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一話

私は天界と呼ばれる所で暮らしていた。


父は天帝で母はその正妃として天界に君臨している。君臨という言い方はおかしいかもしれないが。それでも二人は有能な統治者であった。だから君臨しているといえた。

私には女兄弟はいない。一人娘ではあるが男兄弟がたくさんいた。二人の兄に三人の弟がいる。

私は今日も今日とてため息をついた。父こと天帝ーー爽茗と母の皇妃の珠喜は水も漏らさぬ仲だ。そのせいで私は幼い頃から寂しく思っていた。母をいつも父が独占しているから。悔しくもあった。


「……涙鳴(るいめい)様。こんな所で何をなさっているんですか」


うるさいのがやってきたと私はうんざりする。涙鳴というのが私の名である。声をかけてきたのは女官で私付きの奏季(そうき)だ。奏季は見かけが十五程の少女だが。実年齢はうん百歳の天女である。私もそうではあるんだが。


「奏季。私は考えていたの。邪魔をしないでちょうだい」


「姫様。何をおっしゃいますか。あたしがどれだけ探したか。宮中を駆けずり回ったこっちの身にもなってくださいよ」


「……わかったわよ。奏季。宮には戻るわ」


「じゃあ。縁談の話も聞いてくださいますか?」


「それが嫌だったから宮を出たのよ。奏季。父上と母上に言って。お嫁に行く気はないとね」


何を言ってるんですかと奏季は呆れ顔になる。まあ、わかってはいたけど。


「……姫様。我がままは大概にしてください。天帝様や皇妃様は姫様の事を考えればこそ縁談を持ってこられるのですよ」


「縁談の釣書を見るのも嫌だわ。どうせ、私の血筋と身分にしか興味のない男が送ってきてるんでしょ」


「……姫様」


奏季の目が座る。これはやばいぞと自分でも思った。


「姫様。あたしはあなたが小さい頃から面倒を見てきた乳姉妹でしてよ。嫁がれなかったら天帝様方に迷惑をかけます。地上に降りてほしいとまでは言っていませんでしょう。高位の神に天人でもえりすぐりの方々です。しかもとびっきりの美男ぞろい。贅沢言うもんじゃありません」


「嫌なものは嫌。何が高位の神に天人よ。どの方も私より年上じゃないのよ。しかも美男というけど本当なのか怪しいわ」


私は言い返すとそっぽを向いた。奏季は仕方ないと思ったのか私の襟首をつかんだ。猫の子にするようにぶらんと下がる。


「……ちょっ。何すんのよ!」


「こうなったらやむを得ません。何が何でもお相手を選んでもらいますよ。姫様」


見かけによらず、怪力な奏季は私を引きずって宮へと戻った。やっぱり女官を変えてと母上に頼もうかしら。そう思った私だったーー。

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