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3-31 気配なき王城

お越しいただきありがとうございます!

 宿の受付には丸眼鏡の女性が立っており、リンが扉を開ける音に反応し、外跳ねの短い髪を揺らしながら、こちらに顔を向けてきた。


「いらっしゃいませ。ご宿泊のお客さまでしょうか?」

「ええ。でも今すぐじゃなくていいわ。今夜、四人で泊まれる部屋を一つ押さえておいてもらいたいの。まだ明るいし、街を見て回ろうって話になってね。できるかしら?」

「かしこまりました。では、ご予約ということで処理させていただきます。お戻りの際はこちらの札をお渡しください」


 手渡された木の札には、龍の横顔を模した焼き印が押されていた。


「せっかくだし、おすすめの場所を教えてもらえる? あと人が集まるところも」


 木札を軽く振りながらリンが問いかけると、受付の女性は愛想よくにこやかな顔で応じた。


「やはりリューゲル城ですね。中には入れませんが、外観を見るだけでもきっとよい思い出になりますよ。街にもお店や劇場などがありますし、楽しんでいただけるかと」


 真摯に対応してくれる女性に、リンもつとめて笑顔をつくってみせる。


「わかったわ。どうもありがとうね」


 宿屋を出ると、通りを包む賑やかな声が再びリンたちの鼓膜を震わせた。


「さて、宿は確保。ルナ、何か感じる?」

「いえ、まだ特には。ハイファさまやエルトさまはいかがですか? かたや龍骸装を持ち、かたや星皇神の加護を受けた身として、何か思うところは」

「……よくわからない。あの時みたいに、熱かったり、痛かったりは感じないけど」

「僕の方も、これといった異常は見つけられませんね。若干空気中の魔力が濃いですが、取り立てて騒ぐほどでは」

「うーん、三人とも反応なしか。それじゃ、あのお城を起点にして、予定通り街を巡ってみましょう」


 リンの提案を拒否する声はなく、一行は道の果てに見えるリューゲル城へ進路を定めた。

 リューゲルの街並みは城に近づくほどに賑わいを増していく。リンたちがやってきた城門前の広場には大小さまざまな露店が並んでおり、そこかしこから人々の話し声や笑いが騒がしいまでにあがっていた。


「はぁ~、遠くからでも目立ってたけど、近づいて見ても立派なものねぇ」


 全体が灰色がかった城を見上げながら、リンが感嘆の声をあげる。


「外の壁の陰に隠れてた部分も、ちゃんとお城になってたんですね。なんであんなに高くしたんでしょうか」

「登るの、大変そう」

「ハイファさま、今のところ登る予定はないのでご安心ください。ですが、管理は間違いなく面倒でしょうね」


 リンと同じようにハイファたちも、塔と呼んで差し支えない箇所を持つ城に思い思いの感想を口にする。


「ふむ……」


 ルナが顎に手をやり何かを思案してることに、隣に立つハイファが気づいた。


「ルナ? どうかしたの?」

「いえ、この城からは何の気配も感じないのが、少し妙に思えまして」


 首をかしげるハイファ。エルトはルナの言葉の意味を即座に理解した。

「中には誰もいない、ということですか? 国の中心ですよ?」

「国を守るという点から、そういったものを遮断する仕掛けがあるのやもしれませんが……。リンさま、この城も調べることを提案いたします」

「そうね。街で見つからなかったら、お城の方も探ってみましょう。入れないって宿の人は言ってたけど、いざとなったら行商として堂々と乗り込んでやるんだから!」


 歯を見せて笑うリンに、ハイファも笑顔で頷く。

 リンの大胆な物言いに目を丸くしたルナの横で、エルトは吹き出すように苦笑した。


「のんびり見物してる場合じゃなかったわ。さ、行くわよみんな」


 こうして、リューゲルのどこかにいる協力者の捜索が始まった。

ご覧いただきありがとうございます!


次回更新は明日です!


少しでも続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブクマ、評価の方をよろしくお願いします!


感想、レビューも随時受け付けております!


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