江の島へ
数日後、美香は水着を選びに恵とデパートにいた。
「どれにしよう~?うんと派手なん着てみようかな?美香ちゃんもビキニにせなあかんで!あっおそろいも可愛いんちゃう?」恵は最初から最後まで興奮しっぱなしで話が途切れない。
色んな水着を一通り見て回り、違うデパートでも品定めをし 恵はカラフルでトロピカルな柄のビキニに落ち着き美香は乳色がかった藤色のビキニを手に取った。
他にも恵は東京で3泊する為の洋服に加え新しいバッグも買った。二人は美香がプルメリアの出勤時に使っているホテルで3泊する予定だ。江ノ島へ行った後は東京見物を楽しむ。
当日は朝早くに新幹線で東京へ出向きホテルで荷物の一部を降ろした。服の下に水着を着て冷たいハーブティをのんびりと飲み終わった頃に約束の時間なのでロービーに降りてゆく。
ロビーで祐介を見つけて8人の男女が合流した。車2台で向かう。
ミントグリーンのしなやかな薄い天竺素材のミニワンピースを着た美香を見て祐介以外の男達もその視線をコントロール出来なかった。彼女に目がいってしまい仕方がない。普通の女の子と何が違うのだろう?肌の白さだろうか?その可憐な瞳、整った鼻筋に人形みたいな口元…?
恵の方もスリップ型のコーラルオレンジのミニワンピースにゴールドのアクセサリー、ロングヘアーと当時の流行をしっかりとおさえたセクシーないでたちだった。
他の女の子2人も可愛い洋服で決めている。既にカップル2組が成立しているので祐介と彼女のいない一人の友達=隆之、美香と恵が同じ車だ。
軽く皆で自己紹介を終えた後に美香と恵は後ろのシートに乗り込み 先に走り出す友達の車を待って祐介も出発した。
車内では恵と隆之が意気投合し楽しい話で盛り上がっている。美香は海水浴に行くのが小学生の夏休み以来なので少しばかり緊張していた。
それから昨日の夜、なんとなくの心配からか電話をくれた祐介の優しさを思い出していた。
「美香ちゃん?明日大丈夫?大丈夫かな~と思って……」
「うん、大丈夫。ホンマはまだちょっと緊張してんねんけど。水着恥ずかしいし……うちこの年齢に及んで溺れるかも分からんで?足つるとか(笑)」
「(笑)溺れかけたら絶対助けるし。息してるのに人工呼吸しよっかな(笑)」
「息してんのにって(笑)ありがとう。なんか楽しみになってきた。あと…誘ってくれてホンマにありがとう。」
「いえいえ こちらこそ。じゃあ明日。」
「うん明日10時半……。」
自分の心情を察してくれていたこと、それを心配して電話をくれた優しさが嬉しかった。家族の規模が他人よりうんと小さい美香にとって自分のことを気にかけてもらえるという行為に何よりも心を動かされる。あの電話だけで祐介をもっと好きになった。
抱きしめられながら頭を撫でてもらいその声でずっと優しい言葉をかけ続けて欲しい。そんな願望すら浮かぶほど本当はもう彼が必要だった。




