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今川義元の野望  作者: 高野康木
プロローグ
1/32

不思議な寺と、知らない場所

「う~ん」


うねり声をあげると、深い眠りから目覚めた少年。松林広大(まつばやしこうだい)

しばらく横になっていた為だろうか、自身の身体の調子を確かめるように首を左右に振る。

すると、周りの変化に気づいたのか、口を開けつつ、突然動きを停止してしまった。

なぜならば、広大の目の前には沢山の木があったからである。

正確に言えば、林の中ーー。

最悪の場合、森の中である。


「えーと……。なんで、ここにいるんだっけ?」


腕を組み、頭を傾げた広大は、必死に記憶を探りだす。

原因は、すぐに突き止められた。

広大という男は、大胆な性格の人物である。

昨日、小学校から密かに想いを寄せていた同い年の高校一年、水島薫みずしまかおりに、勇気をだして告白したのだが……。

即座にフラれた。

理由は、単純であった。


「松林くんって、いい加減な感じがするんだよね」


その言葉をきくやすぐに、広大は走って逃げた。

自分の欠点など、百も承知だったのだが、他人にーー。しかも好きだった人に言われたことで、精神的なダメージは深刻であった。

学校をとびだし、息がきれるぐらい走ってから、ハテと気がついた広大。

まずいことに、気づいてしまったのだ。

初めてのサボりである。

家に帰れるはずもない広大は、町をうろつく事にしたのだが……。


「知らない内に、寝ていたのか」


ある程度の記憶を思い出すことができた広大だが、何故か寝てしまった場面の記憶がない。

まるで、欠落しているかのように……

普通なら、この場面で頑張って思いだそうとするのが、大半の一般人の行動だろう。

しかし、この男は違う。

生きてるなら、それでいいか。と考える男なのだ。


「とりあえず、ここから出るかな」


独り言を呟き、木々の中を歩き続けていると、数メートル先に壁が見える。

しかし、少し近づくとわかったことだが、上の方は、かわらでできており、壁というよりは、(へい)であった。


「おぉ。人の家か。少し話しかけてみるかな」


左右を見回すと、まるで城を囲うように、塀はどこまでも広がっていた。

正面玄関に行くのは、どうも大変そうだと考えた広大。


「すいませーん。道に迷ってしまったんですがー!」


声が届けばいいと判断した広大は、大声で呼び掛けるが、しばらく待っても応答がない。

よくよく耳をすませると、微かに、笑い声が聞こえるのだが、広大の声には、反応してくれないらしい。


(無視されてるのかな? 感じ悪い家だな)


その場で短くため息をついた広大は、仕方なく、侵入することにした。

入ってから、理由を話して許してもらえばいいか。と考えての行動であった。

高さ的には、よじ登れそうだった為、容易く侵入することに成功。

塀から地面に着地した広大は、驚きに目を見開く。

何故なら、家と思っていた場所が、寺であったからだ。

しかも、寺といっても、住宅街にあるような普通の寺ではない。

まるで、奈良の寺を全て集めたかのような、大きな寺である。


「すげー。どこかの、世界遺産か?」


周りを観察しつつ、土の地面を歩きながら、声のする方にむかう広大。

廊下から襖に近づくと、数人の男の大笑いする声。

どうにも、酒を飲んで酔っている様子である。


(朝から酒を飲んでいるなんて、お坊さんのすることかよ)


イラッとした広大だが、ここで争い事になってしまうと、警察を呼ばれる可能性が高くなってしまう。

既に不法侵入をしているのだ。

ここで、フラれた挙げ句、警察に連行れんこうされるなんてことがあれば、学校中の笑い者になるのは、間違いない。

そこまで容易に想像できた広大は、ため息を一度つくと、笑い声の聞こえる障子しょうじを開けようする。


「んっ?」


が、渡り廊下の奥の方から、微かに綺麗きれいな声が聞こえた。

引き寄せられるように、広大は、声のする方に歩きだす。

声の聞こえる部屋につくと、何を言っているのか明確に理解できた。

きょうである。

どうやら、きちんと禁欲をしているお坊さんもいるらしい。


「この人なら、話をきいてくれるかもな」


小言で、独り言を呟く広大。

障子に手をかけて、ゆっくり開ける。

薄暗い部屋の中。観音様かんのんさまの前に座る小柄な人物は、広大に気づきもせず、お経を唱え続けている。


「……あのー。すいま」


せん。と言う前に、小柄な人物が突然飛び退く。

右に転がり、薙刀なぎなたを手に持つと、しっかりとした構えをとる小柄な人物。

そして、広大に対してーー。


何奴なにやつ!?」


と高い声で、そうつげてきた。

できれば、一ヶ月ごとに更新します。


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