↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/16

第10話「甘さ広がる魔王室(前)」

《狼っ娘エリナ》


 私の名前は、エリナ。魔王城で働くメイドです。

 今日は朝からお城の窓ガラスを割ってしまいました。


 お掃除中に先日食べた“からあげ”のことを思い出していたら、つい力が入ってしまったのです。

 ビシッと音を立ててガラスにひびが入ったところで、我に返りました。


 近くで一緒に掃除をしていた先輩からは、「エリナ……、ニヤニヤしてて気持ち悪かったよ……、思う存分モフってください、って何のこと?」と言われてしまいました。


 つい口に出してしまっていたようです。

 エリナは、はしたない娘かもしれません。


 窓ガラスを割った罰として、リュシー様からまたお昼抜きの刑を言い渡されてしまいました。

 リュシー様の鬼悪魔(おにあくま)、冷血美人です。


 そんなわけで手持ち無沙汰な昼休み、()()()()厨房を通りかかる狼っ娘がいても何ら不思議はございません。


 厨房をのぞいた瞬間、声をかけられました。

 それは女の子の声でした。


「エリナ?」


 驚いて振り向くと、そこには魔王様……、いや元魔王のローザベル様がいらっしゃいました。

 手には調理器具を持っています。たしかボウルという名前だった気がします。

 ボウルの底には、黒っぽい液体のようなものが見受けられます。


 辺りには甘い匂いが、ふわりと漂っています。

 ローザベル様が料理をしているというのは、ちょっと意外です。


「ローザベル様……、私がここを通ったのはたまたまでして……」


 そうです、たまたまというのが大事です。

 私はそう簡単には食い気に負けたりしないのです。


「そうなの? まあいいわ、エリナ、ちょっと手伝って!」


「は、はい……、私で力になれることがあれば」


 お手伝いするのは全然かまわないのですが、何をするんでしょうか。


「そうそう、エリナも聞いてるでしょ。私はもう魔王じゃないんだから、もっと砕けた感じで接してよ」


 ローザベル様は、以前から私におっしゃっていました。

 他に人がいない時は、気をつかわずに友人のように仲良くしてほしいと……。


 ローザベル様のそういう所は凄く好きですが、恐れ多いのもまた事実でした。


「がんばります……」 


「うーん、まあすぐには無理か。とりあえず、ついてきて」


 そう言ってローザベル様は厨房の奥に向かって行きます。

 私は慌ててその後を追ったのでした。



 ローザベル様はあるものを作るために厨房を使っていたようです。


「イツキを驚かせてあげるんだからっ」


 ローザベル様は、嬉しそうにボウルの中身をシャコシャコとかき混ぜています。

 ローザベル様の話によると、今作っているのはイツキ様への贈り物とのことです。

 ニコニコしながら料理を作るローザベル様は、本当に可愛いです。可愛すぎて、ギュッと抱きしめたくなっちゃいます。


 なんでも、人族の風習に“ばれんたいんでー”というものがあるらしく、お菓子を好きな相手に送るそうです。ローザベル様はお母様が人族なためか、人族のことについても色々詳しいのです。


「つまり、ローザベル様はイツキ様のことが大好きというわけですね」


「えっ!? そ……、そんなこと……?」


 ローザベル様の顔が真っ赤になりました。

 髪の色と合わせて、トマトのように赤いです。

 

 何でしょう、この可愛い女の子は……。

 さっき自分で「好きな相手に送る」って説明してくれたじゃないですか。


「じゃあ、好きではないのですか?」


 ローザベル様が可愛すぎて、ちょっと意地悪しちゃいました。


「そんなことはあったり、なかったり……?」


 目を反らして小さい声でつぶやくローザベル様。

 ほっぺたをツンツンしたくなっちゃいます。


 そんな感じでワイワイ楽しく、ローザベル様の料理を手伝わせていただきました。


「できたっ! エリナ、味見して」


 小さい玉の形をした“ちょこれーと”を使ったお菓子です。

 子供のころ雪合戦をした時の、玉を思い出します。

 色と大きさは違いますが。


「いただきます。…………(はむっ)」 


 ん~♪ 美味しいです。口の中でとろけました。

 優しい甘さの中に、ほんのり苦味があってたまりません。

 独特の風味が、私の鼻も楽しませてくれます。


「……どう?」


「ローザベル様! 最高です! きっとイツキ様もイチコロです!」


「そうかな、そうかな!」


 ローザベル様がとても嬉しそうです。

 ついつい私も嬉しくなってしまいます。

 最高という言葉は私の本心ですよ。

 料理をしている時のローザベル様の可愛らしい姿も、イツキ様に見せたかったくらいです。


 そして、完成したお菓子をイツキ様に持っていくことになったのですが、ローザベル様は心細かったのか、私にも一緒に来て欲しいとおっしゃいました。


 いざ突撃です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓▼△魔物っ娘と魔獣の軍勢が世界を席巻する△▼↓
『ダンジョン育ちの魔獣使い ~魔物っ娘と魔獣たちの最強軍勢を率いて~』

↓ 同時連載中! モフモフは世界を救う!! ↓
『最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。