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音にのせて  作者: 枝豆
2/15

入部

   音楽って素晴らしい。

   楽器で、音を鳴らすのってとても楽しい。


初めて私が手にした楽器、それはよくジャズなどで使われているサックス。

音楽が、こんなにも楽しいなんて。しかも、このサックスはなんてきれいな音を鳴らすんだろう。


私は、幼稚園からピアノをしていた。最初は音がでるのが楽しかった。私と音楽との始めての出会い。

 「この音は、私がここから出してあげたんだ。閉じ込められた、この音を。」

小さい私は、勝手に思っていた。でも、小学生になりピアノの先生に注意されることが増えた。

「ここは、そうじゃないでしょ!!こう弾くのよ。」

同じ事を、何回も注意されるようになった。何回練習してもできないもどかしさ。

先生の言葉への恐怖。そして、両親の冷ややかな目。小学生の私には、耐え切れなかった。

怖い。

その一言だった。全てが怖い。練習してもしてもうまくならない。先生の目にはもう、あきらめの色が浮かんでいた。両親が顔を直視することが、できなかった。


ピアノは、中学校に上がる前にやめてしまった。 

中学校の入学式。入場曲が鳴りはじめた。CDじゃない。テープじゃない。ピアノ伴奏でもない。 テープみたいなか細い音じゃない。ピアノのような、静かな、小さな川のような音でもない。もっと厚い、もっと熱い。人の思いが伝わってくる。ピアノでは、表現できない重みが伝わってくる。あの、音は何だろう??

私は、音が出てきた場所を見た。入学式をしている体育館の隅。みんなの邪魔をしないように、ぎゅうぎゅうになって演奏している。

でも、1人1人が、一生懸命に吹いていることが分かる。顔は真っ赤だ。

演奏が終わり、入学式自体も終わった。体育館の隅を見ると、そこにいる1人1人の顔に満足そうな、表情が浮かんでいた。


私は、あのときの音を忘れられなかった。機械では表現できないあの音を、ピアノでは伝えられないあの気持ちを。私は、入部届けをもらった次の日にはもう、名前を書き印鑑を押し、部活動の所には「吹奏楽部」の名前を書き、担任の先生に渡した。


これが、私と吹奏楽部との出会い。私と本当の音楽との出会い。

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