第11www正義は枯つ(笑)
美脚蜘蛛から逃げつつ森の奥を着々と進んでいくと、発酵菜蜱が群がっていた。
今更ながら凄い臭いがする。
先程の美脚蜘蛛の激情態の臭いで鼻が麻痺してなければもっと早くわかったものの。
幾ら、昆虫系の中では脆弱とはいえ、群れはキツいって群れは。
ーーーーーーーーーでもさ、逆に言えば、ザコくてたくさんって事なんだからお得なのかもしれない。
でもさー、ザコいのじゃ満足できないから森に来たのもあって、苦労してザコ食べるんじゃ、本末転倒だし。
…まっ、いっか(笑)
えーっと、発酵菜蜱の情報は…
キムチダニ
今は亡き、そのかつて更盛を誇ったとその末裔たちによって伝えられているキムチニア(kimuchinida)王国付近に住んでいたとされる。(dの音は発音しない。)
特徴的なのは対称的な回文の鳴き声と、発酵した野菜のような臭いである。
赤い色をしており、大きさは成虫の背丈が背の低い成人男性程度。
咬まれると火傷の様な炎症を誘発する。
少しの刺激でパニック状態に陥るが、
一定以上のダメージを与えると途端に大人しくなる。
その発酵臭いと赤い色からその名前が付いたとされている。
大型のモンスターに寄生しては、そのおこぼれに預かったり、寄生先のモンスターの血を啜ったりするが、血を吸われたものは猛烈な痛痒さで直ぐにわかる上に、
必要以上に食事を摂り、取った食事分膨れ上がる構造のため、
寄生先のモンスターが身体をかきむしった折りによく振り落とされたり、潰されている。
性欲が強く直ぐに交尾を行う性質や、
互いの同意なく交尾が始まる性質上、受精機会が多い。
栄養を取って膨らんだら、直ぐにその栄養をもって卵を作り続け、膨らんだ中身を食物から卵に換えてしまう。
最終的には内蔵すら卵巣にしてしまうが、
幼虫達が死産したときは内蔵が修復されることもあるらしい。
幼虫は腹の中で孵化して産まれてくる為、非常に珍しい胎生の昆虫モンスターであるが、幼虫が複数体で母親の体から出ようとすると、よく詰まってしまう。
また、母親が死んでいても中で卵が孵る為に、母親がモンスターから振り落とされたり、潰されたとしても子孫は残せる。
力が余り強くない種族で、防御力重視のステータスであるため、母親の体から出る際に詰まってしまうと出られなくなった幼虫は全滅してしまう。
その為に敢えて寄生先に体を破らせる個体が生き残ったのかも知れないと言われている。
個体として虫系統としては強くはないが、種族としては非常にしぶとい。
…だってー。
要するに痒かったり臭かったり色々とウザったいヤツで、
外敵達に捕まる前に、面倒なヤツがこちらにいますよーってアピールする系の奴だな。
毒持ってるヤツが敢えてケバケバしいのや、
ゴロツキが厳ついカッコするのと似てるな。
そんなアピールばっかり強すぎるヤツが、こっそり大型モンスターに寄生できるのか謎だけどな(笑)
でーだよ、コイツの特徴は、大型モンスターに寄生するって事で、言い換えれば、中、小型モンスターへの対策を取れて無いんじゃないか?
ってこと。
そこを狙えば何とかなるんじゃない(テキトー)
そして、妊娠初期のメスであれば、自身の栄養や内蔵を放棄しただけの普通の個体の劣化版で、倒してもまだ中身は動けない卵だけだ。
よーしっ、さっくりと一狩りいこーぜっ‼
「じゃっ、剣士君、君に決めたッ‼」
頑張ってね~。
取り敢えず、剣士君に突っ込ませる。
文字通りの切り込み隊長ねー。
幾ら情報は手に入れてるとはいえ、
実際に戦った事無い上に複数の敵と本番で戦うとかないわー。
だから、威力偵察って言うのかな?
それ、実施。
……でもさ~。剣士君ジト目でコッチ見てるんですけど~。コッチみんなー。
なにそれ~。もー、空気悪くなったじゃん。
え~? 何~? 不満とかあるの~。
ーーーーーーお金に困ってるんでしょ、君。
娘さんの病気、お金掛かるんでしょ?
「…。」
…うん、分かってくれたようで嬉しいよ。
じゃあ~、雇い主様の言うことは~。
「絶対…。」
うん、良くできました~。
「じゃあ行きなよ。頑張ってね~。」
えとさ、魔法使いちゃん?
何か言いたそうだね?
「君も威力偵察、興味ある?」
「いっ、いえ……。」
そう、ならいーんだよ。クリーンだよ(企業体質が)。
剣士君は、かなり良く奮戦してくれてる。
発酵菜蜱3匹と超近接で剣栽を繰り出してる。凄いねー。
でもさー、微妙に負けぎみだね。
仕方無いなー。
「魔法使いちゃん、さっきやった魔法を全力全開でお・ね・が・い。」
「そんなことしたら、ハーグさんが…。」
「…威力偵察。」
「……………はい。燃油魔法」
結局、やるんじゃないか~い(笑)
折角なので俺もそれに合わせて、
「フォオオオオオッッッーーーー!!!!」
対象に対する強制注目。
その声に釣られて、注意を強制的に削がれたのは、発酵菜蜱とーーーーーーーーー
「Quuiquueeeeeeii!!」
「Quuiquueeeeeeii!!」
「Quuiquueeeeeeii!!」
「ぎゃあぁああぁあぁぁぁぁっっ‼」
あーれれれれ?
熱さに悲鳴を上げたのは3匹次いでに1人の男。失敗、失敗~~(笑)
…これで払わなきゃいけない報酬は要らなくなったね。
「彼は、逃亡したことにしておこうか。ね?」
敢えて、最後の『ね』のところは凄んで見る。
「…。」
う~ん、この娘、状況理解してる~?
「ってゆーか、キミが燃やしちゃったんだよね~。
それ、皆に知られたらキミだって大変でしょ?」
今更助けても、恨まれるのは必然。
だから、途中で生きてることに気が付いた火葬場の職員みたいに焼け死ぬのを待ってる時点で、君も俺と同類だっての。
「……。」
無言? だろうね、そう仕向けたし。
敢えて、責任を全て押し付けた上で押し黙らせる。
車で曳いた自転車乗ってる高校生に、慰謝料や治療費の前に車の代金を強く迫るのとおんなじだね~。
俺、結構やりなれてるのよ、そーゆーの。
だからさ、
「彼は、娘の事なんかどうでも良くなって逃亡した。だよね?」
ここは敢えて明るくそう言う。
喋り易くなるし、
その方が、自分で選んだ気になるだろ?
罪悪感特盛り、後ろめたさマシマシで。
「は…い…。」
堕ちた。
生きて変えれたら肉奴隷か肉容器にしてやるよ。
あっ、生きて『帰れたら』の間違いだった、ゴメンゴメン(笑)
…もし、次にピンチになったら、
言わなくても分かってるかな~?
男の次は君の番(笑)