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Closer  作者: 篠原 祐
第一章 黒い雨が降る
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同寮。そして同僚

「やだも~すっごいイケメンじゃない。見た目もモダンボーイって感じでかっこいいわね~」

「は、はは。ありがとうございます」


 扉を開けた老婆はそのまま部屋にずかずかと上がり込み、僕の前に来た。


「黒依さんが言ってたけど、住む場所がないらしいじゃない。このアパートに住みなさいな。一階の4部屋は全部埋まってるけど、2階の部屋は全部空いてるから選び放題よ~? この事務所に入るらしいなら面倒な手続きも私のほうで――――」


 そんな感じのトークをされ続けること数分。待ってたよりも長いんじゃないか。

 いきなり入口の扉が開き、灰賀さんが戻ってきたのかと思うと―――


「ただいま~。『八重桜(やえざくら)』って言ったっけ~? 言われたとおりちゃんと閉じてきましたよ…っと、む?」


 黒髪に青のメッシュが入ったミディアムヘアをポニーテールでまとめ、騎士服を着た女の人が出てきた。大学生くらいだろうか。


騎士服は甲冑のない、中世風のものだ。明らかに現代にそぐわない恰好だが、クローザーの防具…耐久性を上げたりするものの中には変な見た目のものがある。有名なのだと包帯、巫女服、ヒーロースーツ…街中でそういうのを着る人もいる。騎士服が浮いてるということはない。


 が、それよりも目を引くのは顔立ちだろう。

 かなりの美人だ。


「もしかして依頼人の方ですか? やー待たせちゃってごめんね〜。今田さんも応対してくれてありがとう。私が変わるから部屋に戻って大丈夫だよ〜」

「違うのよルナちゃん。この子、事務所に入るらしいのよ。聞いてないの?」

「えっ……? うそーっ!!」


 ドタドタと玄関からソファーまで駆けてくる。


「君、ここに入るの!? ぜんぜん聞いてないんだけど? 灰賀とは話してある? もしかして街に貼ってきたポスター見てくれたのかな? なんにせよよろしく! 私の名前はリベルナって言うのよ。階級は灰賀と一緒で9級、君は何級? というか名前は?」


「み、宮田 光って言います。10級です」


 この事務所は言いたいことを一方的に言う人しかいないのか。というか名前が日本人ではない。


「外国人なんですか? リベルナって明らかに日本名じゃないですよね?」


「外国人かは…分からない! 私は記憶喪失だから! リベルナっていうのは私の()()に書いてあった名前なの」


記憶喪失ってどういうことだとか部屋ってなんのことだとかいろいろ気になるが、いったん後回しにすることにしよう。絶対長くなる。


 その後、おばあさん……今田(いまだ) 君子(きみこ)というらしい。は、書類を渡しに来たらしいが、灰賀さんがいないとのことで彼の机に置いて帰っていった。彼とはすれ違いになったらしい。

 そうして、リベルナという人と2人きりになった。ルナさんと呼ばせてもらおう。彼女の素性も興味深いし、事務所についていろいろと聞きたい。


「ルナさんはこの事務所に入ってどれくらいですか?」

「え? んーと、4か月くらいかな?」

「結構最近なんですね。そもそもこの事務所っていつできたんですか?」

「うーん、多分半年前くらいかな~? そんなに歴のある事務所じゃないんだよね~」

「それは……まあ確かに、ホコリなんかも積もってないですからね」


 待機中に戸棚や机を見ていたが、汚れてるような場所はなかった。


「よく見てるね~。確かに始まってから短いのもあるけど、レヴィが掃除してくれてるおかげでもあるね」

「レヴィって誰ですか? もしかして、他のメンバーだったり……」

「んん~他のメンバーと言えば確かにそうではあるけれど、()()というにはちょっと違うかも…?」


 彼女が少し考えだした。

 が、すぐ顔を上げた。


「む、灰賀が戻ってきたね」


 言われて、入口のほうを向くが、彼は戻っていない。


「来てませんよ?」

「いや~来てるよ?今アパート近くの坂を登ってるとこだね」

「そんな遠くのことがよくわかりますね……」


 からかわれているのだろうか?いや、だが彼女の能力なのかもしれない。そう信じて待ってみる。

 が、やっぱり信じられない。あの人ブツブツ言いながら髪結び直してるし……


 半信半疑で黙っていると、後ろからコンコンと音がして扉が開いた。

 彼女の言う通り彼は近くまで戻っていたらしい。やはりなんらかの能力だろうか?

 扉が開かれる。


「ごめんよ光君。石炭の出荷は済んだけれど、取引事務所で依頼したいって人がいてね~。と、ルナ! 戻ってきてたんだね、お疲れ様」

「灰賀もお疲れ様。って、その左手……また『打金(うちがね)』使ったの? 袖吹き飛んでるじゃない…あれ反動も大きいでしょ。大丈夫?」

「大丈夫さ、あれは怪我するものじゃないし。それより、やらなきゃいけないことが詰まってるんだ。とりあえず、2人は自己紹介済ませたかい?」

「はい。あーでも一つ聞きたいんですけど、ルナさんはあなたが戻って来たことに早くから気づいてたみたいなんです。これって何かの能力ですか?」


 気になったので聞いてみる。


「ん? あ~私の能力が気になるの? ふふーんいいでしょう教えてあげましょう」


 彼女は続ける。


「私の能力は【1’st(ファースト) センス】。遠くの人や屈折体の位置なんかの、見えない場所のことがわかるの!」



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