嘘
土曜日の出来事から、2日後。
今日は、月曜日。嫌でも慎と顔を合わせなくてはいけない。
私は、昨日必死で出した言葉を慎に伝えることにした。
「慎、今日部活終わったらちょっと待ってて。」
「おぉ。」
慎が言葉を発した直後、私は鋼に、慎は同じ吹奏楽部の双に、教室から連れ出され、
私は、トイレの近くまで引っ張られていった。
「今日のお前ら絶対おかしい。土曜日私たちが帰ってから何かあったでしょう??」
また、あの色が浮かんでいた。あの悪がきの色が。
「何も無いよ。それより、何で土曜日は。。」
「嘘をつくな!!絶対何かあったでしょう??ほら、ささっと言いなさい!!」
鋼が興奮してきたのが分かる。いつもより、鼻息が荒い。
それに、喋りも早くなってきている。
「えぇっと、別に何も。。」
「いや、あった。ほら早く!!」
やばい。鋼ににらまれると(?)この恐怖から逃れたくて思わず口が滑りそうになる。
もう、ここはあの手で行くか。
「鋼、実はね。」
「うん、うん。」
鋼の嬉しそうな顔、慎ごめん。
「慎からさ、恋の相談を受けて。。。」
「えぇぇぇぇ!!慎は、てっきり。。。」
その後は、言わなくても分かった。たぶん、いや100%、
「さちの事好きなんだと思ってたんだけど!!」
だろう。
鋼の口が動く。
「さちのこと好きって、ずっと思ってたんだけど!!」
あ、惜しい。99%。
「そんな事言われたって、本当にそう言ってたんだって!!俺は、あの子が大好きだって。」
「ってことは、名前も知ってるの??そんな話までしたんだから、もちろん聞き出してるよ ね。」
もうすぐ、授業が始まる。でも、名前を言うまで私を放してはくれないだろう。
「そんなに、知りたいの??」
鋼は、首を縦に大きく動かす。女の子ってこういう話好きだよな。
「えっとねその子の名前は。」ごめん、本当にごめんね。
鋼の視線が私の唇へと集中している。声が音が、目で見えるかのように。
「那智」あぁ、言ってしまった。声に出して。音と共に。
「マジ!!?身の程を知れ慎!!」
鋼の目が、きらきらしている。
やばい、もっといろいろ聞いてくる目だ、これは。
キーンコーン・カーンコーン
「あ、もう授業始まっちゃうし、行こうさち。」
何とか切り抜けられた。助かった。
「ねぇ、さち」鋼が言う。
「慎の恋、応援してあげようね」
そのとき、私は、なんともいえない感情に襲われた。
今、鋼の前で「慎は、私が好きなの!!」と叫びたくなった。
私は、数学の授業中ずっと考えていた。その感情にピッタシな言葉を。
「やきもち」「嫉妬」
こんな言葉が頭の中を駆け巡る。
私はとんでもない失敗を起こしたことに、まだ気付いていなかった。
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「音にのせて」最後まで読んでいただけたら嬉しいです。