覗き、ダメ、絶対
「まず目的だが、ここ半年間グラべオンは新国王が見つかったことを発表していない。だが騎士団が捜索に割いている人数は明らかに減っているため新国王はすでに決まっているものだと思われる。じゃあ発表すればいいのにそのことに関する発表は一切ない。そんなわけで、俺たち忍が王城に潜入し新国王の存在を確認しにいくってわけだ。わかったな」
淡々とここ数ヶ月のことを話し、自分たちのやることの説明を終わらせる。
ラオベインの言っていることに水無月は待ったをかけようとしたが、周りの忍の人たちとコレニスが何も言わなためなんとか抑える。
「作戦だが、いつも通り勝手に潜入して勝手に帰ってきてくれ」
「了解っす。そんじゃ皆さん行きますっすよ」
リヒットの言葉に続くように他の忍の人たちがぞろぞろと立ち上がる。
また仕事かーとか、だりいなあとか口にしながら皆、闇へと消えていく。
「リヒット、お前は二人を連れてってやれ」
「了解っす」
「待て待て待て、俺に王城に潜入する能力なんて何もないぞ」
「それは俺っちも変わらねえよ」
「まあそこら辺は大丈夫っす。僕がついてるんで」
軽いリヒットの何に安心すればいいのかわからないが、水無月とコレニスはその背中についていく。
暗く何も見えない闇へと進向む。
背後にいたはずのラオベインもいつのまにか見えなくなっていた。
「ラオベインは今回何もやんないのか?」
「あの人はいざってときしか動かないっすからね。正直あの人が動けばその事実だけで任務の解決は確定するんすけど」
ラオベインはどうやら相当な実力の持ち主のようだ。
リヒットからの発言にも絶対的に信頼していることを感じ取れる。
「それってあの人の魔法が強いってことか?」
「それもあるっすけど、あの人の強みは身体能力の高さじゃないっすかね。最強の騎士様に勝るとも劣らないぐらいらしいっすよ。本人談っすけど」
途中まですごいなと思っていた水無月だがが、リヒットの最後の一言で信憑性が一気に薄れる。
実際嘘をつかない性格のように見えるが自分に対する自信が高く、妄言なのか真実なのかの判断をつけづらい。
「その最強の騎士様ってめっちゃ強いんだな」
「そりゃそうっすよ。その騎士様さえいれば倒せない敵はいないって言われてるっすからね。その本人は自分の実力なんてまだまだだと謙遜してるっすけど」
「俺も、助けられた時にそんなこと言ってた気がするわ」
「水無月はその騎士様に会ったことがあるのか。いいなー、俺っちも一回でいいから会ってみたいんだよなあ」
「ザ、爽やかイケメンみたいなやつだったよ。でも嫌な感じは全然しなかったな。なんていうか、才能に恵まれてきた人ってよりはいくつもの絶望を味わってきたみたいな、そんな感じがした」
「その例えじゃよくわかんねえよ。でもそうかあ…イケメンだったのかあ…」
「なんか言ったか?」
「大したことじゃないから気にしなくていいよ」
「着いたっすよ」
リヒットが立ち止まり暗闇を指さす。
何もない空間を指さすリヒットに水無月は頭のヤバいやつを見る目を向けるが気にせずリヒットは暗闇に手をかける。
「これから先はあまり大きな声出さないでくださいっすよ」
「了解した」
水無月は返事で、コレニスは無言で頷いてリヒットに意思表明する。
「それじゃあ行くっすよ」
何もない暗闇に亀裂が走る。
その亀裂は徐々に、徐々に大きくなっていく。
最終的に亀裂はアーチ型のドアの形になる。
そのドアをリヒットが思いっきり、蹴飛ばす。
━━あ、蹴飛ばすんだ。なんかこうかっこいい感じで砕けるもんかと思ってた。
ことごとく異世界的幻想を崩される水無月だが、今は王城潜入の任務に集中する。
リヒットが蹴飛ばしたドアの先には外の光景が広がっていた。
強い風が中へと入ってくる。
「僕に続いてくださいっす」
リヒットがドアの先へと飛び込んでいく。
それにコレニスが続き水無月が最後に飛び込む。
「王城の屋根の上っす。ここからは誰にも気付かれず侵入するっす」
グラべオンの城は白を基調とした西洋風のものだ。
しっかりと西洋風の白によくある細い塔が何本か建ってある。
そのうちの一つの窓から場内へと侵入していく。
━━警備ザルすぎねえか。簡単に侵入できてんじゃねえか。
「ここら辺いけそうっすね」
そう言ってリヒットが城に穴を開ける。
見事なことに音を全く立てず、形も綺麗な縁を描いている。
ここに入れとリヒットが手で合図をしコレニスと水無月が穴の中へと入っていく。
最後にリヒットが穴の中に入り開けた穴を綺麗に塞ぐ。
外からの光は一切漏れていない。
「多分天井裏っすね。これ使ってくださいっす」
中は人が一人屈んで動けるぐらいの高さがある。
動けることを確認してリヒットがコレニスと水無月に錐のような先端の尖った道具を渡す。
「これで小さな開けて上から覗けるはずっすよ」
それだけ伝えリヒットは中をどんどん進んでいく。
コレニスは猫の獣人ということもあり、四足歩行になりながら静かに進んでいる。
一方水無月は音を立てずに進むのに苦戦しているようだ。
「俺っちたちが奥を調べてくるから水無月はこの辺り探しといてくれ」
「役立たずでごめんな」
「そう思うんならもう少し頑張ってくれよ」
━━優しい言葉かけてくれるもんだと思ってたわ。
あやうく声に出しそうになるがなんとか抑える。
そそくさと奥へと消えていった二人を見届けて水無月はすぐ下の天井に穴を開けるためもらった道具を刺す。
━━なんだこの道具。めっちゃヌルッと穴開けれるじゃねえか。
天井に刺すだけで勝手に先端が伸び穴を開ける。
上から押してる感覚的に金属部分もあったのだが容易く突き進んでいった。
その便利さに感動を覚えながら小さく空いた穴を覗く。
「あっ、ちょっ、だめです騎士様、私のようなただのメイドに…」
すぐさま水無月は穴から目を離す。
何かイケナイものを見た気になる水無月。
実際、メイドの近くに騎士などおらず、メイドただ一人だったのだが。
━━さて、次行くか。
先ほどの場所から少し進んだところで同じように穴を開け、覗き込む。
━━誰もいない…よな。ハズレか。
しばらく覗き込んだままでいるが人の気配は感じ取れない。
図書館と思えるほどの量の本が置いてあったためもう少し待てば誰か来るかもしれないが次へと進む。
━━下から声が聞こえるな。男と女の声か?
穴を開け覗き込む。
「なんのようですか。私はこの城に仕える騎士ですよ。私をどうにかできると思わないことです」
騎士服を着た女騎士。
相手の男に高圧的な態度をとっている。
「くくく、いつまでそんなことを言ってられるかな」
典型的な悪役的悪い笑みを浮かべる男は何かを手に持っている。
縄のようなものだろうか。
その縄のようなものを男は女騎士へと投げつけた。
━━そんな投げ方じゃ簡単に避けれるだろ。
ゆっくりと女騎士の方へと飛んでいく縄。
それを女騎士が当たる…はずも…なく……
女騎士は避ける素振りも見せず縄にぐるぐる巻きにされる。
「なんだこれは!私に何をした!」
「そう大声を出したら他の使用人や騎士どもに気付かれるぞ?」
「くっ!」
何故か痛いところを突かれたという顔をする女騎士。
そのまま大声を出していればいいのに。
「ああ、物分かりがよくて助かるよ。君だって痛い思いはしたくないだろ?」
「そんな!もっと痛いこ…」
━━どうなってんだよこの城。治安悪すぎだろ。
水無月は自分の頭を抱えながらその場から離れる。
後ろから男がこんな道具はどうだ?とか言い始めたが聞こえなかったふりをする。
ーーーーーーーーーーー
━━ハズレしかねえ。人がいたの初めのころにあったやつだけじゃねえか。
一時間ほど捜索したが人の気配のある部屋はあれ以降見つかることはなかった。
音を出さず屈んで移動することに注意しながらだったので調べることのできた場所はそこまで多はないが。
なんの成果もなかったのでとりあえず最初入ってきた場所に戻ることにした。
そこでコレニスとリヒットを待つことにしたのだが二人が来る気配はない。
━━近くに開けた穴もう一回確認するか。
一番最初に開けた穴に近づき覗き込む。
「騎士様だめで…」
━━はいはい、お盛んですね。
なんとなく察していたのですぐに次に開けた穴へと向かう。
━━たしか図書館みたいなとこだったはずだが。
記憶を頼りに二番目に開けた穴を探し出す。
たしかここだったはずだと思い穴を覗き込む。
━━あってるな。よかった。でも人の気配は…
水無月が誰もいないと思ったその直後、部屋のドアが開く音が聞こえる。
━━誰か入ってきた。
水無月の耳に声だけが入る。姿はまだ見えない。
「チッ、調べ物は苦手だって言ってんのによぉ」
足音が水無月ののぞいている穴の下へと近づいてくる。
「ほんとあの国王は人の扱いが雑いんだよッ」
男が水無月の下にある本棚に近づく。
その男の姿が水無月の視界の中に入った。
━━なんでコイツがここにいんだよ。
水無月の見覚えのある男。
半年以上前に一度だけあったことのある男。
月霜を殺した槍使いの男がそこにいた。
読んでいただいた方ありがとうございます
感想あればお聞かせください
西洋風のお城と和風なお城どっちも好きです
詳しくはないですけど




