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ブランチ

翌日、祐介は美香を青山のカフェへ連れて行った。





オープンテラスでブランチにサンドイッチとアイスコーヒーを頼み仲良く食べる。





彼女ができたらしてみたかったデートの一つだった。





「ここ、ホンマに素敵な所。サンドイッチも美味しい。」




美香が見せる幸せそうな笑顔に祐介もたまらない程の幸福感を感じていた。





美香ちゃんとは色んな所に行きたい。




これまでデートする楽しさをまともに経験できなかった祐介は今ようやくその楽しさを満喫し始めたところなのだ。





どこか景色のいい高原でピクニックがしたいし、キャンプにも行きたい。

何でもない日に郊外の原っぱで弁当を食べるだけでもいいし。




それからいつか二人でハワイに行けないだろうか?




そんな大きな思いすら浮かんでくる。





ブランチの後はぶらぶらと一緒に街を歩いた。





ただ濃いめのベージュのカシュクールワンピースを着ているだけなのに どうして彼女はこんなにキレイで存在感があるのだろう?祐介は美香を連れて歩く自分が誇らしかった。





そんなことを考えながら歩いていると二人の男女が話しかけてきた。





「こういう者ですけど写真撮らせてくれないかな?恋人同士だよね?二人ともものすごくお似合いだから。服のセンスも抜群!」





それはとある女性ファッション雑誌を発行する出版社の名刺だった。





祐介も美香も戸惑う。





「う、うちはちょっと…」





「だめ?謝礼も出るし、記念になるよ!後で出来上がった雑誌と写真も送ってあげるから」





雑誌は全国で販売されているから色んな人に見られる。お店にも迷惑がかかるかも知れないし、目立つことは嫌い…。




「撮らせてくれないかな?こんな美人さん、めったに見かけないからさあ…。会社にバレたらまずいの?二人で撮られるのがまずいの?え?それなら一人ずつでもいいから撮らせてよ。」




しつこい男に美香は根負けした。




それでも祐介と一緒に堂々と写るわけにはいかず別々にスナップ写真を撮った。





二人で写れない理由を知った記者は美香のお店に今度足を運んでくれる約束と雑誌には載せないと言って二人の写真を撮ってくれた。





「なんか うちものすごい恥ずかしかったわ」





「本当にいきなりでびっくりだよね、あのおじさんとカメラマンの女の人」





「来月くるのちょっと恐いなあ…」





「でも僕、雑誌買い込んで美香ちゃんの写真切り抜いて部屋に飾っちゃうよ(笑)」





「いややわー(笑)」





ひと時の笑いの後には頭の片隅に優のことが浮かんだ。






うちが帰って来なくても優はきちんと起きて朝からひと勉強をしていつものように学校へ行くだろう。




ただ、ご飯はどうしているのだろう?受験生だから栄養のある物を食べてもらわなくてはいけない。



「祐介さん、うち弟の事もあるから今日のうちに大阪に帰らんと。そろそろ…」





「そっか…じゃあ僕、ホテルまで送って行くよ。」





柔らかい午後の日差しの中、二人はコインパーキングまで歩いた。





祐介の運転する車でホテルに戻った時にはもう夕暮れ時がせまっていて





荷物をまとめる美香の髪が金色に輝いて見える。





身仕度みじたくを終えた美香がふと祐介の顔を見た。




その顔は何か言いたげで祐介の方から口を開く。




「どうした?」





「祐介さん、ホンマにありがとう」





祐介が微笑む。




東京駅のロータリーまで車で美香を送って二人はそこで別れた。





「またどこか美香ちゃんの行きたい所に行こう。」





「うん。ありがとう…」





新幹線の中、美香は考えていた。




あの時、本当は部屋を出る前にギュッと抱きしめて欲しかった。





でもそう言えなかった…。




どうしていつも寂しい気持ちが付きまとうのだろう?




どこにいても何をしていても、誰といても うちはこの先もずっと毎日が寂しいのだろうか?




心が弱いから寂しさに翻弄させられるの?




日が落ちて青色一面の景色が本当に寂しい。




ものすごいスピードで駆け抜ける新幹線の車窓はガタガタと音を立てていて





それが何だか美香を不安にさせるのだった。




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