第16話「ハヌマーン殲滅戦(前)」
ハヌマーンを探して森を捜索すること数時間。
「ワンワンッ」
途中からシフォンが向かう方向に、俺たちは進んでいる。
シフォンは何か匂いをたどっているように見える。
シフォンが立ち止ったところで前方を見ると、洞窟のようなものが見える。
「見て、多分あそこにハヌマーンの群れがいるわ」
ローザに言われて洞窟の方を見ると、周囲にもチラホラと動く影が見える。
「お兄ちゃん、ハヌマーンは巣を持たず、群れで移動しながら生活してるそうよ」
マリンが説明してくれる。
今は目の前にある洞窟を拠点にしているということだろうか。
「ウウゥー…………」
シフォンは怒りを瞳に湛えている。
リベンジするつもりなのだろうけど、よく考えるとフェンリルに大怪我を負わせるハヌマーンもかなり強い魔物なのではなかろうか。
「なあ、マリン。ハヌマーンって結構強いんじゃないのか?」
「うーん、ボス猿の強さにもよるけど、20体もいれば小さな街は壊滅するかもね」
そういえば、コボルトたちも追い返そうとせず、家の中に籠って外に出ないようにしてたって言ってたな。
「まじか……。あそこにはどれくらいいそうなんだ?」
「詳しくは分からないけど、雰囲気的には40体くらいはいるかもね」
「駄目じゃん!? 2街分いるじゃん!」
マリンは気楽な様子だけど、2回街を壊滅させられる数と聞いて、俺はかなり焦っている。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。あたしなら、一人でも街を壊滅させられるもん」
マリンは、得意気にえっへんと胸を張る。
「そ、そうか……」
頼むからむやみに壊滅させて回らないでね。
「そういうわけで~! ちょっと離れててね。レヴィアタンの力、よく見ててね」
そう言って、マリンは一人洞窟の方に向かって歩いていく。
「ちょっ、マリン」
マリンを呼び止めようと声をかけたところで、ローザに制止される。
「大丈夫よ。ハヌマーンなんて、私と互角に戦えるマリンの敵じゃないわ。むしろ、シフォンが戦う分が残るかが心配よ」
「そ、そうか」
ローザに言われて少し安心した。
直後、マリンがドラゴンの姿に変化した。
周囲に広がる圧倒的威圧感に、周囲の鳥が飛び去っていく。
一帯の温度が少し下がったようにも感じる。
洞窟の近くの樹上から数体の猿に似た魔物が姿を見せる。
俺の知っている猿に比べて二回りくらい体が大きい。
おそらくこいつらがハヌマーンなのだろう。
「ギュアァーーー!!!」
マリンの咆哮の凄まじさに、周囲の風景が歪んだように感じた。
俺の方へは背を向けているからまだ良いものの、正面に立っていたら気絶していそうな迫力だ。
「ギュオーーー!!」
二度目の咆哮に合わせて、マリンがブレスを吐き出した。
白く輝く氷のブレスだ。
その威力は凄まじく、触れたハヌマーンは周囲の木もろとも凍っていく。
さらに、洞窟の入り口からブレスが中に流れ込んでいく。
その光景は圧巻だった。
神話のような光景に、俺は見惚れた。
「むぅー、私だってあれくらいできるからねっ」
何やら不満そうなローザに、服の袖をひっぱられた。
人の姿に戻ったマリンが、駆けて戻ってくる。
その顔はとても得意気だ。
「見ててくれた? 今ので、洞窟の中のハヌマーンもイチコロよ」
たしかにあの威力のブレスを流し込まれたら、一たまりもないだろう。
例えが悪いかもしれないけど、隙間に防虫スプレーするが如しだった。
「ワンワンッ!」
シフォンが洞窟に向かって吠える。
洞窟に視線を向けると、1体の大きな猿が中から出てくるところだった。
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『ダンジョン育ちの魔獣使い ~魔物っ娘と魔獣たちの最強軍勢を率いて~』
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