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第二十一話

 やがて明るい笑みを浮かべて出て来るルイーザに、ブラジェナは肩の力を抜けた。顔を伏せ、ため息を吐き、握り拳を解く。良かった、怪我してなさそうね。ハラハラしたわ……。ブラジェナは再び息を吐いた。


 ブラジェナは再びルイーザに視線を向ける。手元を見ると、彼女は何故かバスケットを持っていた。え?ブラジェナは目を瞬かせる。視線を戻すと、ルイーザは微笑み、バスケットを目の前に差し出した。


「一先ずのお礼です。あたしが今日作った野菜等を使った対パンなの。是非ジーノさんと食べて下さい。」


「そんな……。お気遣いなく。」


 ブラジェナは両手を上げて言った。そんな彼女に、ルイーザは眉を下げて微笑む。


「お二人には助けていただいたので。どうか受け取って下さい。」


 さあ、とより目の前に来るバスケット。


 ブラジェナは瞳を揺らす。どうしようかしら。私はあくまで手伝っただけだし。かと言って断り過ぎるのも、良くないわよね……。暫く思案した後、ブラジェナはバスケットを受け取った。


「ありがとうございます。いただきますね。」


「ありがとうございます。」


 ルイーザは満足気に笑みを浮かべた。


 数秒置いてから、ルイーザは胸の前で両手を組み、眉を下げた。


「ジーノさん、すぐに戻って来ないですよね。後でブラジェナさんから渡して下さいませんか?」


「分かりました!」


 ブラジェナは頷いた。持ち運ぶわけにもいかないし。彼女は懐から杖を出す。杖先をバスケットに向け、軽く振った。


 バスケットは白く輝き、次の瞬間、姿を消した。異空間に送られたのである。後で取り出せば良いわね。


 ブラジェナはこちらを見るルイーザに微笑みかける。


「後で渡しますね。」


「ありがとうございます。宜しくお願いします。」


 ルイーザは頭を下げると、笑みを浮かべた。



 ジーノが去ってから数分もしない内に、騒がしい声が聞こえた。


「どいてくれ!」


 男性の声に、ルイーザは目を見開き、ハッと顔を上げる。彼女は、男性の名前を大きな声で呼んだ。ルイーザの夫──レーヴィであろう男性は、激しい足音を立てて駆け寄って来る。ルイーザの肩を掴み、大きな声で尋ねた。


「ルイーザ、ゴブリンに襲われたって本当か!?」


 レーヴィの声に、ルイーザは目を伏せる。


「そうなの……。お店はもうめちゃくちゃよ。」


「そうじゃない!」


 レーヴィは、首を横に張った。


「ルイーザ、お前は無事だったのか!?」


 ルイーザは、目を瞬かせた。


「ええ、あたしは、無事よ。」


 レーヴィは、ルイーザを抱き締めた。


「良かった……!ルイーザが無事で……。」


 ルイーザは、涙ぐむ。ルイーザはレーヴィの背中に手を回す。


「レーヴィ……。」


 レーヴィとルイーザが抱き締め合う中。ブラジェナは一歩引いたところで見ていた。


 レーヴィは出かけていたが、モンスターに襲われた、と聞き急いで帰って来た、と言うことである。店は何とかすれば良い、と彼は言った。


 身体を離し、見つめ合う二人。


 胸焼けしそうな甘い空気。



 暫くして、ブラジェナに横から控えめな声がかけられた。


「モンスターが出た、と言うことで。迎えに来たのですが……。」


 横を見ると、背の高い騎士が怪訝な顔をして立っていた。彼は眉を顰めると、ブラジェナに目を向けた。合っているのか、と疑問を抱いていることが分かる。ブラジェナは首を縦に振った。


 そして、ルイーザ達の間に割って入った。


「騎士の方が来てくれましたよ。」


 熱く見つめ合っていた二人は、そちらに向ける。そして、頬を赤くさせると、照れ笑いを浮かべ、謝りながらこちらに近付いて来た。


「ごめんなさいね。」


「すみません。」


「いえ。」


 ブラジェナと騎士の二人は苦笑した。


 馬車は少ししたら来ると言うことで、簡単に聴取を受けた。ルイーザの横でレーヴィは顔を強張らせながら聞いていた。


 レーヴィは眉間に皺を寄せながらルイーザに聞いた。


「ルイーザ、本当に大丈夫だったのか?」


「ええ。大丈夫よ。」


 ルイーザは、口元を緩めて頷いた。


 レーヴィはブラジェナにお礼を言った。


「お礼を言うのが言うのが遅れて申し訳ありません。ルイーザを助けて下さり、ありがとうございます。」


「いえ……。お礼はジーノ隊長に言って下さい。」


 ブラジェナとジーノが離れるので、ここの警備は他の警備員達に任せることになった。


 暫くして、足音と共に、カララ、と言う何かが回るような音が耳に入る。左に顔を向けると、茶色い馬車が見えた。キイ、と音を立て扉が開く。大きく毛並みの良い茶色の馬が鼻を鳴らした。ブラジェナは胸の前に手を当てる。大きいわね……!


 ブラジェナは自分が手を伸ばしていることに気付き、引っ込めた。苦笑する。しばしば目線を送った。後で触らせて貰えないかしら。


 ブラジェナは馬車へと促す騎士に頷いた。彼は乗って来た馬で付いて来る、と言うことである。ヒヒーン、と彼が引く馬が鳴いた。ブラジェナはルイーザとレーヴィに続き、乗り込む。二人の向かいに腰掛ける。


 三人が座ると、ガタ、という揺れの後に馬車が出発した。

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