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遺跡探索中

 猫耳娘?に絶叫されると、秀雄は正気に戻った。

「いや、驚かせてごめん。悪気はなかったんだ」

 嘘八百である。

 秀雄は少し距離をとった。

「……ん? あれ?」

 どうやら女の子?は正気に戻ったようだ。

 近くに捨てたポーションの空瓶と、肩の傷跡を見て困り顔をしている。

 状況を理解するにはもう少し時間がかかるとみていいだろう。

「さて。何から聞くべきか」

 秀雄は猫耳のことはひとまず気にせずに思考を巡らせた。

 いや、ネコミミも大事である。

 それは分かっている。

 しかし、魔物に襲われる危険を排除した後だ。もふもふは後でもできる。

 傷をつけたのは何者か。

 そいつは手傷を負っているのか。

 死んでいるのか。

 ひとまず最優先で確認しなければいけないのはこれである。

 猫耳をぺちゃ、と垂らした女の子?は唇を噛んで項垂れていた。

「大事なことだから聞いてくれ。君を襲った相手は誰だ? 魔物? それとも人間なのか? もし、君に怪我をさせた相手も怪我を負っているなら余計に凶暴になっている可能性がある」

 重傷を負っているなら怪我を癒す為に引く可能性もある。

 しかし、こっちが手負いで向こうの損害が軽微だった場合は危険の度合いが違う。

「多分だけど、フェイの一撃で矢傷を負ったかもしれない」

 猫耳の女の子?の口から出た声はアニメボイスだった。非常に美しい声だった。余談だが秀雄は声優のライブに行く程度には声優に対して造詣が深い。つまり声オタの一人である。その秀雄は直感した。地球のアニメで例えるならツンデレキャラの声を担当することで有名なあの人の声だと思ってくれたら間違いないだろう。

 そんなことを考えながら察知の技能がどんどん警鐘を鳴らす。

 近い。

 音を消して忍び寄ってくるのがわかる。

 鬼が出るか蛇が出るか。

 それとも狼か。

 秀雄はスピアを構え、入口を警戒した。

 いつでもタイムの魔法を唱え、貧乏ゆすりの準備をし、

「アニー! 悲鳴が聞こえたけどどうしたの!? ……あ、あれ?」

 足をもつらせる勢いで駆け込んできたのは同じ獣耳の女の子だった。

 2つの山がこんもりと服を押し上げているので女の子で間違いないはずだ。

「フェイ! ああ、良かった……」

 猫耳の女の子?は安堵して息を深く吐き出した。

「……あれ? アニー、この人は?」


 それから秀雄は猫耳娘を交えて軽い自己紹介も兼ねて会話をした。

 まず最初に出会った猫耳娘(どうやら女の子でいいらしい)のアニー。

 職業は魔法使い。

 黒髪黒耳。肌は白い。目は釣り目で瞳も黒い。

 黒いローブ姿のせいで、女の子かどうかの確認が遅れてしまった。

 胸の辺りは発展途上だ。今後に期待したい。

 レベル9で得意魔法は火。風。


 もう一人の猫耳娘のフェイ。

 職業は弓使いだ。

 白髪白耳。肌も白い。細目。瞳の色は蒼いようだ。

 腰にはショートソードを佩き、右手にはボウガンを持っていた。皮の鎧を纏っているお陰でダイレクトに女の子だとわかるのは高得点だ。いいよねジャストフィット。

 秀雄は一人満足げに頷いた。

 レベルは10。

 どうやら二人はもう一人の猫耳娘の戦士ルファ(割と重要な情報である)とこの遺跡に来ていたらしい。そこで風狼に襲撃されて、命からがら逃げ出したというわけだ。フェイとアニーはこの建物に逃げ込んだはいいが、ルファとははぐれてしまい、その上アニーは風狼に噛まれているせいか体力が尽きて倒れこんだ。仕方なくフェイはアニーをおいてこの周辺を探って危険がないか確認してきたというわけだ。

「助かったよ。こっちのポーションは手持ちが尽きていたんだ。このまま街へ帰ることも考えていたけど、アニーが危なかったかもしれない。貴重なポーションを……すまないね。借りは街に戻れたら返すよ」

 細い眼をさらに細くして白い方の猫耳娘、フェイが肩を竦めた。

 この世界ではポーションは高価だ。なんと1つ1000G。日本円に変換すると10万円の感覚である。ショートソードが200Gであることを考えても冒険者の駆け出しにはちょっと手が出ない値段設定だ。

 そもそもポーションと一口にいっても小さい切り傷なら塞がる程の代物だ。それが10万円なのだからむしろ良心的な値段設定といえる。

「いや、こっちが勝手に使ったんだし。気にしないで」

 慌てる秀雄。

「それより君たちはここから脱出した方がいいんじゃないのか? 風狼に狙われているんだろう?」

「ああ。しかし、仲間を見捨てるなんて……私には無理だ」

 表情を曇らせるフェイ。

 ああ。この声もいいなぁ。

 なんて秀雄が考えていると、さらに探知に反応がある。

「じゃあ俺はもう行くよ。そっちの黒い方も大丈夫みたいだし。君らは?」

「私、アニー。黒い方とか、心外」

「遠慮する。私たちは此処で疲労を回復させるつもり」

 小さく抗議する黒い方を見ながら二人の返事を聞いた秀雄はスピアを担いで建物から出た。

 この近くにある程度の大きさの生物は存在しない。それは察知の技能で確認済みだ。黒い方の猫耳娘はまだ動けないようだし、秀雄は一人で動くことを決めた。

 別に秀雄は女の子の窮地を救うヒーローになりたいわけではない。元からソロで遺跡を攻略するつもりだったし、協力を求められないなら長居をする気はなかった。


 遺跡の内部を探索する。

 目的が2つ増えた。

 風狼の排除。

 最後の猫耳娘ルファの捜索と救助。

 死んだら死んだで構わないが、できれば生きたまま助けたいと秀雄は思った。

 理由はたった一つだ。

 何故なら猫耳だからだ。

 歩きまわるついでに魔物を狩ってレベルアップを狙えばいい。

 ミイラ取りがミイラになっては元も子もないので、無理だと思ったら速やかに撤退する事を決めた。

 察知の技能を使って気配を探る。

 ルファが死んでいたなら気配を探ることはできない。死んでいないことを祈りながら秀雄は深部へと歩を進める。影に潜む蛇をスピアの一突きでなんなく仕留め、壁を走る巨大な蜘蛛を壁ドンで壁から叩き落とす。腹に渾身の一撃を食らわせて命を絶つ。

 死体からオーブを探す暇がないので無限の袋に放り込んだ。

 壁ドンをすると威嚇効果があるのか、周囲に魔物が寄ってこない。適当に壁を叩きながら螺旋状の階段を昇り、開けた空間に出た。

 廃墟の中で一際緑が濃い。

 鬱蒼と茂る木々と行く手を阻む茨が視界に入る。廃墟の中にできた林。元々は庭園か公園だったのだろうか。花壇のなれの果てと思しき痕跡が幾つかある。

 だが、油断はできない。察知の技能で、

 

 「ウオオオオンッ!」


 真上に一体の動きを感じ取っていた。

 頭上から襲いかかる獣。

 だが秀雄は事前に察知の技能で予測していたので奇襲にはなり得ない。

 狼をタイムの魔法で硬直させた。

 落下する狼を右に避ける。

 タイムを継続し、4秒間停止させる。MP消費は40。許容範囲だ。

 秀雄にとって4秒間は体を槍で貫くには十分な猶予だった。

 大きくても狼は狼。狼の命は既に何度も奪っている。慣れた様子で急所を突き刺した。

 呆気なく終わってしまったが、ザード情報によるとここのボス格モンスターの風狼だろう。魔法を使わせる前に終わってしまったので強さの確かめようがない。別にわざわざメリットなく危険を冒すほど秀雄はもの好きではなかった。

「なるほど。こいつが風狼か。確かに強そうだな、まともに戦ったら」

 秀雄は感心しながら目の前の狼を見つめた。

 いつも狩っている狼よりも更に一回り大きい。息絶えたのを確認して何度か頭と腹部をスピアでぐさぐさと突き刺す。別に死体を損壊して遊んでいるわけではない。オーブがないのか探しているのだ。


「……これか?」


 心臓の近辺を突き刺すとコツンと変わった反応があった。この周辺には魔物どころか生物の気配はない。ショートソードで腹を切り裂いて手を突っ込む。引き抜いた血まみれの球をじっと見つめると説明が表示される。


 加速のオーブ

 風魔法 加速を覚えます。


 加速のオーブを使った。

 加速を覚えた! 最大MPが1上がった!


 どうやら加速の魔法を覚えたらしい。この調子でどんどん魔法を覚えていきたい。ザード情報によると狼のうち100体中に1個見つけられればいいほうなのだそうで、いきなり一発で加速のオーブを得られたのは幸運だった。


 加速

 1秒ごとにMPを1消費。スピードが10%上がる。


 10%だとあまり恩恵がないように感じるが、使いこんでレベルを上げればまた様子が変わるだろう。


 庭園を動き回っても特に変わったところはないようだ。ぐるりと一周して引き返す。

 察知を頼りに魔物を狩り続ける。

 蜘蛛と蛇が中心だ。時折水辺に寄るとパシャっと跳ねる巨大な魚が襲いかかってくる。ガチガチとかみ合わせる牙は鋭い。熱帯魚のような美麗な外観だが、牙で台無しである。ピラニアもどきといえばわかりやすいかもしれない。しかしザード情報でそういう魚が居ることは事前に知っていたので察知の技能で警戒しながら一匹ずつ処理すれば危険はなかった。後で焼いて食べることにして無限の袋に放り込む。

 こうして遭遇した魔物を狩り続けた結果レベルが19から23になった。20、21、22は素数ではないのでいきなりのレベル4アップである。20になったときに魔法を一つ覚えた。『明日の本気』というやつである。

「あれか。何々になったら本気だす、っていう掲示板でよく見るあれか」

 秀雄もネタで結構使っていたフレーズである。


 ニート魔法 明日の本気

 MPをすべて消費。

 24時間後、24時間全能力+100% 強化終了後48時間使用不能。更に24時間全能力-50%

 

「ニート魔法ってなんだよ……」

 効果は複雑だ。

 MPを全部使って明日の本気を唱える。その丁度1日後、1日間全能力二倍。強化が終わったら2日使えず、しかも1日は全能力半減。

 正直使いどころが難しいな……と秀雄は感じた。

 ステータスは現在こうなっている。


LV:23/100 職業:ニート

 経験値:89P

 次のレベルまで:2185P

 HP:90/154

 MP:67/199

 SP:28/178

 筋力:66

 体力:83

 早さ:45

 賢さ:46 

 幸運:24

 魔力:68


 補正:なし

 魔法:『髪の毛は友達』『明日の本気』 タイムL5 加速

 技能:台バン 床ドン 壁ドンL10 壁破壊 貧乏ゆすりL9 高速移動 自動LVUP(素数)察知L5 跳躍L2 

 技巧:槍術


 強化ポイント 22


 他に特筆すべき強化された点は壁ドンだろう。手当たり次第に壁ドンしていたら新技能を獲得した。その名も壁破壊。試しに使ってみたところ、秀雄の拳が壁を貫き、壁がぼろぼろと崩れ落ちた。あんまり使いすぎると建物が崩壊するのは間違いないので、使う場所をよく考えないといけないだろう。


 壁破壊

 薄い壁を破壊します。 消費SP10


 それから障害物を飛び越える為にジャンプしていたら跳躍の技能のレベルもいつの間にか上がっていた。ジャンプ幅が1メートル半に成長していた。

 更に技巧の欄が増えていた。


 槍術

 槍の操作技能向上 


 獲得条件はわからないが、攻撃武器での攻撃回数か武器攻撃で撃破した魔物の数が条件とかそんな感じだろうと秀雄は推測した。 

 

「しかし、どこを探しても最後の猫耳が見つからないな、と」


 遭遇した蜘蛛を槍で貫く。

 突然増えた槍術の影響か手ブレの消えた秀雄の突きは鋭く的確になっていた。蜘蛛をさっさと無限の袋に収納した。この分だと魔物に食われたか、猫耳娘たちと合流したのだろう。そう秀雄は判断して彼女たちの休憩地点に戻ることにした。


 そう結論を出して秀雄が振り向くと、壁から隠れてそーっと様子を窺っている灰色の猫耳と顔を見つけた。ぴくぴくと猫耳が反応している。秀雄からは丁度50メートルは離れているだろう。一瞬で猫耳がサッと引っ込んだ。


「……俺の眼は猫耳を逃しはしないッ!」


 高速移動で壁まで移動する。

 すると柱の陰からこっちを見て震えている猫耳が一匹。秀雄を見て、

「なんでばれたニャー……」

 しょんぼりしていた。

猫耳娘ばかり三人も出してしまいました。

※アニー 黒 魔法使い 無口 ツルペタ

※フェイ 白 弓使い おっぱい!

※ルファ 灰 剣士 ニャー

こんなキャラ付けだと思ってくれれば間違いないと思います。


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