1話
「お前ってさぁ。将来医者にでもなるつもりなの?」
「………は?」
向かい側の席に座る志島の方に目を向ける。その間に英単語をひとつ覚えられただろう。
志島はとても不機嫌そうな顔をしていた。
「せっかく期末が終わったんだから、今は勉強とかすんじゃねえよ。ガリ勉か。」
いや明後日に小テストあるし。
今日は土曜日、一学期の期末テストが無事に終わり、志島と二人でファミリーレストランで昼食を摂ることになったのだが、どうもこの志島というクラスメイトとは価値観が合わない。料理待ってる間は暇なんだから、ターゲットくらい読むだろう。それに
「何回か言ったと思うけど、僕は警察官志望だよ。医者じゃない。」
「その将来の夢、何回聞いてもお前のイメージに合わないよなー。」
そうかな。一応、小さい頃からの夢なんだけど。
「けど、警察官目指してんならやっぱりそんな勉強する意味ねえだろ。お前、中間で学年4位とかじゃなかったか?」
「5位だよ。」
4位だったのは同じクラスの西条さんだ。別にクラス1位とかにこだわっているわけではないけれど、まあそれなりに悔しい気がしたことは印象に残っている。
「飲み物とってくるよ。」
中間考査のことはあまり掘り下げたくなかったので、とりあえずその場を離れることにした。
コップにウーロン茶を注いで、ついでにストローを一本とる。
座席に戻ると、志島が僕のターゲットを読んでいた。
お前も勉強してるじゃん。