を振ってくれたのでそれはもう全力で振り返しながら窓際の自分の席へ。
「おい、お前、あんまり浮かれてるとひどい目に合うぞ、主に俺ら独り身男子からな!」
とか嫉妬混じりのお小言をくれたのは、同中でハゲの地獄のスパルタを共に耐え抜いた独り身親友の高田 遼くんだ。
遼とは暮良高でも一緒にバスケ部に入る予定なのでこれからも長い付き合いになるな。
「まぁまぁ、落ち着きたまえよ高田くん! 親友の君だけ独り身で悲しい高校生活にさせるわけないじゃないか!」
俺は勢いよく遼の前に手を出すと一弥・・・と呟きながら俺の手をとる遼、二人で固い握手を交わした。
「俺がしっかり恋のキューピットとしてサポートしてやるからな!!」
「おぉ! さすが親友!! って、お前たまたま運よく初彼女ができただけじゃねーか!」
遼は手を振り解きとても綺麗なノリツッコミをしてくれるノリのいい奴だ。
ーーー
俺も葛城さんもお互い部活があるから終わったほうがLIMEで連絡して五分前後待って反応がなかったら一人で帰るという約束をした。
「さぁ、普通のバスケ部を楽しもうぜ!」
「だな!」
俺と遼は意気込みながら体育館に繋がる渡り廊下を進んでいき、体育館外にあるバスケ部部室に向かった。
「お疲れ様です! 一年B組神代 一弥です! よろしくお願いします!」
「お疲れ様です! 同じく一年B組の高田 遼です! よろしくお願いします!」
二人の挨拶が終わると、二年と三年の部員が明るく迎えてくれた。
「おー、お疲れ様。俺はバスケ部キャプテンの袴田 進だ。お前たち蒼海の神代と高田だろ? なんでうちみたいな普通のとこきたのよ」
おっと、もしかしてお前バスケ舐めてんの的な感じでくるのか? だがここははっきりと言うぜ!
俺と遼は某巨人のアニメの如く拳を作って心臓のある場所に拳を掲げながら。
「「死にそうにならないバスケしたかったからです!」」
二年、三年は口を開けてポカーンとしていた。
俺と遼はどうしたのかと首をかしげていると、袴田先輩が手を叩きながら笑いだした。
「あはははははは。お前らおもしれーな、蒼海の練習はきついって聞いてたけどそんなになのかよ」
「よくぞ聞いてくれました! いやほんとやばいんですよ! あのハゲ絶対人間じゃないんですよ! 地獄から幼気な少年をいたぶるために蒼海に派遣されたんですよ!」
それはもう溜まった鬱憤を晴らすが如く毎日がデスマーチのスパルタハゲメニューをハゲの悪口を交えながらいかに鬼畜かを語った。
もう我ながら適切に伝えられた自信がある。
「とまぁそんな感じで青春のせの字もなかったんですよ! もちろんバスケは好きでやってました、けどふと遅くまで練習して帰るときに同じ学生がファーストフードに行ったり、コンビニの前で買い食いしてるのを見ると羨ましくなったんですよね! やっぱり学生って練習帰りに買い食いしてたり、女子マネが入ってきてやる気上がるみたいなイベントがあってこそ青春じゃないっすか!」
うん、これはもう拍手喝采からのわかってるじゃねーかコース! そして抱き合って心の友よと映画版ジャ○アンのように
ん、なんか静かだな袴田先輩がなんか俺から目をそらしたぞ、いや全員急にボール触りはじめたけどそんなに響かなかったのか?
「なかなか体育館に部員がこないから顧問の代わりに見にきたんだがな、これはいいことを聞いたよ。
神代は俺の練習メニューでも足りなかったんだな、それならそれで言ってくれればよかったのにな」
んー・・・なんか聞き覚えのあるハゲた声がするな、いやいや幻聴だよ幻聴。
まぁでも一応確認は大事、何事も確認確認。
なんだろう、すっと振り向くつもりだったんだけどさ、いないはずだし、こうすっと振り向けばいいのよ、振り向けばいいんだよ? だけどなんだろ油が切れたロボットみたいに身体の動きがとても鈍く感じるんだよね、うんギギギって音が幻聴で聞こえそう。
「おう、神代、卒業以来だな。
お前と高田が暮良に行くっつうからよ、蒼海の練習メニューの資料を顧問とコーチに持ってきたわけよ。
こりゃちょっと書き換えなきゃいけねーみてーだな」
「なんでだよ! 余計なことするんじゃねーよハゲ! 俺の青春を破壊すんじゃねぇ!」
これはやばい、せっかくの俺のスクールライフがっ!!
せっかく葛城さんと付き合えて爛れた高校生活をおくれるとおもったのに何故だなぜこのハゲは邪魔をするのだ! なにか、なにか対策を・・・はっ! これだ!!
「いやー残念だなー、僕は遼くんの付き添いでここまできただけだからね、ハゲ山コーチの練習メニューができないなんて残念だ! では遼くん頑張ってくれたまえ!」
「おい! お前一人で逃げようとしてんじゃねーよ! 俺だって嫌だわ!」
俺が言い切って笑顔で立ち去ろうとするのを遮る人物たちが現れた、それはさっき俺から目をそらしなにも見ていないとばかりに知らんふりを決め込んだキャプテンこと袴田先輩だ。
俺はすーっと迂回してこの場を離れようとするがすっと遮られる。
今度は逆に行こうとするとまた遮られる。
んー・・・チラッと顔を見るとここは通さんとばかりに見つめてくる。
はぁしょうがないな、こんな舗装無しの地面でやりたくないけどさ・・・抜くか。
俺が少し腰を落とすと袴田先輩は俺がやることが分かったのかすっと腰を落としてきた。
やっぱりキャプテンを務めるだけあって気迫がすごいな、でも俺もここで負けてられないんだよね、俺の平和のために! 待っててね! 葛城さん!!!
普段なら試合の動きの流れとかボール、配置やら考えてやるけど、これは身体を被せるだけで終わりだからなぁ。
ゆっくりと進み袴田先輩の右足の外側へと左足を踏み出し右足をそのまま進めようとするが、そう簡単にはいかずに進行方向を塞ごうと身体をねじ込んでこようとする。
袴田先輩の身体が移動し終わる前に左足を軸に身体を回転させて浮いた右足を着地させて踏ん張って回転の勢いで左足を引き寄せて、袴田先輩を抜いた。
「あいつは体調不良以外でサボることもなく練習してきたからな、筋力も申し分ない」
悔しいがハゲ山のギリギリを考慮した個人メニューとアホみたいにハードな練習試合のスケジュールのおかげで上手くはなった、諸手を挙げて感謝はしてない! 断じてな!
だってそのせいで童貞歴は未だ更新中、彼女は・・・昨日できたわ・・・ふふふ。
「では部外者はこの辺で・・・」
「そうはいかんなぁあああああああ」
俺が言い切る前に物凄い形相の遼が立っていた。
あーこれだめなやつだ、どうしようかな、同じ地獄にいたんだもの手の内も割れてるしさ、なにより俺と遼の勝負は遼のほうが勝ち越してるんだよな。
だがそれは勝負しない理由にはならない! やってやるぜ!
と意気込んでいたのだが、遼がずっと普通に歩いて近づいてきて耳元で俺にだけ聞こえるように言ってきた。
「いやー葛城さんってさ中学のときバスケしてる俺らのこと見て興味を持ったおかげで付き合えたと言えなくはないわけだよな?」
ん? なにが言いたいんだ? 遼の意図が読めない。
「わかんないか? バスケしてる姿がかっこよくて気になったわけだ」
はっ! そう言われればそうか、俺からバスケ取ったら顔面偏差値普通の勉強ができるだけの普通の高校生か!
・・・別によくない? 普通の高校生とか青春イベント満載じゃない?
「大会に出るともれなく彼女からの応援付き、さらに試合後に「お疲れ様、今日もかっこよかった」なーんてイベントもあるかも知れんなぁ、バスケやってればあるかもなぁ」
くっ、確かに普通の高校生としての色々も捨てがたいが・・・大会に出て起こるイベントは今だけ・・・。
すっと遼と肩を組んで一呼吸。
「さぁみんな! 大会目指して青春の汗を流そうじゃないか!」
急な掌返しに遼とハゲ山以外はポカーンとしていたがそんなことは気にせずに続けた。
「だがハゲ山の地獄にフルコースメニューは却下だ! 流石にバイトして学費稼げないからな!」
ハゲ山はふっと笑いながら。
「流石に俺も蒼海中の個人メニュー組みながらお前たちの面倒はみれんよ、だから誰でもできる最低限のメニューの資料を笹森コーチに持ってきただけだからな。
まぁでもどんな不純な理由があるにしろちゃんとバスケをやる気になったのは嬉しい限りだな!」
なんだ、こいつ実はハゲ山じゃないのか? 誰かの変装か? いやまぁいいさ俺は今イベントに向けてやる気に満ちてるからな!
「あ、先輩方、最低限のメニューでもあのハゲ頭おかしいんで頑張りましょうね!」
色々あったが先輩もコーチもいい人そうだし、やる気もあるしで楽しくやれそうだな。
ーーー
えっとLIMEの確認っと。
ありゃ、葛城さんの方が三〇分も早く終わってたか、謝りのLIME送っとこう。
【おつかれさま、遅くなってごめんね、顔合わせとかで盛り上がって抜け損ねちゃって】
ピロン。
【お疲れ様、初顔合わせだし自己紹介とか色々あるよね。
まだ校門にいるからよかったら途中まで一緒に帰らない?】
はぅ!? 待っててくれたの!? なんて優しい子!!
「遼、すまんちょっと」
「おけおけ、急いで行ってやれ、また明日な」
「ありがとう! 親友よ!」
遼は手をひらひらと振りながらはいはいと呟き送り出してくれた。
誤字脱字や感想よろしくお願いします。
サブタイトルはいいものが浮かんだらつけたいと思って本編書いてたら忘れてたので思いつき次第つけていきます。