見えない何か
真っ暗な部屋に入ると、そこに同居人の姿があった。もうすぐ日付が変わるというのに、彼は起きていた。そしてやはり、窓の外を眺めている。俺は近づき、その視線の先にある物を探るように外に目をやる。当然、昼間の景色が暗闇に覆われただけの面白みの欠片もない景色が見えるだけだ。だが…。
「君がいつも眺めているせいで、なんだか気になるんだ。毎日毎日飽きもせずに、こんな空き地のどこが面白くて見ているんだい?」
「にゃーん」
「…前に『猫には幽霊が見えるんだよ』って、母さん言ってたけど、そんな情報、いったいどこから仕入れてくるんだ?…というか、いつからあんなにオカルト好きになったんだ?」
「にゃーお?」
「ん?なんだよ。実は本当に見えるってのか?チビの言ってる事が分かれば、こんなのすぐに解決するんだけどな〜」
「うなーん」「はいはい、また明日な」
そんな不毛な言葉のドッジボールをしていると、電波時計がピーッと音を立てた。どうやら日付が変わったようだ。冬用の掛け布団ではそろそろ暑いが、少し開いた窓からの風が心地よく感じられた。そんな穏やかな夜に春の訪れを感じながら、ベッドに横たわる。どうやら同居人も一緒に寝るようだ。ふと気になって西側の窓を見るが、ベッドの上からでは北北西の夜空しか見えなかった。『猫には幽霊が見える』という説が気になったが、脳が働く事を拒否している。重くなったまぶたに身を任せて、俺達は今日の朝日を待つのであった。