北へ、南へ、そして……
愛を探して歩いたが
都会の迷宮は方角すら掴めない
あの人の宮殿は遠かった
緑の丘に白い高殿はあった
あの人は北を見つめていた
死神に誘惑されるまま
水晶は砕け、ガラス玉へと
二人は塩辛い飴玉を嘗める
逃げゆく愛を追いかけて
二人、田舎径を北へと走る
陽光に照らされてもなお
右の頬が冷めて蒼ざめる
太陽を裏切った貴女は
都会の迷宮を知らずに求めて
田舎径の先にある荒野を拒んだ
さようなら、愛を失った貴女よ
わたしは一人、南へ飛ぶ
弱い銀翼に望みをかけて
永遠の井戸を落ちる一粒の石のように
底なしの絶望を知りながら
友よ、君がみなに伝え給え
荒野で一人、愛と向きあう友よ
南へ向かったその理由を
愛という名の絵手紙を
黙して待つその理由を
アーク灯の点いた路地裏にあっても