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いつもありがとうございます! ブクマも評価もありがとうございます!!

完結まであと少しです!!



 正直、どん引きだ。


 オスカーにどことなく似た中年のおっさんが、きりっとして謝罪した後、涙と鼻水を垂らしてオウオウ泣きながら謝罪を繰り返しているのは正直どうかと思う。

 同じことをノエルだって感じているのだろうが、やっぱり相手は国王。できるだけ感情を表さずに、わたしを抱きあげたままその場に立っていた。ちょっと離れたところから見れば、泣きつかれているのはノエルに見えるだろう。


 オスカーはやれやれと言った感じ。


「……いつもこんな感じにゃん?」

「そうだね。兄上はとても感情豊かなんだ」


 ちょっと違う気もするが、気が済むまで泣き止まなそうなのでそのままにしておいた。苦笑気味にぽんぽんと国王を慰めているのは、これまた中年のおっさん。オスカーが宰相だとこっそりと教えてくれた。


「次代の精霊王様には大変ご迷惑をおかけしました」


 そんな感じで声を掛けてくる。わたしはじっと宰相を見つめ、ニコッと笑った。


「宰相さんは悪くないにゃん。ヴィーでいいにゃん」

「私もそう呼んでもいいだろうか?」


 宰相に名前の許可をすると、すかさず泣いていたはずの国王が割り込んでくる。わたしはそんな国王を見てくすくすと笑った。


「いいだにゃん。そうだ、二人とも大丈夫そうだから加護をあげるにゃん」

「は?」


 ノエルの唖然とした声を無視して、国王と宰相に加護を勝手に与える。驚いたように目を瞬いていたが、二人は手のひらを見ると嬉しそうに笑った。中年のおじさんなのに、子供のようだと思ったことは内緒だ。


「これはありがたい。でもよかったのだろうか?」

「別に大丈夫にゃん。要らないなら消すにゃん」

「いやいやいやいや。折角だから頂こう!」


 国王は慌てて手を隠す。その仕草が人間臭くて面白かった。オスカーがちょっと不満そうにわたしの耳をつまんだ。


「私にはないのか?」

「オスカーはセドの加護があるにゃん」

「セドは古くからの友人だからな」

「2つはない方がいいにゃん」


 祝福ではなく加護を持つのは1つだけでも珍しいのに、2つもあったら色々と面倒になるはずだ。それを聞いて、オスカーが残念だと肩をすくめる。


「それでだな、ヴィー」


 国王がきりっとした。流石、国を治めているだけある。変わり身が早い。


「なんだにゃん?」

「魔道具を作った屑とそれを知っていながら利用していた屑を捕まえている。奴らを罰する権利は精霊側にある」

「にゃん?」


 よくわからず首を傾げた。つい、他の精霊たちを見てしまった。


「お姫さま、お仕置きしろって言っているんだよ」

「そうそう。お姫さまが納得するお仕置きをしていいって」


 お仕置き。


「国がするんじゃないにゃん?」

「もちろん国も罰する。だがその前に精霊たちが納得する罰も必要だと思ってな」


 ノエルに愉快だと称された呪いを思い出した。精霊たちを見た。


「前と同じでもいいにゃん?」

「好きでいいと思うよ。でも、あれって結構ひどい呪いだよね?」

「日常生活に支障がない素晴らしい呪いにゃん」


 むっとして思わず言い返した。国王が不思議そうに聞いてきた。


「どんな呪いだ?」

「兄上、あれですよ。以前、報告した……」

「性的趣向が変わる呪いと花の呪い、だったか?」


 国王がむむっと難しい顔をして腕を組んだ。あまり良い印象ではないようだ。


「ダメだにゃん?」

「ダメではないのだが……できれば変えて欲しい」

「何故だにゃん?」

「あの呪いに掛かったものと接すると笑いが止まらず仕事にならなん。その呪いのかかった者たちに対応した騎士達が腹を抱えて笑いが止まらないとひーひー言っていた」


 ……。


 首を傾げた。わたしを抱き上げているノエルを上目遣いで見た。


「花の呪いを耳から出るように変えればいいにゃん?」

「その呪い自体をやめろ。愉快すぎる」


 困った。正直、お仕置きと言っても早々に思いつくものでもない。


「……姫君」


 何故か一緒についてきていた封じられていた一人、上位精霊が声を掛けてきた。名前をベリルという。治癒されて柔らかくなったベリルは背の高い、とてつもない中性的な美人だった。緑色の瞳は輝いており、同じ色の髪は艶やかで、さらりと床まで届く長さがある。いかにも精霊、といった風情だ。


「にゃん?」

「この街を吹っ飛ばせばいいのでは?」


 見た目と違い、過激だった。びびびびと毛が逆立つ。


「ダ、ダメだにゃん!!!わたしの精神状態がおかしくなるにゃん!!」

「……」


 慌てて拒否するわたしと青ざめた国王たち。国王たちは跳ね除けることもできないから、内心びくびくだろう。恐怖に震える国王たちを見て、ベリルがうっそりと笑う。どうやら憂さ晴らしをして許してあげようということらしい。


「ヴィー。いい呪いがある」

「ノエル?」

「精霊魔法が効かないようにしてしまえばいい」


 首を傾げた。


「それってお仕置きになっていないにゃん」

「そうでもない。生きていく中で人間は必ず病気になるし、ケガをする。治癒魔法を受けても効かないとなると、恐ろしいと思わないか」


 想像してみた。わたしだって人間だったのだ。そのくらいの想像はつく。要するに治療院に来ていた人たちは治ることなく、痛みや苦しみを抱え続けるのだ。いつ治るかもわからない、死んでしまうかもしれないと言う心理的な追い詰めと共に。


「……恐ろしいにゃん」

「そうだろう? だから呪いなんだ」


 ノエルが優しい手つきで耳を撫でる。


「なんだか、ノエルの方が精霊にむいていそうだにゃん」

「普通だ、これくらい」

「ふむ。それなら、その呪いの効果……治癒魔法が効かないと一度実感させるのもありだな」


 国王が何やら恐ろしいことを言ったが、わたしは聞かないことにした。それは国王の仕事だ。


「あと、わたしからは王さまに要望があるにゃん」

「チェスターだ」

「にゃん?」

「私の名前だ。ヴィーには是非とも名前で呼んでもらいたい」


 首を傾げ、オスカーを見た。オスカーは苦笑気味だ。


「良かったら呼んでやって欲しい。兄上は……友達が少ないんだ」

「チェスター、友達いないにゃん? それは可哀想だにゃん」


 友達がいないチェスターを思い、耳がしょんぼりと垂れる。


「いないわけじゃない。少ないだけだ」


 チェスターがむっつりとしながら否定する。その様子に、本当に少ないんだろうと感じた。哀れに思いながら、話しを続ける。


「チェスターには精霊との契約を管理できる仕組みを考えてもらいたいにゃん」

「どういうことだ?」

「今は人間が勝手に召喚して、魔力で縛っているにゃん。それを辞めさせたいにゃん」


 ううむ、と難しい顔をして考え始める。宰相がなるほどと、頷いていた。


「ヴィーの望むところはどんなことでしょうか」


 宰相が問う。


「管理している役所? みたいなところを通さないと契約できないようにしたいにゃん。全部の精霊を契約させないようにするのは簡単だにゃん。だから、きちんと理解した人間だけが契約できるようにして欲しいにゃん」

「なるほど。協会みたいなところですね」


 実務はやはり宰相の方が話が早かった。


「いきなり全部は無理かもしれないけど、お願いしたいにゃん」

「わかりました。取り計らいましょう」


 チェスターの許可をもらうことなく、宰相が頷く。


「お前でもちゃんと考えていたんだな」

「当たり前にゃん。精霊が一番好きだけど、人間も好きだにゃん」


 ごろりと喉を鳴らしてノエルの手に頭を擦りつけた。



 これにて、一件落着!!!



 ……。



 あれ?

 わたし、手紙はどうしたっけ???




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