ユマ
ある悩みのせいで一カ月更新が止まる羽目に……。お待たせしました。
犬は日本でもペットとして認知されている中で猫と同様に最も知られている動物だろう。
忠。そんな漢字が良く似合う動物である。
では犬族はどうなのか。
ザード曰く、『数多の獣人の中でも個にして最弱、群として最強』と評されているのを酒飲み話に聞いた事がある。
だからというわけではないのだが、秀雄はユマを選んだ。
無表情で死んだ目だが、容姿としては美少女だ。活発さは欠片もない。
黒色の髪と尻尾で小麦色の肌。チラチラと服の隙間から覗く肌は白いので純粋に日焼けをしているだけのようだ。
胸とか尻とかそういう女性的な部分は控えめだ。
奴隷商に確認したら14歳という話だし、アレでナニな話というのは幾分先の話になりそうだ。
俺はNOタッチを守れる男。秀雄はそう自身を納得させた。
「さて、ユマ。契約が成立したのでこちらが今日からお前の主人となる方だ。粗相のないようにな。ところで奴隷磨きをしていかれますかな? 御値段は50Gになりますが」
「奴隷磨き?」
「ええ、奴隷の汗や垢や臭いが不快と感じられる方も大勢いらっしゃいますので、奴隷の体を洗うサービスです。オプションで清潔な服を身につけさせる場合はさらに25G、靴を身につけさせる場合には更に25G申し受けます」
「頼む」
100Gを支払う。しばらく掌の上で硬貨をにぎにぎと触った商人は、自らの巾着に仕舞った。
「よろしいので? 購入者の中には自分で洗いたいからとそのままお持ち帰りになる方もいらっしゃいますが」
自分で奴隷の体を洗うのか。それもいいかもしれないが、少女の体を洗うとか奴隷の主人レベル1の俺にとっては上級者過ぎる。もうちょっとレベル上げてからじゃないとそのクエストは達成できそうにないな。
「ふふふ、それもまあいいでしょう。おい、ユマを洗っておけ。それから奴隷契約についての詳しい説明も任せる」
傍に控えていた女性の獣人に命令し、自分は鏡を持つとさっさとテントの奥に引き揚げた。眼鏡が似合う狐耳の獣人の女性はユマと俺を水場にまで連れて行き、ユマを全裸にした。
ロリとはいえすっぽんぽん。秀雄は顔を赤くして背を向けた。
「見てても構いませんが」
石鹸を手に持つ狐耳の獣人がユマに水を掛けながらいった。
見たいけど、見ない。俺の奴隷だし別に見てもいいんだろうが無駄にハードルが高い。
水をかけて洗う音。それから擦って、また水をかけて。それを何度か繰り返す。
「終わりました」
獣人の女性の言葉に振り返ると、ユマは白い服を着せられている。汚れが取れたせいか若干見栄えが良くなったようだ。汗や垢も多少は取れただろうし、臭いは気にならない。
「では今回結んだ奴隷契約の内容を主人に代わりまして説明したいと思います。奴隷の扱いについてです。奴隷を所持した主人は奴隷に最低限の衣食住を提供する義務がありますが、絶対ではありません。奴隷に関する法整備自体未整備なので、所有者の良識に委ねられています。具体的には奴隷を他人に修復不可能な傷を負わされた場合は奴隷の価値の半分を支払えば罰せられない、とかですね」
ハンムラビ法典かよ。高校の授業で習った覚えがあるぞ。
でもそんな内容でいいの? 最悪殺しても罪に問われないって事?
「しかも、奴隷は主の命令に逆らう事が出来ません。それは様々な理由によって説明できますが、最たるものは契約による強制性です。一度契約を交わしてしまえばそれは絶対の規則になります。規則を変更する事は可能ですが、初期の契約では奴隷が主人を害する場合、奴隷に対してダメージが与えられます。また主人が死んだ場合、奴隷も死にます」
「それは何でですか?」
「奴隷契約の内容に組み込まれているからです。主人が死んだら奴隷も死にます。従って相手を道連れに自分も死ぬという覚悟ではない限りは奴隷は主人を害せません。余程酷い扱いをしなければ大丈夫でしょう、まあ年に数件は起きるようですが」
なるほど。それは主人が有利だ。他にもどういう内容があるかは知らないが、主人有利のルールなのだろう。
「また、奴隷の所持品は原則全て主人の物として扱われます。あくまで原則であって、例外はありますが立ち入りません」
うん、その辺もなんとかわかった。
細かく説明されても覚えていられないと思うしザックリでいい。
「また、奴隷は一人の主人しか持てませんが、主人は複数の奴隷を所持出来ます。これは当然と言えば当然の話ではあります。他の所有者が欲しいと思っても、既に契約者が居た場合契約することは出来ません。奴隷を譲渡してもらったり、相続する場合は別ですが」
相続? 所有者が死んだら奴隷も死ぬんじゃないのか?
「はい、原則その通りです。契約内容を変更し相続先の内容を書き換える事によって奴隷が死ぬことはなくなります」
いろいろルールがありそうだが、まあ誰かに相続させるつもりはないからあんまり関係なさそうだ。
「それから契約ボーナスです。奴隷契約が成立したとき、奴隷は主人のステータスによって様々な補正を受ける事が出来ます。基本的には主人のレベルが高ければ高いほど奴隷も強くなります。もっとも、補正の倍率は主従の信頼で代わるので一概には言えません。レベル50の主人よりもレベル25の主人の方が補正値が大きいということは理論的に起こり得ます」
それはわかった。ようする奴隷との間の信頼関係が強くなればなるほど奴隷も強くなるということか。
「加えて奴隷は自身の能力に加えて主人の魔法・技能を一部使用する事が出来ます。主人側にも稀に強化が起こるので、ステータスをチェックしておくと良いと思います。奴隷側のステータスも見ることが出来ます」
LV:37/100 職業:ニート
経験値:689P
次のレベルまで:6290P
HP:279/279
MP:265/277
SP:290/290
筋力:108
体力:140
早さ:78
賢さ:78
幸運:45
魔力:103
補正:精力
魔法:『髪の毛は友達』L2『明日の本気』『おおきくなーれ』 タイムL7 ポイントL2 ワープ ドロー 風刃L37 加速L11 治癒
技能:台バン 床ドンL8 壁ドンL13 壁破壊L3 貧乏ゆすりL11 高速移動L6 自動LVUP(素数)察知L10 跳躍L7
技巧:槍術 魔術
契約:奴隷
強化ポイント 36
ステータス欄に契約という欄が増えた。それだけだが、ユマの項を調べてみると、
名前:ユマ 性別女 種族:犬族 犬種 LV:1/10 職業:奴隷
経験値:0P
次のレベルまで:10P
HP:9/9 +27
MP:5/5 +27
SP:12/12 +29
筋力:8 +10
体力:14 +10
早さ:8 +7
賢さ:7 +7
幸運:1 +4
魔力:1 +10
補正:忠誠強化(10%)
魔法:風刃 加速 治癒
技能:壁破壊 高速移動 察知 跳躍 潜伏 咆哮 追跡行動 集団行動
契約:主人(秀雄)
強化ポイント 0
どうやらユマの能力も見れるらしい。主人の能力を一部共有するという話だから、魔法/技能欄に見覚えのある項が多いのはそういう話なのだろう。
観察して分かる事は共有と言っても奴隷に魔法や技能のレベルは引き継がれない。奴隷強化という補正は信頼によって変化するという話だし、知らない技能と含めておいおい調査していけばいいだろう。
「以上で説明は終わりです。何か質問はありますか?」
「いえ、最初から全部言われてもわからないですし、これで大丈夫です」
「そうですか。また聞きたくなったらいつでも当商会へ照会してください」
そう言って狐耳の女性は去って行った。
残されたのは秀雄とちっちゃな獣人。
身長150センチくらいだろうか。不安そうに秀雄を見上げていた。
「……今日からよろしく頼む。俺の名は秀雄」
「わ、私の名前はユマです! よろしくお願いしまちゅ」
ユマはバッと思いっきり下げた。噛んだ事は指摘しないでおこう。
ユマを連れだって宿屋に向かう。途中、きゅるるる、とお腹が鳴った音がしたので隣を見ると、ユマが赤面して俯いていた。
大丈夫、俺は察せる男。
「わっ!」
ユマを抱えあげると、跳躍の技能で屋根の上まで跳ね上がった。ユマに腰を落とさせて袋の中から先程購入しておいた串焼きを取り出す。
二本取り出して、一本をユマに与えた。食べていいよと促すと、ゆっくり噛み締めるように食べ始めた。
秀雄も串焼きをむしゃむしゃと平らげる。
「ご主人様? とお呼びしたらいいですか?」
ユマはこっちを見ずに、か細い声で聞いてきた。奴隷には普通なんて呼ばせるのが最適なんだろう。旦那様とか名前に様付けとかいろいろあるんだろうが。
ここは王道でご主人様の方がいいかね。
「そうだな。それがいいな」
少し考えてそう答えた。
「ご主人様。これからよろしくお願いします」
ユマはそういってはにかみ、ぺこりと頭を下げた。レイプ目が若干緩和されただけ良しとしておこう。
そうは言っても串焼き一本で腹が満足するほど秀雄の胃袋は小さくない。ユマもガリガリだし、少しは栄養価のあるものを食べさせたいところだ。
というわけで肉を食おう。
猫耳娘の所にお邪魔しようとか考えたが、同じ亜人を奴隷にしているのを見て平然と出来るだろうか。
ナシだな。
なるべくなら印象悪化は避けられないだろうが、こちらの出方次第で致命傷を受けない程度、リカバリーが可能な程度には緩和可能なはずだ。今フェイの所に飯を食べに行くという案は却下だ。
今日は店屋に行った方が良さそうだ。
パスタのお店で腹ごしらえをする。
奴隷と言っても見た目は普通の人と変わらない。立ったまま待ちます、と言ったユマを座らせて食事を取った。
奴隷と一緒にご飯を食べちゃいけないとか両親が奴隷なだけに奴隷歴が長いユマは抗議したが、そんなのは知らない。
そんな常識より美少女とお食事する方が明らかに優先順位が高い。これが筋骨隆々のむさ苦しい男だったら立たせて食べましたけどね。
宿屋に戻る。部屋はダブルに変えてもらった。カウンターのオヤジがフヒヒ、と笑みを浮かべたが軽く流した。
ユマは同じベッドで寝させる事にした。
性的な知識はあんまりないのか、ユマは警戒心があんまりない。
いずれは手を出すつもりではあるが、それは今じゃない。今はガリガリだし、若過ぎるし。
怯えさせて信頼関係を壊すとユマの戦闘力にも影響が出るし。先の話だ。
でもユマを抱きしめて寝るくらいはセーフだと思う。
元の世界でも犬と一緒に寝る人はいるしね!
少女だと考えるとアウトだけど犬だからギリギリセーフ。自分でも良くわからなくなってきた。
というわけで今夜は抱きまくら代わりにユマを抱きしめて寝た。
抱き心地は当然良かった。犬耳を一心不乱に撫でまわしていたら恍惚とした表情で息を荒くしたので途中で中止。ルファの撫で心地も良いけど、ユマの撫で心地も良い。
皆違って皆いい。と独特な字体で味がある人が言ってたしな。
翌朝。目を開けたら飛び込んできたのは、ユマの寝顔だった。
スースーと眠っているユマの頭を撫でた。尻尾は敏感なので頭や頬だけ。
「かわいいなぁ。元の世界では考えられないな」
こっちで苦労をすることもあったけど、元の世界でひきこもりニートしているよりは何倍もマシでまともな生活だ。
しばらくの間頭を撫でているとユマが起きた。目が合う。
顔をサッと朱に染めたかと思うと毛布を被ってしまった。犬耳は隠れていないのでそこは指で揉んでみた。
「ううう……」
顔の半分だけを布団から出してこっちを見つめる二つの目。
「ヒデオー。様子見に来たニャー」
ガチャ。
ノックもなく乱入してきたのはルファだった。どうなってるの?
ルファが俺とユマを交互に見る。
「にゃ? にゃにゃにゃ? ニャアアアアアアアッ!?」
遊びに来たルファを交えてユマを紹介した。
「まさかヒデオが奴隷を持つとは流石のルファもびっくりだニャー」
腕を組んでうんうん唸るルファを座らせる。
「どう考えても内緒にする必要があるニャ! このままだとフェイ、アニーに蔑んだ目で見られるのは既定路線ニャ。ルファとしてはセーフにしておいてあげるニャ。切りだすのはタイミングを見た方がいいニャ」
ありがとうございますお代官様。
ルファはユマをしげしげと観察すると、ユマはビビって秀雄の背に隠れた。
「むー……。弱そうだニャ」
それはそうだ。レベルが1だもの!
「ユマのレベルは1だ。弱いに決まっているだろう」
「職業はやっぱり奴隷なのニャ?」
「そうだけど」
ユマが背中にへばりついているので代わりに受け答えをする。
「じゃあとりあえずジョブチェンジ目指して頑張るべきニャ。奴隷に手を出さずに真面目に育てて強くした、養っているというのが分かればフェイやアニーも認めてくれるにゃ。多分」
「わ、私は別に強くならなくても……」
「黙るにゃ」
「はい……」
意見したユマだが、ルファに一睨みされてビビったユマは俺の背中に隠れた。
ジョブチェンジ。それはつまり転職ということだ。この世界転職なんてシステムがあったのか。二か月居るけど知らなかったぞ。
「ああ、ジョブチェンジね。ジョブチェンジってどうすればいいんだっけ? ど忘れしちゃって」
「頭は大丈夫かニャ? そんなの子供でも知ってるニャ。ジョブチェンジは聖院の神官がやってくれるニャ」
なるほど。聖院という場所に行って神官を探せばいいのね。
「ヒデオはそういうところザルだニャー。もしかしたらサブジョブも取ってないのかニャ?」
「サブジョブ?」
副業ということか! それも初耳だ!
「例えばルファはメインジョブが剣士、サブジョブがエンチャンターにゃ。フェイのサブは料理人、アニーのサブはスカウトにゃ」
エンチャンターとは知ってるゲームだとアイテムに呪文を掛ける職業、スカウトは罠を外したり索敵したりして便利屋的な職業だった筈だ。
この世界でそれが正しいのかどうかは知らないが、そういう感じで捉えておけばいいだろう。料理人は説明するまでもないな。
「でもサブジョブを付けるとメインのジョブが強くなりにくくなるから一長一短だにゃ」
「なるほど。ルファが来てくれたお陰でいろいろ助かった。じゃあユマ、早速戦闘訓練だ」
「……戦わなくても結構ですぅー!」
ユマを引きずって部屋を出た。宿屋の一階での食事はルファの分も奢る事になった。「情報料と口止め料だにゃ」奢らせていただきます。
宿屋から武器屋に向かう。流石に素手・防具なしでモンスターとやり合えという程鬼ではない。
ユマは珍しそうに武器を眺めている。
「わー、この剣かっこいいです!」
ユマが見ているのは両刃で刃渡り80センチ程度の片手剣だった。武器屋の主人に許可を取ってユマに試し振りさせてみた。
「……重くて振れません」
ユマはへろへろだった。俺が言うのもなんだが体力ないな。
「ははは、その武器で駄目だったら片手剣は止めて短剣にしたらどうだい。ブロンズダガーかアイアンダガーだったら扱い易いし初心者にお勧めだよ」
店主はユマを呼び寄せると20センチ程のナイフを一本カウンターにおいた。
「これはアイアンダガー。ちょっと振ってみな」
ぶんぶんダガーを振るユマ。確かにこれなら問題ないようだ。さっきよりマシ程度だが。
「じゃこれ1本……いや、予備もいるし2本くれ」
「よしきた。2本で1500Gだよ」
防具屋だ。ユマは体力がないし、防具は俺の皮装備シリーズ一式でいいだろう。魔法効果で自動サイズ調整がついているから俺自身の防具を買おう。
「防具は俺のお下がりだ。皮の装備一式でひとまずは十分だろうし、傷んでもいないし。難点があるとすれば俺のお下がりだから臭いかもしれないが」
「大丈夫です! 昨日一緒のベッドで寝ましたが良い匂いでした!」
言い切るユマ。
ざわざわ。
ひそひそ話でこっち指差されているが気にしたら負けだな。
皮装備といっても皮装備が悪いわけではない。装備品の防御力についてもギルドで教えてもらってある。
動物皮の装備は弱いが、強力な魔獣皮や龍皮なんかは下手な金属鎧よりも強い。しかし売っているかと言うと貴重品を加工するので店頭に存在しないのだ。
もっと大きな街へ行けば有るのかもしれないが。
防具に限れば魔法付与装備が安値で買える。この事実に気付いたのはアニーやルファとの焼き肉中の会話だった。
普通、そういうアイテムは高値で取引されるはずだ。
しかし、この世界では安い。。
そもそもエンチャンターという職業がメジャーらしく、ぽんぽん装備品に魔法を付与するものだから魔法付与製品の過剰供給状態だと言ってもいい。
例えばこのチェインメイル。「サイズ調整」「軽量」「ダメージ軽減5%」の三つが付いている装備だが。
「このチェインメイル下さい」
「はいよ。3000Gでどうだ?」
という有様である。武器は防具に比べると付与しにくいらしく値段設定も高めだが、先程ユマが買ったダガーですら「再生」の効果がついている。「再生」の効果は有る程度壊れた装備品でも時間が経つにつれ元に戻るし、砥がなくても切れ味が鋭いままというマジックアイテムなのだ。
勿論付与が沢山ついている装備品の方が高いが、10個も能力がついている皮の鎧よりも何も能力がついていないアイアンアーマーの方が高いという魔法装備のバーゲンセール状態だというのだから恐れ入る。流石異世界。
「買います。後、風の皮帽子、風の皮マント、風の皮鎧、風の皮籠手、風の皮ブーツを」
「はいよ。500、250、750、200、200で合わせて4900Gになるけどいいか?」
「勿論」
風装備シリーズは風魔法に対する耐性が付与されているだけでなく、早さに補正がかかる。全部「早さ+3%」がついていているので合わせて15%増える。それが他の魔法シリーズにはない良い所らしい。
火だったら極寒耐性、水だったら酷暑耐性と環境にたいする補正がつくらしく、優劣はないがこの街の近くには砂漠も火山も氷河もないので風が一番いい。
「遅いにゃ」
門番と話をしていたルファはこっちに気付くと駆け寄ってきた。
「悪い、着替えるのにちょっと時間が」
「まあ装備品を整えるのは仕方のない面もあるニャー」
ルファはそれ以上追及する気はなかったようで、さっさと狩りに行くにゃ! と提案してきた。
「ユマは弱そうだし、最初は兎とか狩るといいにゃ。跳躍のオーブが出たら欲しいにゃー」
「出たらね」
俺は持っているし、ユマは俺の技能・魔法をレベル1で引き継ぐようだ。だったら跳躍のオーブは必要ないし、ルファに譲ってもいいだろう。
売れば大金になるのだろうが。
うきうきしているルファとは対照的に、ユマはビビりまくりの涙目である。
まあ最初は誰だってビビるよね。
「あ、見つけたニャ」
ルファが兎の気配を察知した。草むらの中に兎が2匹。一匹はタイムの魔法を唱えて硬直させる。逃げられないようにしてからユマに止めの一撃をやらせた。
もう片方はルファが仕留めた。兎の耳を持ってぶんぶん振りまわしている。可哀そうだからやめてあげて!
「両方『はずれ』ニャー。残念だニャ。次に行くニャ!」
兎をそれぞれ仕舞うと次の獲物を見つける。
今度は俺が兎の群れを察知した。
タイムで動きを止め、二匹は確実にユマに狩らせる。
「レベルアップしました!」
ユマのレベルが2に上がった。ステータスメニューでユマを確認すると、確かに少しだけ強くなっている。
こうして昼食を挟んだ以外は日が暮れるまでひたすら狩りを続けた。全部で70匹。ユマのレベルが7にあがった。
最大レベルが10なので後3上げればいいのだが、この草原に出没する魔物はレアモンスターを除くと兎と蟻がメインだ。
このペースだと後2日位かかりそうだ。
「これもはずれ……。お、これは当たりだニャ!」
ルファが嬉しそうにユマの仕留めた獲物を検分している。どうやらオーブを持っている兎のようだ。心臓の辺りをぱくっと切り裂いてルファが手を突っ込んだ。
「……残念。素早さのオーブだニャ。惜しかったニャ」
そう言ってずいっとルファが俺に素早さのオーブを差しだした。俺のステータスを上げればユマも上がる。ルファが欲しいのは兎肉と跳躍のオーブだから譲ってもいいらしい。
「ありがとう。後で使うよ」
無限の袋の中に素早さのオーブを突っ込んだ。
「今日はこれくらいで終わりにしよう。ルファ、肉どれくらいもっていく?」
「んー。素直に三等分して25匹もらっていこうかにゃ?」
三等分だと25匹は少々多いのだが、まあいいか。
「そんなこと言わずに30匹持って行け。その方がフェイもアニーも喜ぶだろ」
「ん? にゃはは、そんなに言うなら貰っていかないと申し訳ないにゃ!」
ユマはレベル7。忠誠強化が15%に変化していた。
「ご主人様! 今日は兎肉ですか?」
「兎はそのうちだな。今日は猪肉を食べに行くぞ」
「はい!」
秀雄:L37 奴隷の主になった YESロリータNOタッチ
ユマ:L7 犬族犬種 亜人の中で最弱種と言われている。秀雄の奴隷になった。
ルファ:L13 Mジョブ:剣士 Sジョブ:エンチャンター 割と自由気ままアニー:L12 Sジョブ:スカウト
フェイ:L12 Sジョブ:料理人