第二話 芽生
短い癖に長々と書いてすいません。
学生の身分ですのでテストが山のように…
『女と付き合いたければ学校に行け』
素直な医者はそう言った。
なので余命3ヶ月にも関わらず僕は学校に行くことにした。
ここ1週間は調子が悪かったから学校に行っていなかったのだ。
学校の皆も僕が調子悪いのは知ってるだろう。
でも余命があと3ヶ月しかないと知っている者はいないだろう。
そしてこれから知る者もいないだろう。
僕は元気になった、という設定で学校に行く。
しかし、僕の身体は普通にしていれば全く不自由でない。
本当に余命が3ヶ月しかないのか疑いたくなる程に。
「おう! おはよう創一! 久し振りじゃんかー」
「おうおはよう和貴」
僕、柳創一は挨拶をしてきた新村和貴に返答した。
「お前調子はどうなの?」
「まぁとりあえず大丈夫だ」
大嘘だ。
「へぇ、そりゃ良かった。 てっきり俺は死んだものかと思ったぜ」
僕は少し反応してしまう。
周りには気付かれない程度に。
「ははっ、死ぬわけないじゃんか」
「そうか。 なら良かったさ」
そして僕は懐かしの教室に入った。
まぁ懐かしと言っても1週間くらいなのだから、昔インフルエンザにかかったときと同じくらいだな。
席が変わっていた。
「なぁ和貴。 席替えした?」
「あぁ。 ちょうど昨日だ」
「……俺の席どこ?」
「あっちあっち」
和貴の指差す方向は窓際の一番後ろ。
あぁ、あそこは一番のんびり出来る席だ。正直ラッキーだ。
「俺の隣りの奴、誰か知ってる?」
「ま、知ってるけど……楽しみにしてな」
そして僕の席の前に和貴は座った。
お前の席はそこか。
なら歴史の時間は暇することもなさそうだ。
そして僕も自分の席に座った。
まぁどうせ余命3ヶ月なのだから授業なんか真面目に受けたって意味はないだろう。
そう考えれば気が楽だ。
余命3ヶ月の人間の心持ちとはこんなにも落ち着いているものなのか。
恐らくまだ死の実感が掴めていないからなのだろうけど。
こんなにも日常と変わらないのに、死ぬとは全く考えられない。
そして僕も自分の席に座った。
「創一はなんで病院行ってたの?」
突然前の席の和貴が聞いて来た。
「動脈硬化だよ。 死に至程では無いってさ」
それは2番目の医者の話だがな。
「へぇー動脈硬化って死なないのか」
「んーまぁ死ぬパターンもあるらしいけどな。 俺は大丈夫らしい」
「そりゃ不幸中の幸いだな」
実は『幸い』じゃない。
『辛い』なんだな、これが。
そんな風に僕らが話し合っていると隣りに人が来た。恐らく僕の隣りの席の奴だろう。
さぁ誰なのだろうか。
「ひっさし振りー、柳くーん」
「……委員長」
そこにいたのは委員長だった。
本名は櫻井梢だ。
「久しぶり……委員長」
「んもー、まだ委員長って呼んでるー。 『梢ちゃん』って呼んでよー」
委員長が頬を膨らませて、怒った振りをして僕に言う。
「梢……ちゃん」
「もっと大きな声でー! もう一回!」
「梢ちゃん」
「もっとぉ!」
「梢ちゃん!」
「きゃあ名前で呼ばれちゃった。 恥ずかしいっ」
いやいや、あなたが呼ばせたじゃない。
ま、悪い気はしないし、いっか。ちょっと恥ずかしかったけど。
「ところで柳君」
「創一」
「え?」
「俺も委員長のこと梢って呼ぶんだから、梢も俺のことを創一って呼んでくれ。 じゃないとなんか不公平だ」
「あはっそうだねっ。 えー、では改めて……創一」
「なんだ梢」
俺は何気に呼び捨てにしていた。
「なんで学校休んでたのー?」
「あぁ、病気だったんだよ」
「病気? 大丈夫なの?」
「もう大丈夫だよ」
こんな朝早くから2回も嘘を吐いてしまった。
「そう、それは良かったね創一ぃ」
……名前で呼ばれるのって恥ずかしいな。
まぁそんなやり取りの後、ホームルームがあって、そして授業が始まった。
席替え後……というか久々の授業かな。
まぁもっとも、真面目に受ける気が無いのだからどこの席だろうが関係ないんだが。
1時間目は数学。僕は授業開始3秒で机に突っ伏していた。
しかしすぐに起こされた。
「創一、駄目だよ寝ちゃ」
委員長が僕の耳元で言った。
近い近い。
「いや、なんていうかダルくて」
「だーめ。 勉強するのが学生の本分でしょ?」
「ソーデスネ」
「……なんで片言」
それでも僕は寝続けた。
しかし先生に見つかってしまった。
「柳、問い3の答え、言ってみろ」
突然当てられた僕は立ち上がると同時に足を打った。致命傷だ。
というか問い3と言われても何ページかも分からないのに答えられるはずがない。
「えーっと……」
焦る。
このハゲ、もとい先生は答えられなかった生徒は問答無用に立たせると言う理不尽極まりない奴なのだ。
こんな奴のせいで俺の安眠を妨げられたくない。
「……5683」
隣りから掠れたような小さな声が聞こえた。
委員長だ。
僕は委員長を信じてみることにした。
「5683ですか?」
「……正解」
僕はなんとか安眠を守ることが出来た。
てかあの教師今舌打ちしましたよ。
無事答えた僕は席に座り、委員長に言った。
「ありがとう梢」
「感謝しなよ。 私がいなかったら創一ずーーっと立たされたんだから」
「だからありがとう」
「お礼は?」
「は? お礼?」
「うん、助けてあげたからお礼」
「梢が困った時に助けてあげるっていうのは」
「助けられるの? 私を」
「ぐっ……わからない」「じゃあ、今ここで私への愛を囁いて」
「遠慮しとく」
「いいなさいよー。 助けてあげたんだから」
「……言わないとダメか」
「うんっ」
「てか愛を囁く、って何言えばいいんだよ」
「『心のそこから愛してるよ』とか『メチャクチャにしたい』とか」
「ココロノソコカラアイシテルヨ」
「だからなんで片言……」
楽しい。
委員長と話してるとなんか心が温まる。
いや、好きとかじゃないかもしれないけど、委員長と話してると自然な感じになれる。
死ぬことを忘れられる。
なんか……このまま委員長とずっと話していたい。
ずっと一緒にいたい。
死ぬまで一緒にいたい。
医学の知識は何度も言いますが皆無です。
これからもゆーーーーっくり更新していきますのでお願いします。




