第一話 宣告
医学の知識は皆無なので何が原因で死ぬのかは分かりません。謎です。
「君、もうじき死ぬよ」
患者の僕がいる目の前で、担当医は僕の両親に単刀直入に言った。
ドラマや小説なんかとは全く違う。
オブラートに包んで言うなんてことをせずに、ただ現実を突き付けてきた。
ことの始まりは2ヶ月前。
バレーの授業中、僕は昏倒した。
それは前触れもなく、本当に突然。
当然のように救急車に運ばれた。
「ただの貧血ですね」
最初の医者にはそう言われた。
しかし1ヶ月たっても昏倒することが多々あり、その度に救急車に運ばれる僕を不思議に思った母は病院を変えた。
2人目の医者で僕は死に至る程では無い、と言われた。
そして1ヶ月後、つまり今。
3人目の医者で僕は自らの寿命を知らされた。
僕は15歳にして末期が見えてしまった。
死に至る程では無いと言われたのに。
「恐らくもって3ヶ月ですね」
エラく正直で素直な医者に当たったもんだ。人の死をそんなハッキリ告げられるなんて。やはり医者は忍耐力が違うなぁ。人の死が平生と化している医者にとっては僕の死など刹那に過ぎ去っていく人生の1コマに過ぎないのだろう。
「あと3ヶ月だからさ、好きなことしちゃいなよ」
素直な医者は言った。
「好きなこと……ですか?」
「うん。 死ぬ前にしたいこと……何かしらあるでしょ?」
医者の顔が少し面倒くさそうに見える。
「じゃあ……1つ、我儘を言って良いですか? 15年の人生に見切りをつけるための最後の我儘」
「いいよ。 ただし、叶えられる範囲でね」
この医者は現実主義者なのだろうか。そこは『なんでもいってごらん』と言うのが定石だと思うのだが。
しかもこの医者は尚も面倒くさそうだ。
「じゃあ――」
僕は言った。
「女の人と――付き合いたいです」
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