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最終回:昨日行われたプロ野球の結果

ーー無事に帰って来られた感想をお聞かせください。

「……今はまだ何も考えられません。どうしてこのタイミングだったんだろう? って……」


ーー行方不明になっている間、どこにいたか覚えてますか?

「……はい。ファンタジアっていう知らない国の、いろいろなところを回っていました。魔王さまは、私が知らない土地で途方に暮れてるのを見て客人として招いてくれたんです」


ーー『ふぁんたじあ』?

「はい。ファンタジアでは最初何もする事がなくて。私が学校では新聞記事を書いているって言ったら、そしたら魔王さまがインタビューの真似事にまで付き合ってくれたり……」


ーーその『魔王』というのが、あなたのそばにずっといたのですか?

「はい。……あの、魔王さまは無事なんでしょうか?」


ーー行方不明になっている間、苦しかった? 辛くなかったですか?

「そんな事ないです! みんな……みんながいてくれたから。腕を千切られた時は、どうしようかと思いましたけど……」


ーー行方不明になっている間、ちゃんとご飯は食べられましたか? 眠る事はできた?

「……もちろんです。たくさんおいしいものを食べました。それにふかふかのベッドで、ぐっすり眠りました。本当です。何一つ不自由してません。魔王さまは……」


ーーあなたが見つかったのは、誰もいない教室の片隅だという事でした。どうやってそこにたどり着いたのか、思い出せますか?

「……分かりません。気がついたら……目が覚めたらいつの間にか、化学室にいて。それまでは『ノドカナ村』の宿で寝ているはずだったのに……」


ーーどうやって教室からその『ファンタジア』に行ったのですか?

「…………。……分かりません。思い出せないんです。頭にモヤがかかったみたいで……ふと気がついたら、ファンタジアにいたんです。夢? いいえ。夢、じゃないと思うけど……」


ーー帰ってきて、まずは何がしたいですか?

「…………。せっかく、あと一回で終わるはずだったのに……」


ーーえ?

「……できる事なら、ファンタジアに戻りたいです。いえ、戻らなきゃ。魔王さまもきっと、私を待ってると思うんです。私、魔王さまと約束してたんですよ。最後は自分の実家で、手料理を振る舞ってくれるって。きっとどこかに戻る方法が……」


ーーありがとうございました。お疲れのようなので、ここでいったんインタビューを切らせていただきます。最後にご家族やご友人にメッセージがあればどうぞ。

「…………。……ただいま」



ーー……被害に遭われたのは高宮第三高等学校に通う二年の女子生徒で、先月から行方が分からなくなっていたとして警察に被害届けが出されていました。授業中の生徒がふらりといなくなり、数カ月後にまた戻ってくるという不可解な事件。同級生が無事元気な姿で帰ってきた事に、同じクラブであると言う新聞部の生徒は『とてもホッとしている。少し疲れているのか、混乱しているようなので今はそっとしておいて欲しい』と語っています。警察関係者は報道機関の取材に対し『彼女の口から出た”魔王”という言葉が、今回の事件の主犯である事は間違いない』、『国際的な犯罪組織の可能性もある。これから彼女が落ち着いたら、詳しく話を聞いていく』と答え、引き続き捜査を続けていく模様です。では次のニュースです。昨日行われたプロ野球の結果ですが……。



《終わり》

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