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Closer  作者: 篠原 祐
第一章 黒い雨が降る
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Close up

 

 ◆


 灰賀さんに連れられ、歪みを出て行った。

 彼はスマホで電話をした後、僕を連れて歩き始める。

 進みながら話をしていると、さっきの石炭男…「過積債(かせきさい)」は、あの鉱石を取った人がなる場合と、自然に発生する場合があると教えてくれた。


 ……あのまま助けられなかったら、僕はこの人に爆散させられていたのだろうか。少し聞きたいけれど、とても言えない。

 灰賀さんは話を続ける。


「そういえば君って、ちゃんと登録してあるよね?」


 登録というのは、僕が学校で行ったものだろう。

 採血されたり、指紋を取られたりした後、血圧計みたいな器具に腕を突っ込んだりした。それによって左腕の前腕に対し、意識を込めるとステータスのUIが出るようになった。

 装備している武器等を交換できるらしく、灰賀さんが過積債と戦っていた時に使ったのもそれだ。

 ただ僕は交換するほど武器防具の種類を持ってないので使う意味はない。しかし、ある程度集めている人にとっては必須だ。

 登録しておけば、自分の階級を測ってもらえるなどのメリットもあり、ほぼすべてのクローザーが登録しているらしい。


「はい、もうやってます」

「そうか。ただ、あんまり歪具(わいぐ)は持ってないんだろ?」

「……ええ。一つも持ってないです」


 歪具は歪みの中で手に入る道具全般のことで、UIからつけ外しが可能だ。

 灰賀さんの使っていた籠手なんかはそれにあたり、能力とは別物である。

 持っている量が力を示す指標であり、1級クラスになると百個近く持つという。


「え、一つもないの?それで9級相当の歪みに入ってたのか……」

「……」

「まあ、大丈夫だろう。俺の事務所でも君のサポートをするからさ。いくつかいい歪みのアテもある。じっくりやっていけばいいさ」

「よ、よろしくお願いします」


 そんなこんなで、先ほどの林を出て進んでいったが……駅から見えていた山に黒依さんは進んで行った。明らかに人の家が減り、坂道を少し登ったところで、場違いなアパートが見えてくる。


 アパートは2階建てで、壁なんかの設備は新しそうだ。こういうのって普通古臭かったりするのでは? と思いつつ、通り過ぎる。と、


「どこいくんだ?ここが事務所だぞ」


 灰賀さんに止められた。


 こんな人通りの少ないアパートに事務所…?

 基本的に事務所なんてものは人通りの多い場所にあるべきだろう。尋ねにくる人が来やすく、事務所の外観で興味を惹ければ、それだけ仕事が入ってきて有利だ。

 ただまあ、そんな場所には金がかかるのも当たり前。こういう場所に構える理由も想像がつく。


「……そうですか」


 引き返して、事務所道路側の門から敷地内に入った。

 なんとなく、灰賀さんが悲しそうな顔をしている。


「と、とりあえずメンバーを紹介するよ。ささ、入って入って」


 そういって、アパートの手前から2個目の部屋を開けた。

 扉には「Close up」と書かれたプレートが貼られている。


 彼の後に続いて入っていく。部屋はそこそこ広く、10畳くらいの大きさがあった。

 中には、机が2つ向き合って置かれていて、片方の机は質素な印象を受ける。書類と、細々とした道具、ノートパソコンが置かれていた。


 もう片方の机は…なんというか、ごちゃごちゃしていた。置かれているペンなんかの色合いから女性が使っていることは推測できるが……何かのキャラのグッズ、真面目な料理本、華美な化粧品、和菓子、ロボットの模型、でかでかとシールが貼られたノートパソコンなどなどが散りばめられている。一貫性がまるでなく、複数人で使っているような机だ。


 他に応接用であろうソファー2脚と間のテーブル、書類棚、冷蔵庫、道具ラック、その他もろもろが置かれていた。トイレや洗面所もあるらしい。アパートの部屋をそのまま事務所にしたのだろう。


「もうすぐ同僚に当たる人が来るから…そこのソファーに座っといて、人が来たら入れてあげて。あと、会ったら自己紹介しといて!」


 そういって、彼は僕をソファーに座らせた後、手に入れた石炭を処理すると言って部屋を出ていった。

 僕も言えたもんじゃないけど、あの人も不用心だな…会って1日も経たない人を部屋にあげて放置するとか。

 そうして、部屋のつくりを見ていると、数分もしない内に入口の扉が叩かれた。石炭の処理にかかる時間は知らないが、こんなに早く終わらないし、彼の言っていた同僚だろう。

 恐らくちぐはぐな机を使ってる人で、女性かな? 少し緊張してきた。


 少し葛藤しつつも、「入って大丈夫です」と呼びかけた。

 すると扉が開き――――









「あなたがここに所属するっていう男の子? あらまあ、すっごい若いじゃないの、中学生だと思ったわ~」


 白髪のおばあさんが出てきた。なんというか、がっかりだ。

結構間があいてすまない…

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