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祭りの夜への入り口に、イベント準備の幕開フェーズ

―――――――――


7月7日、ブレイブクレスト初の七夕祭 開催☆彡



 7月7日(土)夜、フリークブルグの城前イベントスペースにて、七夕祭りを開催します!


 短冊に願いを託し、夜空に掲げて皆で盛り上がりませんか?

 当日は天の川に観覧席を設け、屋台とイベントステージを設置して七夕らしい夜をお届けします。


 当日のイベントスケジュールや出展する屋台など、詳細は追ってこちらに追記します。

 知人友人連れ立って、皆様奮ってお越し下さい☆




 イベント開催のため、協力して下さる方も大募集です。


・ お祭り騒ぎが大好きな方

・ フレや友達を作りたい方

・ イベント会場で屋台を出したい方

・ 歌や演奏等、発表の場が欲しい方


 イベント当日のスタッフでも、事前準備のアイテム集めなどでも、やる事はすごくいっぱいあります!

 ほんの少しでもお力を貸していただけると幸いです。質問などもお気軽にご連絡ください。


―――――――――



「すごい……すごいです」


 チラシを目に通したみかんさんが、思わず漏らした第一声。

 その小さな反応に、わずかな安堵と共に心のガッツポーズ。


「今回のみかん様からの依頼、七夕クエスト。

 それに対してぼくの考えた手段が、こちらにございます。

 ユーザーイベントとして七夕祭りを開催し、たくさんのプレイヤーを呼び込むこと」


 通常、ゲーム内でイベントと言えば、運営会社が開催する公式イベントのことを指す。

 公式ページにでかでかと広告が載り、ゲーム内で新着のお知らせとしてログイン時に告知が表示され、そのイベント限定のアイテムがもらえ、時には勝者に特別な栄誉が与えられる。

 イベント内容によって積極的に参加するかどうかは個人の自由だが、少なくとも多くの人の目に触れることは間違いない。


 それに対し、ユーザーイベントというのはプレイヤー自身が企画・運営して執り行うイベントのことだ。

 ログイン時の告知もなく、未実装のアイテムを配ることもできず、およそプレイヤーが通常のプレイで取れる行動の範囲内でしか物事を表現できない。

 それでも、イベントが開催されるという事実がプレイヤーを引きつけ、公式にイベント情報を登録することで、誰でも見れる箇所に宣伝を出すことができる。

 プレイヤーが通常のプレイで取れる行動の範囲内ということは、リアルで身体を動かして表現できることは大体何でもできるということである。


「みかん様がお姉さんと約束をかわしたのが、七夕の日、それも七夕祭りの時。

 であれば、ブレイブクレストで七夕祭りが開催されることを耳にすれば、お姉さんも約束のことを強く意識してくれると思うのでございますよ」

「すごい、すごいです!

 ライナズィアさん、天才です!」

「いや、そこまでじゃないと思うけど……うん、でもありがとう」


 七夕祭りで交わした約束だから、七夕祭りの日に叶える。

 ごく普通の考えだとは思うが、それはそれとして可愛い子に褒められて悪い気はしません。


「イベントが好きなプレイヤーというのも結構居ますし、他のユーザーイベントで見たこともないような『祭り』の開催案内でございます。

 本人がイベント案内を見て居なくとも、友人が誘って連れて来てくれるように楽しそうでわくわくするイベントを目指しましょう」

「はいっ」


 そろそろ目からビームを放つんじゃないかというくらいに、輝くみかんさんの瞳。


「ただし、昨日もちょっと言いましたが、このイベントを開催し成功させるためには、とってもたくさん準備が必要です。

 すごく頑張ってもらいますが、覚悟はよろしいですか?」

「はいっ!

 私だって、昨日も言いましたよね?

 ライナズィアさんの言うことなら何でもしますから、何でも指示して下さい!」


 その瞳の輝きに負けぬ、強い意志を持って。

 みかんさんは目一杯身を乗り出し、笑顔でがっちりと、突然ぼくの両手を握ってしまわれた、柔らかくて暖かい!?


「よろしくお願いします!」

「よ、よろしくね、こちらこそ」


 近い近い、いい匂いするしちょっと襟元とか無防備でやばいですやばいです!

 ぼくはロリコンじゃないぼくはロリコンじゃないぼくはロリコンじゃない!


 その後、動悸を押さえ息を整えたぼく達は。

 そろそろ人も多くなって来たし、アフタヌーンスマイルを出てぼくらの『本拠地』に向かうことにした。




 前も少し話したけど、露店を出すには露店を許可されたエリア―――正確には、露店を禁止されたエリア以外で、ここはお店ですと言い張ればいい。

 ある意味、布を広げて座り込めばそれだけで露店は成立する、ようは場所を取ったもん勝ちである。

 とは言え道路の真ん中に店を開けば通る人々の迷惑だし、時には馬車に跳ねられる。

 自然、門の近くの大通り脇スペースが露店区画となる。


 では、店舗を構えて商売をする場合はどうか。

 この場合、お金を払ってお店を買い取るかレンタルして、あとはその場所を好きなように使うだけである。

 だが当然のこととして、お店は移動できない。人通りの少ないところであれば集客は見込めず、通りに面して居なければ来客は絶望的。

 そのため、商店スペースの金額は、そういった商売的な強みを勘案して値段が決定されていた。


 NPCの商業区画の路地裏、建物の裏にある大きな広場。

 街の門から遠い、人通りがない、空間が通りに面していない、家屋もない。

 商店を出すことも許可されている空き地、というだけのこの広場の商売的な戦闘力は皆無(ゼロ)。ゆえに、この広さの敷地としては異常なまでに安い価格設定がされている。

 以前街中をぶらぶらしている時に通り沿いの家の脇からNPCが出入りしていたのを見た事で見つけたこの場所(穴場)を、七夕イベントに向けた拠点とすべく、とりあえず一ヶ月レンタルした。お値段は月額30万F(通貨単位:フルン)


「というわけで、今日からここがぼくらの拠点でございます」


 だだっ広い空き地の一角、入り口がわりの家屋の隙間から入ってすぐの場所。

 広場にレジャーシート代わりに布を広げただけの場所で、ぼくらは向かい合って腰を下ろした。


「今は布を敷いただけですが、そのうち椅子とテーブルとか用意しましょう」

「家具屋さんでお買い物ですね」

「んー。

 お金は節約したいし、今回の計画には大工も必要ですので。

 協力者をこき使って、作ってもらうとしましょう」

「あ、あはは……いいんでしょうか」

「いいんです。

 お金も有限ですので、人手か時間が足りない時に使います。人手がある限り、急ぎでない限り、自分たちでやりましょう。

 ここが、ぼくらの秘密基地ですからね」

「秘密基地!

 かっこいいです!」


 秘密基地、いいよね。みかんさんもこの感覚が分かってくれるというのは嬉しいなぁ。


「基地の設備増強は追々やるとして。

 七夕イベントに向けて、やることを確認していきましょう」

「はいっ。お願いします、ライナズィアさん」


 イベントの開催に向けて。

 まず最初にやることは、イベントの告知と人集めである。


 イベントの告知は、公式のイベント紹介ページに、さっきのチラシのような文章を載せること。

 目的は、7月7日に七夕祭りをやるということを一人でも多くのプレイヤーに知ってもらうことだ。

 告知の出ている期間が長ければ長いほど、多くの人の目に触れるので、結果としてたくさんの参加者を見込める。

 詳細なスケジュールや準備は後回しで良いので、できる限り早く告知を出したほうが良い。


 もう一つの人集めについては、イベントに協力してくれる協力者、有志(勇士)を集めるということ。

 こちらの一番の当ては、フレンドおよび友人だ。イベント開催の旨をメールし、協力をお願いする。

 告知の中で協力者募集に触れているので、告知を見た中に物好きな人や古馴染み(・・・・)が居れば、協力してくれるかもしれない。

 やることは膨大、必要な職業も多々あるので、こちらも早急に、できるだけ多くの協力者を集めたい。


「あ、先ほど私にフレンドさんが居るか聞いたのは、そういうことだったんですね」

「うん、その通りでございます。

 スタッフ募集は、とにかく人手が欲しい反面、自分の欲のために行動しようとする人を見極めて断らなければならない。

 フレなら交流があるからお願いをしやすいですし、知り合いが相手であれば自分勝手なこともしにくいですから」

「欲……?」

「まあ、多くのプレイヤーが居ると、本当に色んな人がいるわけなのですよ。

 イベントを利用して金儲けしようとしたり、勝手にしゃしゃり出て名前を売ろうとしたり」


 あからさまな妨害でなくても、主旨と違うことを勝手にされたりすると非常に困るのです。

 心の中は見えないから、相手が何を考えているかは分からない。

 だから、本来なら見知った相手だけでイベントを開催したい……けど、そうすると人手が足りないんだよねぇ。悩ましい。


「今回は特に、みかんさんのお姉さんを探すというのが一番大事な目的なので。そのために、個人的な欲は抑えなければならない部分も多いのでございます」

「ふあぁ……本当に、色々考えてくれてるんですね。

 あ、でもライナズィアさんは、その、欲?とか目的とか、希望はないんでしょうか?」

「もちろんございますよ?」


 そりゃぁもちろん、ものすごく頑張るからには、ぼくにだって満たしたい欲ぐらいある。


「あの……私のせいで、我慢とか、無理したり―――ふゆっふぁああのぉ」

「ぼくの目的は、みかん様とお姉さんの感動の再会を実現し、七夕の奇跡をこの手で叶えることにございます。

 そうして感動と達成感と感謝が得られれば、この上なしですね。

 ですから―――」

「ひ、ひたいれう、ごうぇんあはい」

「あんまりつまんないこと言うと、その頬っぺたを引っ張りますからね?」


 言いながら、引っ張っていた頬を解放する。

 すごくすべすべで柔らかくて、ちょっとどきっとしてました。ええ、ぼくはロリコンじゃありませんよ?


「うう……すみましぇんでした……もう引っ張られちゃいましたぁ……」

「はは、ごめんなさいね?

 多くの人が居ればそれだけみんなにそれぞれの思惑や望みもあると思いますが。

 少なくとも、ぼくはみかん様の願いを叶えるために全力ですから。そこんとこは、ちょっとくらい信用して下さいませ」

「……ちょっとじゃなくて、すごくいっぱい信頼してるもん」


 頬を押さえて恨みがましい目を向けてくるみかんさん。

 小動物的な可愛らしさと嬉しさににやけないように気をつけつつ、説明を続ける。


 告知と、フレへのメールは早いほうがいいので、今日中にぼくが行う。あと、ついでにイベント会場の予約も、申請出すだけだし早い者勝ちなので今日中にしよう。

 協力者の募集は今後も継続するし、イベント告知のおまけにちょっと書いたのとは別に、公式の掲示板に募集の書き込みもしたほうがいいだろう。

 来た人への説明も随時しないといけないので、スタッフ向けのイベント説明資料とかも作ったほうが良さそうだ。


「私にも手伝えること、何かありますか?」


 資料作り系も手伝って欲しいし、お姉さんとの約束のことはスタッフにどこまで明かすかは決めなきゃいけない。

 でもそれらは今日みかんさんにして欲しいことじゃないかな。


「みかん様には、生産系の職業の就職クエをして欲しいのでございますよ。

 七夕祭りで特に作業を振りたい生産職は、大工、裁縫職人に、農家。このいずれかを、みかん様にもやっていただきます」


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