想いの嵐 2
「俺、本当は大学に行きたかったんだ。親父が入院しているから金が要る。お金を貯めて学校に行きたいし、母親をもっと楽にしてやりたいよ…。
そう言ったら美香ちゃん全部信じちゃった(笑)まったく疑ってもない。瞬殺だよ(笑)俺に身も金も捧げる気まんまん。もう半分やちゃったようなもんだし」
「そういう事するのやめろよ」祐介が呟いた。
「は?」
「だからそういう事するのやめろって言ってんだろ!」
「お前何で怒ってんの?まあちょっと売り飛ばすには勿体無い気もするけどさ(笑)あんな可愛い子が三つ指ついてー」
その瞬間、祐介が純に手をあげた。
店内がどよめき立つ。
その夜、二人は祐介の父親の息のかかったクラブで飲んでいた。
テーブルのグラスは落ちて割れ、ボトルが倒れブランデーがフロアーのカーペットに流れ出す。
数分後、居心地の悪くなった二人は店を出て繁華街をとぼとぼ歩く。
「お前さあ、美香ちゃんの事が好きなんだろ?なあ?
そんなら自分で何とかしろよ。何でいつもじっと見てるだけなんだよ?お前がずっとそうやって見てるだけなら遠慮しないで俺、彼女をものにするよ?」
祐介は黙っていた。
言い返す言葉もなかったから。
「俺、着替え取りに行くから。もう客を迎えに行く時間だし。ていうかさお前、俺殴る前にやることあんじゃねーの?好きならものにしろよ。お前しだいなんだよ。」
祐介はあてもなくネオン街をほっつき歩いた。
美香ちゃん全部信じちゃった(笑)まったく疑ってもない。瞬殺だよ(笑)俺に身も金も捧げる気まんまん。もう半分やちゃったようなもんだし…。
美香は純のものになりかけいてる…。
彼女の可憐な瞳が、優しい眼差しが、透き通った肌、髪、ホストクラブで見せた不安な顔、色々な場面が鮮明によみがえって来る。
気が付くとプルメリアの前まで来ていた。
しかし今夜は平日なので美香がいるはずもない…。
祐介はやり切れない気持ちで再び歩き出した。
その夜はもちろんその次の日も、そのまた次の日も美香のことが頭から離れない。
自分で思っている以上に彼女のことが好きで好きで仕方がなかった。
こんなにも諦めのつかない気持ちは初めてで苦しかった。