表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第3話 エルフの少女と「在庫」の事情

 現れたのは、銀髪のエルフの少女だった。ボロボロの服、土色の顔。まさにテンプレ的な「行き倒れエルフ」だ。


「あう……。何か……食べ物を……。カビの生えたパンでも……」


 少女は俺の前まで来ると、糸が切れたようにパタリと倒れ込んだ。


(おい!生きてるか!?総務ソーム、状況!)


『回答。栄養失調と魔力欠乏により、あと数十分で「エルフの死体(収納可)」になります』


(収納するな!ほら、さっき拾った干し肉だ!)


 俺は蓋をパカッと開け、さっきの戦利品である「カサカサの干し肉」を彼女の口元へ吐き出した。ついでに、体内の底に残っていた「粘着液の残りカス(ベタベタ)」も一緒に出てしまった。


(あ、ヤベ。工業用ボンドが付いちまった。……まあ、死ぬよりマシか?)


『成分分析。あのボンドは高カロリーなので、弱った体には最高の栄養剤ドーピングになります』


(どんな理屈だよ!)


 少女は震える手で肉を掴み、野生動物の勢いで食らいついた。


「……んっ!……おいしい……!この独特の粘り気、濃厚な甘み……もしやこれは、伝説の『王家の蜂蜜』!?」


『いいえ、工業用ボンドです』


(黙ってろ!夢を見させてやれ!)


 みるみる顔色が戻った少女――ルミナは、涙目で俺を見つめた。


「ありがとうございます、箱の神様……!あなたが助けてくれたんですね?」


(ガコッ!ガコオオ!)(おう、気にすんな!元気になったら行けよ!)


 俺は「行け」と示すつもりで蓋を動かした。だが、ルミナは跪き、俺の無骨な鉄のかどを服で磨き始めた。


「……汚れた体を拭け、と仰るのですね。はい、喜んで!」


(言ってねえよ!なんでそんな下僕根性なんだ!)


 その時、洞窟の奥から怒号が響いた。「いたぞ!あの呪いの箱だ!ハンマーで叩き壊せ!」


(ゲッ、さっきの連中か!しかも仲間連れて戻ってきやがった!)


 屈強な男たちが、工事現場のような巨大ハンマーを構えている。ルミナはサッと立ち上がり、俺を庇うように両手を広げた。


「ダメです!この方は私の恩人です!壊させません!」


(ルミナ……!お前、いい奴だな!でもその細腕じゃ無理だ!)


『提案。ルミナさんと雇用契約を結んでください。彼女にあなた様を「装備」させるのです』


(装備!?俺をか!?)


『彼女の魔力とあなたの「重量操作」をリンクさせれば、物理法則を無視した機動力が得られます。……やりますか?』


(やるしかないだろ!ルミナ、俺を持て!)


 俺は中身の銀貨を一枚吐き出し、蓋を激しく開閉して自分の背中(底面)をバンバンと叩く音を立てた。


(ガコンッ!ガコンッ!)


 ルミナはその動きを見て、ハッと目を見開いた。


「……私に、背負えと?共に逃げようと仰るのですか?」


(そうだ!早くしろ!)


 ルミナがおそるおそる俺を持ち上げる。その瞬間、総務ソームが淡々と告げた。


『リンク確立。スキル「超軽量化フェザー」発動。……さあルミナさん、風になってください』


「えっ?……わっ!?」


 ルミナが軽く一歩を踏み出した瞬間――景色が消し飛んだ。


 ドッピュウウウウウン!!!


「きゃああああああああああ!?速すぎますぅぅぅぅ!!」


 まるでロケットエンジンを背負ったかのような加速。俺たちは一瞬で男たちの頭上を飛び越え、洞窟の壁を垂直に駆け抜けていく。


「な、なんだあいつら!?箱が飛んだぞ!?」


(すげぇ!これがエルフの身体能力×無重力か!いけルミナ、街までぶっちぎれ!)


 猛スピードの振動で、俺の中身が激しくシェイクされる。


『あ、シェイカーの振動により、内部の「銀貨」と「鉄屑の残りカス」が融合を始めました。……おめでとうございます、また変なゴミが生成されそうですよ』


(だからその報告いらねえって!)


 こうして、俺とエルフの爆速逃避行が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ