02
辺り一面真っ赤な花の咲いてる場所に俺はいた。
霧が濃く、近くに川でもあるのだろうか。
水の音も微かに聞こえる。
ここは所謂あの世という場所であろう。体には轢かれた時の傷はなく、気分も悪くなかった。「お、起きたのか。気分はどうだ?」
後ろから不意に声を掛けられ、腰が抜けそうになった俺を見ていたのは、10才くらいの活発そうな
女の子だった。「ああ、悪くないよ。君が俺を助けてくれたのか?」女子と話すのはだいぶ久しぶりだ。「ご名答!君があの花たちを潰して倒れてたから、どかすついでに助けてやったのよ?感謝せい!」ついでってなんだよ!なんて口にはとても出せないので心の中でシャウトする。
ところで、と幼女は話題を変える。
「ところで、お前さんは異世界に転生したいのか?その言葉で死ぬ間際のことを漠然とだが思い出す。そうだ、俺は確かにそんな事を考えていた。それにしても随分と非現実的なことを考えたものだ。馬鹿か俺は。それでもやっぱり。可能性が1パーセントでもあるのなら、「転生したい」
俺ははっきりとした口調で答えた。
幼女は少し悩んだ末、話し始めた。
「勇者に…なってみないか?」
「…勇者?」RPGの世界の様な言葉に戸惑う。
「そう。世界を救うため、民のために戦う勇者だ。わしがまだ生きていた頃、世界にある一族が現れた。ドルモア族だ。突如攻め込んできたドルモア族は人間の想像を遥かに超える武力と魔術で
人間の居住地を次々と鎮圧していった。その結果
人類は絶滅の道を歩み始めている。今もまた、
一つ、二つと街が制圧されていってるだろう。
もうだめだ…と諦め掛けていたところに現れたのがお前さんだ。君ならその剣技で世界を救ってくれると思ったんだ」あまりにもスケールの大きな話についていけないハヤトに再度訴える。
「頼む!わしも力になるから!」
畜生。うるうる瞳で上目遣いされたら断れないじゃんかよ。最初から断るかなんてさらさらないが。「よしっ」と決意し、彼女に俺の想いを伝える。「わかった。俺が世界を救ってやるよ。
せっかくの挽回するチャンスだ。これからよろしくな…えっと」
そういや、まだ名前を聞いてなかった。
「エメリだ。エメリ・セティエ。よろしくな!」
「俺は兎崎ハヤトだ。一緒に頑張ろうな!」
「うん!」これから始まる異世界での冒険に胸を膨らませつつ、『世界を救う』とういとんでもない課題を背負い、少し不安もあった。
けれども、こちらを見る彼女の満面の笑みに
よってそんな思いはすぐに消え去った。