↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツヴェルフモーナット (没)  作者: ねこぶた
二章 グラべオン
49/83

後半戦 水無月

「うおおぉォォォォォォおお」


 多腕族の巨漢が水無月にその拳を振り下ろす。

 水無月も、相手の動きを見てしっかりと避ける。

 その一撃を見て思う。

 受け止めれるなら受け止めようと考えていたが、それは無理そうだ。


━━地面凹んだやん。あんなん食らえへんで。


 使ったこともない関西弁を心の中でもらす。

 どうやら関西人の血は今の水無月とネットを見る限り全ての人間に流れているようだ。

 巨漢はまた手を振り上げる。

 今度はさっきと違い両手を組みながら。

 それを見た水無月は巨漢との距離を取る。

 その直後、巨漢の両手が振り落とされた。

 地面が揺れる。

 比喩でもなんでもなく、巨漢の辺りの地面が大きく揺れた。

 水無月も距離を取っていなかったら大きな揺れに巻き込まれていただろう。

 

━━あの占い師には感謝しねえとな


 腰にある剣を抜く。

 右手にある重たい感覚をしっかりと感じ、左手はいつでも魔法が使えるようイメージをあらかじめ固めておく。

 巨漢の男が水無月に近づくために、力強く踏み込む。

 動きは早い。しかし、あの槍使いと比べれば全然遅く感じる。

 目で見て巨漢の攻撃を避ける。

 その後、剣を男の左腹へと滑らせる。

 かなり深く抉ったはずなのだが。


━━硬ぁ!全然剣が入らねえ。


 傷口からは少しだけ血が出るぐらいの攻撃しか与えられていない。

 これでは全く意味がない。

 その証拠に巨漢は斬られたことを全く気にしていない様子で水無月に突っ込んできている。

 正拳突き。

 水無月はサイドステップで避ける。

 体勢を崩すが、すぐに立て直す。

 ここまでに来るまでに体力を使っていることもあり、呼吸が荒れる。

 一旦距離を置き呼吸を整えようとするが、巨漢の三本目の腕が水無月を襲う。


「ーくッ!」


 小さくうめき声を出しながら間一髪で魔法を発動させ巨漢の攻撃を躱す。

 巨漢の男は当てたと思った攻撃が外れて、驚いた様子だ。

 それもそうだ。巨漢の男の目には今の今までそこにいたはずの水無月が急に消えたように見えたのだから。

 水無月はその隙をつき、攻撃を与えていく。

 一撃、二撃と与えるが傷は浅い。

 巨漢が構える。

 それを見た水無月は咄嗟に距離を取る。


「はあ……はあ……」


 本格的に疲れを感じ始めた。

 避ける動きも段々と鈍ってくる。


「うおぉぉぉぉおお」


 巨漢が四本の腕を構え水無月に攻めてきた。

 水無月がその攻撃を避けようとする。

 が、一瞬判断が遅れた。

 巨漢の繰り出す連撃をその身で受ける。

 

━━痛い。痛い。痛い。痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛いい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


 水無月の意識が飛ぶ。

 が、その直前、水無月の右手の紋様が輝いた。


      ーーーーーーーーーーー


「うおぉぉぉぉおお」


 巨漢が四本の腕を構え水無月に攻めてきた。

 一度見たことのある動きだからだろうか、酷くゆっくりに見えた。

 冷静に判断して動く。

 巨漢が突っ込んでくる足元。

 ガラ空きの足元に滑り込み、足首に傷をつける。

 

━━未来視…じゃない。あの痛みは本物だった。てことは俺の右手の魔法…か。


 もう一度発動させようとイメージするが、右手の紋様は一切輝かない。

 巨漢が足首を斬られ倒れている間に何度か試すが、紋様が輝くことはなかった。


「かかってこい!」


 気を取り直し、剣を構え直す。

 巨漢の立ち上がり、四本の腕を水無月に見せつける。

 鍛え抜かれた腕の筋肉は盛り上がっており、太い血管が見える。

 服を着ているのでわからないが、剣で斬った感覚から、体の方も鍛え抜かれているのだろう。

 両者体勢を整える。

 先に動いたのは、水無月だった。

 姿勢を低くし、巨漢の腰の部分を狙う。

 それに対抗するように巨漢も水無月の体を上から押さえこうとする。

 が、水無月の姿は次の瞬間には巨漢の背後にあった。

 そして、巨漢の腰、正確には脚との付け根部分に水無月の渾身の一撃が入る。

 肉を斬った感覚が襲いかかり、水無月を不快にさせる。

 それを一旦我慢して、剣についた血を振り払い巨漢の男に振り向く。

 巨漢の男は脚から血を流し倒れ込んだ。

 しかし、攻撃をしようとする意思は変わらない。

 まだその拳を水無月の方へと突き付けようとする。

 その意志の強さからだろうか、巨漢はなおも立ち上がる。


「諦めてくれると嬉しいんだがな」


 水無月は深呼吸をし、呼吸を整える。

 巨漢は血を垂らした足を引きずりながらも水無月へと拳を振り下ろす。

 が、精度がぐんと下がった拳に当たるほど水無月は馬鹿ではない。

 しっかりと攻撃を見て隙をついて攻撃をする。


「やっぱり硬えなこいつ」 


 手応えはない。だが、完全に流れは水無月に味方している。

 硬い皮膚を持つ巨漢にどんどん攻撃を叩き込んでいく。

 勝ちを確信した水無月。

 大きな一撃を入れようとする。

 だが、その油断がいけなかった。

 巨漢はその腕の数を活かして、水無月の体を捉える。

 五本目の腕を背中から突き破らせて。


「ーなッ!」


 異質。

 そうとしか言いようがない生え方をしている。

 腕とは基本的に対となるものだ。

 しかし、五本目の腕はその一本だけが独立しているように背中の真ん中から生えてきている。

 尻尾とはまた違う。

 五本目の腕の出ているところからは血が垂れている。

 本当に背中を突き破ったようだ。

 だが、今そんなことがわかったところで意味がない。

 すでに水無月の体は五本目の腕によって巨漢の前へと吊るされており、四本の腕に狙いを定められているのだから。

 

「グラべオン騎士団副団長、カルステア・サスティアル、お相手をよろしいかな?」


 唐突に二人の間に入ってきた声。

 いや、声だけではない、水無月と巨漢の男の間に騎士服を着た男の姿が確かにあった。

 

 

読んでいただきありがとうございます

感想あればお聞かせください

下にある☆もお願いします


水無月の左手の魔法は時間を飛ばすというよりは時間を進めるようなものですね

簡単に言えば、五秒かかる動きを一秒にできるみたいなことです

今の水無月だとゼロに近い時間にするには一分ぐらいが限界ですかね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。