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6/10

俺のターン!

 アニー、フェイ、ルファの三人のネコミミ娘と街へ戻ってから一週間が経った。

 その間、秀雄は技能や魔法のレベルを上げる為にひたすら練習していた。

 RPGのやりこみは2つある。

 どれだけ無駄を省けるか。それともどれだけ無駄を詰め込めるか。

 秀雄の趣味の一つはレベル上げだった。秀雄は無駄を詰め込むタイプである。

 クリア後のアイテム集め、レベル上げ、隠しボス、枚挙に暇がないがそういったものに時間を費やす人種だった。

 低レベルクリア、最速クリアを信条とするやりこみプレイヤーとはまったく逆パターンである。

 技能や魔法を使うだけでレベルが上がるなら、ひたすら使うしかない。

 ヒデオは黙々と技能を使いこんでいた。


 LV:29/100 職業:ニート


 経験値:3765P

 次のレベルまで:1192P


 HP:101/203→102

 MP:13/234→117

 SP:21/241→121

 筋力:84 → 42

 体力:100→ 50

 早さ:59 → 30

 賢さ:55 → 28

 幸運:30 → 15

 魔力:80 → 40


 補正:なし

 魔法:『髪の毛は友達』L2『明日の本気』 タイムL7 加速L7

 技能:台バン 床ドンL2 壁ドンL10 壁破壊 貧乏ゆすりL10 高速移動L2 自動LVUP(素数)察知L7 跳躍L5

 技巧:槍術


 強化ポイント 27


 矢印がついているのは『明日の本気』を使った影響だ。矢印の先が秀雄の現在の能力値である。

 能力が下がっている秀雄自身は魔物と戦わずにひたすらジャンプの練習をしているので危険はない。

 一日一回のペースで『髪の毛は友達』の魔法を使い続けていたらL2に上がった。

 レベルが上がったが、説明書きには艶が出ますと書かれていただけである。

 髪の毛もかなりの量になった。この世界に来る前は禿げていた事を思うと、肥満が解消したこともあって随分変わったなぁと秀雄は頷いた。


「ふう。かなりの距離を跳べるようになったな」


 秀雄は額にかかる髪を掻きあげて汗を拭うと街並みを見渡した。

 屋根の上にまで跳躍しているせいで、良い景色を拝むことが出来る。

 ときたまひなたぼっこする猫達に挨拶しながら静かに練習出来る跳躍と加速をメインに秀雄は練習していた。

 相変わらず練習できるスペースがないので台バン、床ドン、壁ドン、壁破壊は練習出来ていない。

 床ドンは帰る前にテヘラー遺跡内部で練習したので上がった。

 加速の魔法は四六時中使っているので殆どMPの余りはない。

 効率的にMPを使っているお陰で現在はレベル7だ。

 そのお陰で加速は速度+70%。加速中でも技能の練習は出来るので、行動倍率が+70%。したがって練習も更に出来る。

 跳躍は3メートル幅まで助走なしで跳ぶ事が出来るようになった。

 特に跳躍のお陰で地面から飛び跳ねて屋根に乗る事が出来るようになり、非常に機動性が増した。

 ダンジョン探索だけでなく、いろんな所でも役に立つだろう。


「ヒデオー! そろそろ約束の時間ニャー!」


 屋根の下でぶんぶんと手を振るネコミミ娘のルファが見える。

 アニーも一緒だ。

 今日は約束の猪肉の焼き肉である。

 猪肉は調理解体をルファ達に任せる為にルファの持つ魔法の鞄に猪を5匹渡した。

 解体調理は彼女たちに任せる事にしたので、三日前に渡してある。

 たん、と屋根を飛び降りる。

 窓を開けた住人と目があったので手を振って挨拶をしておいた。

 3メートルの高さから飛び降りても骨折しない。どころか、スタンと軽く着地した。

 跳躍の技能のお役立ち感が半端でなかった。

「にゃー。ヒデオのその技能うらやましいにゃ……」

 ルファは秀雄の飛び降りる様を見て羨ましそうに呟いた。アニーは何も言わないが、やっぱり羨ましそうに見ている。

 獣人の猫族である彼女達は人間に比べて高性能な身体能力を誇る。

 その彼女達でも、一度の跳躍で3メートルの高さをジャンプすることは出来ないのだ。

 勿論猫族の中には跳躍の技能なしで高さ六メートルを飛ぶ猛者もいるらしいのだが。

「だったらルファも跳躍のオーブを使えばいいだろ?」

 そういってルファの頭を撫でた。

「にゃー……。それが出来たら苦労しないニャ!」

 なんで撫でているのか。

 事の発端は遺跡の帰り道。

 なんだかんだ言って助けに来てくれたのと魚のお礼に頭撫でさせてあげるにゃ! とか言い出したので秀雄は遠慮せずに頭を撫でる事にした。

 ルファは基本的に頭を撫でられるのが好きだった。

 そして秀雄は頭を撫でるのが好きだった。特に猫耳である。むしろ頭を下げて撫でさせて下さいとお願いするレベルの話だった。

 いわゆるウィンウィンの関係である。

 チラチラとこちらの様子を窺うアニーに頭撫でていい? と尋ねると、ぷいっとそっぽを向かれた。

 アニーは良くわからない。ポーションのお礼に撫でさせてくれるのでは、と密かに秀雄は期待しているのだが、現実はそんなに甘くないようだ。

 しかし嫌われているようではないので、黒いしっぽがふりふりと揺れている。

 秀雄は気にしないことにした。

 ふにゃーと気の抜けたルファの声を聞きながら焼き肉の会場へ向かった。


 

「いた」

 アニーが指さす方向にフェイが待っている。傍には巨大な肉塊が垂直に屹立してる。ルファによると猪肉らしい。

 電気街な聖地を歩いている秀雄にとっては馴染みの光景だった。

 ドネルケバブ。

 一言でいうならこれだ。

 パンに包んで食べるのかどうかは不明だが、焼き方は同じだ。

 秀雄も電気街な聖地の帰りには良くお世話になっていた。


「ヒデオさーん! こっちですー!」


 手を振るフェイ。

 ここは街の東側の外れ。

 獣人、つまり猫耳娘達が住まう区域である。

 猫族(フェイ、アニー、ルファのような猫科の獣人の総称。虎や豹、獅子等も猫族に含まれる)や犬族(犬科の獣人の総称。犬、狼、狐等が含まれる)の他、兎や鼠など多種多様な獣人が居住している。

 亜人である獣人族は人間族より一段低く見られる傾向があり、それはこの国の制度にも差別的に色濃く表れている。

 このような居住区の区分けもその一つだ。

 その獣人族の居住区には広場が作られている。

 秀雄はフェイに肉を渡すときにここで待ち合わせしようと聞いていたのだが、ここまで騒がしいとは聞いてなかった。

 フェイが広場の隅でエプロン姿で手をぶんぶん振っていた。

 何か叫んでいるようだが、歌声で聞こえない。

 秀雄達がそこまで歩いている際にも沢山の獣人が陽気に酒を飲み、歌を歌い、楽器を奏で、踊りだす。そんな喧騒には明るさしかない。

「うはーっ! 《虎の泣き所》の酒はうめーっ!」

「ほれほれ、こっちでパンが焼けたぞー! 食え食え!」

 獣人達がごった返していた。狐耳のおっさんがパンを焼き、熊耳のおっさんが酒を飲み干して顔を真っ赤に染めている。

 熊耳のおっさんとか誰得だよ、秀雄は内心突っ込まざるを得なかった。

「今日はお祭りか何か?」

「違うニャ。いつもこんな感じニャー」

 ルファが何でもないといった感じで答えた。アニーもコクコクと首肯した。

 どうやら広場はオープンスペースのようだ。

 屋台が並び、そこからもくもくと煙が立ち上る。

 野菜の上にのったピザのような食べ物、フライドポテトのようなこんがり焼けた揚げ物。魚のすり身で作ったらしい肉団子。

 食欲を誘う匂いに腹が減る。秀雄は涎を堪えるのに必死である。むしろお腹の音がならないように祈るレベルで耐えていた。

 店屋の反対側には自分で焼き肉をするスペースがある。

 皿に香辛料のボトル。それからインド料理でよく見るナンのような物体がテーブルの上に鎮座していた。

「ルファがどうしてもって聞かなくて」

 フェイが困ったような笑顔で垂直に連ねた肉の塊を見た。ちなみに猫族は肉が主食である。

 一日に大量に肉を消費する。猫系は肉食だから分からなくもない。肉の持ち込みはいつでも大歓迎されるようだ。

 ちなみに兎の肉もキラキラした、いやギラギラした三人の目に晒されて秀雄は20匹の兎を提供していた。文字どおりの肉食系女子だった。

 フェイのごくり、と唾を飲み込む音が一週間たっても秀雄には手に取るように思い出せた。

「ヒデオ、フェイのドルナ(ドネルケバブの事)は一度食べた方がいいニャ! 内臓は鉄板で焼くにゃ! アニーいつもの」

「わかってる」

 アニーは四人がけの席に鉄板を乗せると、下にくべられている炭に魔法で着火した。

 それから風魔法で微風を送って火の勢いを調整する。

 ジューッと焼ける肉の音。肝臓や胃、腎臓、心臓、舌等が焼かれている。

 フェイはせっせと肉を切り分けて、ナンモドキと野菜で肉を包んで皿の上にのせてくれた。

 旨い。

 電気街で食べたドネルケバブのように調味料たっぷりというわけではない。

 しかしナンモドキはもちもちとしたパンみたいな食感で違和感がないし、レタスのような野菜もシャキシャキとしていて、肉の旨みとフェイが作ったソースとよくマッチしている。そして自分で獲った肉を食べるというのがいい。

 秀雄は肉を食べる度に涙ぐんだ。

「……猪ってこんなに旨かったんだな」

「ヒデオ、幾ら旨いからって泣いちゃダメにゃ!」

 ルファが秀雄の肩をぽんぽんと叩いた。

 秀雄の感動の主因は猫耳娘と食卓を囲んで焼き肉と言うシチュエーションそのものだったのだが、それは秀雄は胸に秘める事にした。

 実際にフェイの焼いた肉は程良い焼き加減で、味の付け方も上手だ。

 間違っても不味いわけではない。

 流石料理レベル4。店が出せるレベルなのだそうだ。

 聞くところによると技能はレベルが上がり易いものと、上がり難いものがある。

 料理は相当に修練しないと伸びない技能のようだ。

 秀雄は肉を切り落としているフェイを見て、

「……一家に一人フェイが欲しいな」

「ななななな何を言ってるんですか!」

 フェイはナイフを落としてガランガラン!と音を立てた。

「大丈夫かっ!」

 足の指でも切ったりしていないか心配した秀雄はフェイの様子を見たが、痛がっている様子はないようだ。

 フェイは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「むぅ」

 アニーは少し不満そうに唸った。

「ルファは? ルファは?」

 目をキラキラさせて自分を指さすルファ。

「ルファも欲しいな」

「秀雄は分かってるにゃ!」

 アニーがますますぶすっとした顔をしたので、秀雄は慌ててフォローを入れた。

「それからアニーもね、勿論」

「む」

 アニーの後ろにぱああっ!という効果音が秀雄には見えた気がした。

 表情があまり変化しないのでわかりにくいが、どうやら機嫌は直ったようだ。

 フェイはチッと舌打ちをしたかと思うと、

「そろそろ内臓たべましょう!」

 フェイが内臓を刺した串を鉄板の上から拾うと秀雄の前に並べた。

 それを見たルファが呟く。

「フェイ? なんか秀雄のだけ肉が多い気がするニャ?」

「気のせいです」

「なんか串の数が多い気がするニャ」

「目の錯覚です」

「フェイ」

「うるさいとお肉取り上げますよ?」

「……ごめんなさいだにゃ。それだけは勘弁して欲しいにゃ……」

 ルファは絶望したような顔をして首をぶんぶん! と勢いよく振った。

 どうやら肉抜きのセリフは彼女たちにとって絶大な威力を誇るマジックワードのようだった。

 ルファは立ち直ると秀雄に食べるように促した。

「十分血抜きをしてあるから大丈夫ニャ! ヒデオも心臓食べるニャ!」

「胃だよね?」

 アニーはいつの間にか秀雄のすぐ脇に腰掛けていた。

 近い。近いよアニー。そう思う秀雄だったが、アニーはぐいぐい攻めてきた。

「う、あ、じ、じゃあ……胃で」

 アニーは胃の串を掴むとずいっと秀雄の前に突き出した。

 いわゆる伝説の《あーん》である。

「食べて」

 流石にあーんとは言わないか。秀雄はちょっとがっかりしたが、据え膳食わぬは男の恥。良く噛んで味わう。

「どう?」

「うまい」

 フェイが掌を頬にあててぶんぶん頭を振っているのは見なかったことにした秀雄は、今度はルファの番にゃ! というルファの押しに負けて心臓を食べる。

「こっちもうまい」

 そんな感じで秀雄は終始三人娘に世話をされながら焼き肉を終えたのであった。



 食事後。

 三人娘から一週間後も焼き肉食べようという話があって次も猪をお願いと頼まれた。

 秀雄にとっては是非もない。まだ無限の袋の中には猪も兎も十分ストックがある。ルファの焼き魚も食べたいにゃー。との一言と秀雄へのチラ見がなければ袋の中から出せば良かっただけなのだが、秀雄はまた食糧収集にピラニア狩りに出向くことにした。

 フェイにはお礼に遺跡で狩った蜘蛛を10匹プレゼントした。

 フェイは本当に嬉しそうにありがとうございます! を何度も繰り返した後、喜んでルファの魔法の鞄に詰め込んだ。

 アニーとルファの苦虫を噛み潰したような表情が秀雄にはやや内心気が咎めるものがあったが、気にしてない振りをした。

 食事中の歓談で聞いたところ、三人とも猫族であるのは間違いないのだが種は違うようだ。

 アニーは豹種、フェイは獅子種、ルファは虎種らしい。

 三人とも変異種らしく、アニーは黒変体、フェイは白変体、ルファは奇眼体とのことだ。

 それがどういう意味なのかは秀雄は聞かなかったが、教えてもらうまで気にしない事にして、今日の訓練に戻った。

 三人にからパーティー加入のお誘いがなくて寂しかったのは秀雄だけの秘密である。






 ●遺跡再訪





 5日後。秀雄は再びテヘラー遺跡に来ていた。街周辺では既に狩り尽くした感があるし、レベルアップが鈍い。

 遺跡だと経験値が美味しいし、ルファから魚を頼まれたのを秀雄は忘れていたわけでなかった。それから出来れば壁ドンや床ドンのレベルアップを図れれば目標達成である。


 LV:31/100 職業:ニート


 経験値:655P

 次のレベルまで:5290P


 HP:123/223

 MP:190/245

 SP:230/252

 筋力:84 

 体力:110

 早さ:66 

 賢さ:62 

 幸運:36 

 魔力:90 


 補正:なし

 魔法:『髪の毛は友達』L2『明日の本気』 タイムL7 加速L9

 技能:台バン 床ドンL2 壁ドンL10 壁破壊 貧乏ゆすりL10 高速移動L5 自動LVUP(素数)察知L7 跳躍L7

 技巧:槍術


 強化ポイント 30



 加速が+90%、跳躍が4メートルジャンプに強化されている。今日は床ドンと壁ドンと壁破壊を主に練習するつもりだった。

 高速移動のお陰で遺跡までの移動も消耗はともかく早く辿り着けるようになった。

 しばらくはここを根城にしようと秀雄が決めた矢先、風狼が飛びかかってくる。

「ばればれなんだよ」

 タイムの魔法で硬直させて、スピアで一気に内臓を貫く。

 仕留めた死体はオーブがないか探した後で無限の袋に放り込む。

 後でギルドマスターのザードが美味しく食べてくれるから処理の問題はない。

 風狼だが、ボス格モンスターは招魔の呪陣というところから召喚されるらしい。

 どこから招かれているのかは不明だが、今の秀雄にとっては丁度いい。この辺は他の冒険者からも身入りが少ないからと敬遠されている地域だ。

 殆ど探索されているが、招魔の呪陣だけが見つかってないそうだからそこを探して見るのもいいだろう。

 

 そして手当たり次第に魔物を狩り始める。特にピラニアもどきはルファからお願いされているだけあって秀雄の気合も十分だ。

 途中で仕留めた蛇を池の近くに放置するとピラニアが群がってくる。

 飛び跳ねて襲いかかるピラニア達をスピアで仕留める。

 一時間も繰り返すと115匹をカウントした辺りで、魚の気配が途絶えた。

 違う水場を見つけて同じことを繰り返す。

 レベルも上がり、37になった。自動レベルアップのお陰ですいすい上がっている。


 LV:37/100 職業:ニート


 経験値:189P

 次のレベルまで:6790P


 HP:323/279

 MP:90/277

 SP:130/290

 筋力:108 

 体力:140

 早さ:78 

 賢さ:78 

 幸運:45 

 魔力:103 


 補正:なし

 魔法:『髪の毛は友達』L2『明日の本気』 タイムL7 加速L10 

 技能:台バン 床ドンL3 壁ドンL12 壁破壊 貧乏ゆすりL11 高速移動L5 自動LVUP(素数)察知L8 跳躍L7

 技巧:槍術


 強化ポイント 36


 

 遺跡を周回しながら蜘蛛や蛇を狩り徐々に歩を進める。

 移動する際に壁ドンをしていると、何回目かで音が変化するところがあった。

 壁を破壊するつもりで握り拳を作って叩きつけると、バラバラと壁が崩壊し見たこともない通路が現れた。

「……隠し通路、か?」

 秀雄は暗い内部を覗きながら呟いた。通路の先は見通せない。

 明かりをつける魔法はないが、松明と着火の魔導具は購入しておいた方がいいというアドバイスをフェイから貰っていたので、秀雄は無限の袋の中に放り込んである。

「潜ってみるか」

 松明を灯し、闇の中を突き進む。向かい風を頬に感じた。空気は通じているようだった。

 床と壁はいままでの白色とは全く別の赤色だ。

「ホラーじゃあるまいし……」

 秀雄は内心ビクビクしながら先へと進んだ。

 辿り着いたのは開けた空間だ。

 先程のような赤い色は失われ、黒い床と黒い壁。部屋の中央には黒い台座が一つ。その台座には黄金のオーブが一つ鎮座していた。

 ふらふらと秀雄はその台座に吸い寄せられてオーブをおもむろに掴んだ。

 ドラゴンオーブを手に入れた。

 

 ドラゴンオーブ 


 失われたドラゴンの力を秘めたオーブ



『ハーッハッハッハッ! 良くここまで辿り着いた! 意外と早かった褒めておくべきか?』

「誰だ?」

『誰だとは失礼な。この世界に連れてきた恩人に向かって誰だはないだろう』

 秀雄は二カ月程前の事を思い出していた。

「あんたか。今更俺に何の用だ?」

『ハハハ、用も何も私はこの世界に対しては些細な干渉しか出来ない。お前という駒が盤面で動くのを楽しんでいる観客さ』

 その物言いに秀雄は少しカチンとくるものがあったが、情報を得る為に深呼吸をした。

『なに、本当に楽しんでいてるだけさ。お前は私の期待以上に面白い。欲望に素直なお前が折角異世界に来たのに一心不乱に鍛錬。予定では君はこの世界に来てすぐに美女を金の力で侍らせる役を演じて貰う予定だったのだが……。私の予想は裏切られてばかりだ。楽しませてくれた礼に褒美を取らせよう』


 魔法『大きくなーれ』を手に入れた!


『フフフフフ! お気に召したかな? ではさらばだ!』

 

「変な捨て台詞残して行きやがって……。確かに俺は欲望に素直だけど。奴隷侍らせてエッチな事をしたいとは思っているけど! こう言われてそういうことしたらなんか悔しい!!」

 秀雄は地団太を踏んで正体不明な声の持ち主を罵った。

 しばらくすると落ち着いたのか、『大きくなーれ』の魔法をチェックした。周囲にも豪奢な宝箱が3つ置かれていた。


 大きくなーれ 消費MP30

 巨大化させます。

 動植物に使った場合、全体や一部分を選んで巨大化させます。(不可逆)

 ※非生命体に効果なし


「なん……だと……」

 秀雄は説明文を読んだだけで悟った。

 地球だったらこれで一財産作れるレベルだ。

 身長だけではなく、他の『小さくて』コンプレックスを抱えている人が一定の割合で存在する。

 それを解消してしまおうというのだから驚きの魔法である。

 秀雄も例外ではなく、そのうちの一人だ。特に身長にコンプレックスを抱えている。

「これで俺も高身長に……」

 使用方法は掌を充てて魔法を使うこと。

 巨大化し過ぎて三メートルや4メートルの身長になっては仕方ない。実験する必要がある。初めは植物、次に動物か魔物で実験してみることにした。


 宝箱も開ける。鍵は掛かっていなかった。

 宝箱1を開けた。

 マジックオーブ×1

 スキルオーブ×2

 

 宝箱2を開けた。

 トルネードスピア×1

 耐性のオーブ×1

 

 宝箱3を開けた。

 ポーション×30

 10000G


 マジックオーブとスキルオーブは前回と一緒だ。マジックオーブは前回使用していなかった分を含めて三個のストックが増えたことになる。

 いざとなったらマジックオーブを換金しようと考えていた秀雄は拍子抜けした。

 マジックオーブを使用した。

 レア魔法『ポイント』を覚えた! 最大MPが5上がった!

 

 マジックオーブを使用した。

 レア魔法『ワープ』を覚えた!  最大MPが5上がった!


 マジックオーブを使った!

 超レア魔法『ドロー』を覚えた! 最大MPが5上がった! 


 

 レア魔法ポイント 消費MP1

 魔法の着弾場所を指定することが出来ます。また、場所の情報を記憶します。


 レア魔法ワープ 消費MP(距離に応じる)

 5メートル以内で好きな距離をワープ出来ます。ポイントの魔法をで場所の情報を記憶していた場合、そのポイントにワープすることが可能です。


 超レア魔法ドロー 消費MP1

 対象の相手が使用できる魔法をランダムに1回分引き抜きカード化します。カード化した魔法は任意タイミングで使うことが出来ます。

 (一時間に1回のみ使用可能)


 

 ……問題ないのかこれ。と秀雄は遠い目をした。

 ポイント、ワープの魔法はまだいい。

 ドローの魔法はいいのか? いいんだな? 本気出すぞ? 秀雄の眼には焔が灯っていた。 

ドロー!



※アニー 黒豹 

※フェイ 白獅子 胃袋を掴んでいるので三人の中では一番立場が上 

※ルファ 虎 

※次回犬耳ちゃん登場予定(予定は未定)


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