第7話 戦い終わって
「あれ?先ほどまで続いていた銃声が聞こえなくなったな」
俺は、塹壕から出ようと歩く事は出来たが、左足が破損していて塹壕を飛び越える事は出来なかった。そうこうしている内にハーマー軍曹の姿が見えて来た。
「おいおい、レイモンドそんな所に隠れているとザクリーン様に機能を停止されてしまうぞ」
「見て分かるでしょう?」
「冗談だ。ザクリーン様が集合の合図を出されている。集合だっと言ってもそれじゃあ、無理か」
ハーマーに塹壕から出るのを手伝ってもらい塹壕から出ることが出来た。足を引きずりながら集合地点に向かうと、ゴーレム騎士の傍に5人のゴーレム兵の姿が見えた。
ザクリーンとハーマーを除くと、現状全小隊の生き残りは俺を入れて6人かよ。
「レイモンドか?此度の一番槍の役目、ご苦労だった。お前がトーチカを潰したおかげで随分と被害を減らす事が出来た。良くやった!」
嬉しくもなんともねえ。ザクリーン隊はここに来るまで30人の兵士がいたんだ。それが今は6人しかいねえ。脳が回収出来るのが何人いるのか知らないが、これが現実だ。いつまで生きれるか分からねえよ。
「はっ!有難きお言葉」
どう思うが、こう返事するしかねえからな。因みに俺の小隊は俺を除いて生死不明だ。
その後、A小隊が周囲の生き残り狩り、B小隊が謎爆弾により地下のゴブリンの残党を焼き尽くしていた。
大きな犠牲を払った我が小隊は、弾薬の補充を受けてこのまま基地へ帰還となったが、残りの小隊でゴブリンの死体や武器や味方の部品など有用なものをジャングルの外まで運ぶそうだ。
ジャングルの切れ目にまた、あのトラックが待機しているんだろう。さて、何人修理出来る事やら。
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基地を見ると普通はホッとするんだろうなあ。視界に基地を捉えているが、不安で一杯だよ。だって、襲撃されてんだもの。俺達が潰した巣のゴブリンの数が少なった訳だ。
「どうします?ザクリーン様」
「本来なら加勢したいところだが、我が隊には第14補給基地まで撤退するように指令が来ている。何とも腹立たしい事だ」
イヤ全然、腹なんか立たねえよ。むしろ、撤退できてホッとしてるよ。今後も前線基地で同じような頭の可笑しい作戦に参加してたら命が幾つも合っても足りねえ。
ザクリーン様が必ず仇をとるとか叫んでいるが、近くの魔物に聞こえるから止めて下さい。
「おい、クズども。我が隊は第14補給基地まで撤退する。遅れる事が無いようにな!」
「「「「イェッサー」」」」
こうして、俺達は地獄から逃れることが出来た。サイモン、生きてたらまた合おうぜ。バイバイ。
補給基地に向かう事となり安心はしたが、困った。左足の破損の所為だろう。移動モードにならないし、少しづつ、隊から遅れている。このまま、置いていかれると逃亡兵として生命維持装置が切れるのかな?死にたくねえよ。
「ザクリーン様。レイモンドのゴーレムの脚がやられていて、少しづつ遅れています」
「フッ、根性の無い奴だ。放置しておけ」
「イェッス、マム」
おい、お前らの会話は小隊通話にしているから全員に聞こえてんだぞ。作戦で活躍した英雄を放置などと、どの口が言ってやがる?覚えておけよ、死神!
そう俺は心の中で思いっ切り叫んでやった。ざまあみろ。
先を行くザクリーン機が米粒大になる頃、突如、爆発が起きた。
あー、あれは襲撃だな。いきも襲撃、帰りも襲撃。嬉しいねえ。しかも、今回はみんな、ボロボロで数も少ない。こりゃあ、全滅だな。この脚じゃあ俺も逃げられねえな。クソッたれが、戦うしか生き残れねえのかよ。
「ありゃあ、ゴブリンじゃねえな。ザクリーン機よりは小さいが、3mくらいの背の高さだ。・・・やばいオーガだぜこりゃあ」
近付くにつれ敵の全容が見えて来たが、敵はオーガが4匹だった。既に1匹のオーガが血まみれで倒れていたが、俺を除くゴーレム兵は全員バラバラというかゴーレムの形がほとんどなかった。
ハーマーが1匹を受け持ち、ザクリーンが2匹を受け持っていたが、ザクリーンはオーガたちに追い詰められていた。
オーガ2匹じゃあ、流石にきついか。
「ウォ―ッ!こっちだ鬼野郎!!」
俺はオーガの背後からアキレス腱を狙ってライフルの引き金を弾が無くなるまで撃ち込んだ。アキレス腱がやられれば動きを止められると思ったからだ。突然オーガの野郎がこちらを振り向き、同時に剣を振るった。
「ガ――――、ブンッ」
あれ?全く効いていない??アブねえなあ。オーガの振るう剣圧で体が飛ばされるようになる。ドンダケだよてめえはよ。
やばい、こいつ完全に俺しか見ていない。どうも怒らせたみたいだ。逃げよ。武器が効かない以上、逃げるしかねえって、左足が壊れてんだった。逃げられねえじゃねえか。
よし、あいつらに助けてもらおう!
「こちらレイモンド、只今、オーガに襲われていて、左足破損で思うように動けません。このままでは殺されてしまいます!」
「一番槍か!相変わらずしぶといな。大丈夫だ、死んでも生き返れば良い。もう少しなんとかしろ!!」
「こちらハーマーだ。こっちは暫く掛かる。まあ、頑張れ!」
うわっ!あいつら投げて来やがった。どうにもならねえから助けろって言ってんだよ。頭悪いなお前ら。それよりなんだよ、死んでも生き返れば良いって、死んだら終わりだろうが。お聞きますが、死んで生き返る方法を教えてくださいよ、今すぐ。
「って、下らねえこと考えたら、オーガの剣が頭カスったじゃねえか!」
ポクポク、チーン!そうだオーガは鬼だろう。俺の武器が豆鉄砲なら、弱点は目だろう。節分の時は効果的だったじゃねえか。目を狙って撃てばいいんだろう。ライフルにリロードして、撃つと。
「グア――――――――!」
そりゃあ、更にオコになるよな。節分じゃあねえし。オーガの野郎、目をつぶって剣をブンブン振り回しやがる。あっ!?こりゃあ死んだな。
「グアシャ―――――ン・・・」
「間に合わなかったか!我が隊の仇、怒りの刃を受けるが良い!!」
次の瞬間、ザクリーンによりオーガの上半身と下半身が真っ二つになった。ハーマーの方も片付いたみたいだ。何で、分かるかって?そりゃあ、下半身が断ち切られて、吹き飛ばされ、コロコロ転がった結果、上半身だけで立っていた?下半身は埋められたのって?違うよ。オーガにザックリツと切断されちまったからな。
「あれ?レイモンドか??こいつ生きてるみたいだな。良かったな、おい!」
はあ?この状態のどこが良いんだよ??お前らの助けが遅いから殺されかけたんだぞ!バカ野郎が!!
「いやー、危ない所でしたよ。無我夢中でした」
「レイモンド、生きていたか!それにしても相変わらず、無様だな。もっと、シャキッとせんか、シャキット!!しょうがない。補給基地まで私が抱えて行ってやろう」
イヤイヤ、抱えなくて良いから。それより、どう見ても俺の行き先は補給基地じゃなく、修理基地だよな。なに強引に連れて行こうとしてんだよ。
おい!離せよ。勝手に抱えるんじゃねえよ!!
「イェッス、マム。光栄であります」
自分で言ってて情けねー。
その後、回収用のトラックが来ていつも通り回収したが、ハーマーの野郎がトラックに乗りやがった。あいつ、途中まで便乗するつもりだな。俺もトラックに乗ろうとザクリーンにアピールしたが、ザクリーンの奴が無反応だったのであきらめた。
俺達、ザクリーン隊は第14補給基地に無事?到着した。
あっ、忘れていた。毎週日曜日と祝日はお休みします。