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初恋を踏みにじられたので、可愛い番を作ります  作者: 宇和マチカ
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羽無しハーピーは故郷に寄って布団を作る

次の章に行く前に、少しばかり。

タイトルはほのぼのめですが、舞台が戦地なのでそうでもないです。

アルベリーヌが若干故郷に帰って荷物を持って帰ってくるお話。

 アルベリーヌは修道女だ。

 つい15年前迄は、銃弾が飛び交う故郷で騎士をしていたことがある。


 故郷は浮き島にあり、川が流れる山深い場所で、空飛ぶ羽を持つ者達が沢山住んでいた。

 何時しか隣の国と奪い合いの係争地となり、両軍が置かれる事となった。

 激化しては鎮静し、睨み合う。そんな戦いが続いて早120年。


 いつの間にか色んな種族が土地を去り、残ったのは、ハーピー族とセイレーン族の女のみ。国から派遣された男の軍人は強制的に彼女らの婿にされた。

 今派遣されるのは、女性兵に軍人、騎士のみ。

 任期が終わるまで、羽のない彼女らは故郷へは戻れない。


 そんな土地で、ハーピーの娘として産まれたアルベリーヌに羽はない。

 父親の血を濃く引いた彼女は、騎士の位を得たものの故郷での生活を早々に諦めた。軽微な耳の病を得たのを切っ掛けに除隊を願い、受け入れられて修道女となったのだ。


「そろそろ愛し子達の冬用布団を用意しないといけませんね」

「わーいふかふかー」

「カーンのが破けてたー」

「フワヒラがいいー」

「愛し子達、お留守番の準備は出来てますか?故郷に取りに行ってきます」

「おみやげ楽しみーおかしー」

「羽のおばちゃんによろしくねー」

「いもうとでもいーよ。おかしー」

「戦地にお菓子はありませんよ、愛し子達」



 孤児達の数々の好き勝手な言葉を後に、アルベリーヌは修道女の格好のまま軍の空港へと向かった。

 物資補給の蒸気飛行船は見上げる程に大きい。歯車をギコギコ鳴らしながら、飛び立つそれに乗り、アルベリーヌは久々に故郷の地を踏んだ。


 長らくの戦争で、木の禿げた山々に耳をつんざく爆音が遠くから響いている。



「叔母様、ご機嫌よう。お願いしていた羽毛は取っておいてくださいましたか」

「ダーリンが用意してたね。素材倉庫に居る筈だよ」


 空軍を預かる軍将にて叔母のアルルローラに目通りを乞い、アルベリーヌは挨拶もそこそこに用件を述べた。

 今日の彼女は副官との会話を中断したにも関わらず、笑みさえ浮かべ、姪に夫の居場所を明かす。

 珍しい、と口にはせず、目礼だけをしてアルベリーヌは叔母から遠ざかった。

 今でこそ穏やかだが、若い頃の叔母は常に殺気立っていた。


 隣国との戦争。いや、それ以上に。

 姉妹や従姉妹と奪い合うことに、一生懸命で。


 それは、窓の外で争い、戦い続ける姉妹たちも変わらない。

 ハーピーは、本来一夫多妻制ではなく一夫一妻制だ。

 男が生まれなくなった昔は、島を離れ、夫を見初め攫いに行く気性の者もいたらしい。


 耳を患ったアルベリーヌには遠くの音は聞こえないが、きっと彼女たちが叫ぶ爆音が響いているのだろう。

 夫の為に歌う求愛ソングかもしれない。

 愛しいただひとりの夫の卵を抱く為に、彼女たちは生きている。




「スティーヴ様」

「……」

「羽毛を頂きに参りました」

「……アルベ、リーヌ」


 壮年の男の顔色は悪く、表情は冴えない。だが、暗がりの中少しだけちかっと目が光った。


「ええ、アルベリーヌです、お父様」

「そう、か」


 若い頃にさんざん恐怖で叫んだ喉は、使い潰されて掠れている。

 それを恥じてか、彼は身内以外に言葉を発することは殆ど無かった。

 外で争うのも、武器を磨くのも、どこぞの狼王子に求愛しているのも……父方からみれば皆アルベリーヌの姉妹だった。


「袋……7つある」

「助かります」

「……ローラは」

「外で兵の指揮を」

「……」


 父親の顔が解けたところをアルベリーヌは見たことがない。

 だが、自分も満面の笑みなど浮かべたことが無かったなとアルベリーヌは思った。どちらかというと山岳育ちのハーピーには無い水鳥寄りのモフモフと柔らかい袋を抱え、倉庫を後にしようとした。


「アルマーリーは、昨日。アルーリジーは一昨日」

「……早速卵の為に戦ったんですか」


 そして、恋に殉じてしまったのだろう。あの狼王子は姉妹たちに随分と気に入られているらしい。

 何の興味も示さない娘に、父親は悲しそうな顔を向けた。


「お前は、……要らないのか」

「私?私、卵を産むのなんてこの体では恐ろしくて出来ませんけれど。態々私が生まずとも、親と別れてしまった愛し子たちがおりますし。ああ、託してくださるなら育てますよ」



 途中。鳥籠と呼ばれる豪奢な檻の前を通りかかった。

 その中に、赤褐色の毛皮が見える。

 戦地にも関わらず、随分と念入りに手入れされ、艶々している。

 帰ったら結果のレポートを書かされそうだな、とアルベリーヌは思った。


「反省はしてやるが、許さねえ」


 姉妹が叫ぶ、空の下。聞き違いも多い。

 だが、あまりにも強くアルベリーヌを睨むその赤褐色の目は、まだ父親よりも絶望してはいなかった。


 此処は、浮き川の島。


 羽のない者は、お迎えが来ないと出られない。







島の覇権を争ってるセイレーン(下半身魚で腕は鳥)は隣国バッサバサの騎士たちで御座います。

別名サイレン。彼女らもとっても声が大きいです。

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登場人物紹介
キャラクターが多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] こんな状況でも心折れないゴードンくんが素敵! な訳ないない。 夜這いの文化は無いのですかいな? 毎晩吸い取られるがいい! なんて。
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