大好きな人
「那智ゴメン。本当にゴメン。なかなか言い出せなくて。。。」
昨日、何回も練習したこの言葉を繰り返し、私は学校へと向かっていた。
私にも、生まれて初めて彼氏ができた。 ただ、問題が一つ。その人は、私の友達の想い人だった。
「えっ、今なんて。」
「だから、慎と付き合うことになったって、言ったんだけど」
最後のほうは、ほとんど聞こえない。那智の反応を待った。
「・・・・。本当!!?おめでとう、良かったね。さちちゃん!!」
予想していた反応と、全然違うんですけど。
「実はね、私にもようやく好きな人ができたんだ。ようやく、慎の事忘れられそうだよ。」
やっぱり、少し意味が分からない。
「那智、今も慎の事が好きなんじゃ?」
「うん、好きだったよ。さちが慎のこと好きだって知るまでは。」
私は、ものすごくびっくりした。
「知ってたの??」
那智は、さも当たり前のような顔をして、
「誰でもわかるよ。」
私は、顔が赤くなったのが分かった。
「つーのは、冗談。全部鋼から聞いた。最初は、さちを殺そうかとも思ったけど、そんなことできるわけも無く
どうしようかと思ったけど、さち見てたら私があきらめたほうがいいと思っちゃたりして。。。」
那智の目に涙がうっすら溜まっていく。彼女は、きっとまだ慎のことが諦めきれていないのだろう。
でも、彼女は私のことを上辺だけでも祝ってくれている。
「ありがとう。本当にありがとう。」
彼女への精一杯のお礼だった。たった、これだけしかいえなかった。私の目には涙が溜まっていて那智の顔が見えなかった。
私の足に水滴が落ちた。私のものではない。他の誰かのもの。
その人は、私の前から走り去っていった。
私も走っていた。
あの日の屋上に。彼がいることを願って。
屋上のドアを開けると、
「よっ、って何泣いてるんだよ!!?」
彼がいた。
私は、彼の目の前で泣いた。彼女のことを話し、今してきたことを話した。
彼は、優しい目をしていた。
「頑張ったな。」
そういってくれた。優しい目をして、優しい手で頭をなでてくれた。
那智、本当にごめん。
許してくれとは言わない。
でも、私には、彼しかいなかった。
彼だけだった。
私は、那智にも他の誰よりも彼を愛するよ。きっと。
那智に、取られないように。
慎、大好きです。
こんな貴方が私と付き合ってくれるのは嘘みたいだけど、本当にありがとう。
音にのせて。
私の思い、貴方の元に。
終わりが見えてきました。
最後まで、お付き合いください。