意地の衝突
「さて、ここまでは各フィールドごとの作戦についてだ。そしてこっからが最も勝つ率が高い都市フィールドの作戦を伝える。」
試合開始30分前
鴻山総合学院の選手は対覇連大付属との試合に向けてミーティングを行っていた。
数的、実力、経験、何を取っても劣っている状態で挑むこの試合、選手は天才の策に耳を傾ける。
神田がコーチになってから約2週間、選手達はSAや作戦実行等の訓練を基礎から叩き上げてた。
その成果は早くも現れいつしか選手たちは神田に対しての感情を不安や憤怒から興味と尊敬に変貌を遂げる。
「前提条件相手は小細工をしない、それで勝てるから。さらに言うなら作戦やるより個々の練習や、1つのスタイルを貫く方が強いと考えているからだ。
まぁ、実際強いがな〜
だからやる事は読みやすい、そうだろ?
んじゃ、詳しい話をするぞー」
そして現在。
(基本ふざけるしやる気無しの態度、印象は最悪だが神田の作戦やSAに考えにはいつも驚かされる。
そして今、私含む6人は奇跡を見ている。)
3人の撃破、それにより鴻山総合学院は一気に不利の要因を薄めていた。
人員差は僅かに1、近づく。
それでも同数までは不利なのは変わらない。
「全員、プランB!」
鴻山総合学院の背番号1番、真鍋の号令と共に選手達は反応を示し、次なる行動へ移る。
6人が固まりながらある目標に向けて突撃する。
崩れ続けるビルには構いもせず、猪突猛進。
「俺が狙いか!?」
目標物は覇連大付属の背番号2、仲村渠である。
神田が伝えた奇襲作戦最大の目的は《目》であり《頭脳》を担う仲村渠の撃破、副次的な目的として数を減らす事。
もしも最初の奇襲が失敗に終わった場合は崩落するビルから脱出を目指しながら仲村渠だけを6人で狙う、それがプランBである。
「悪いがリンチだ!」
「舐めるなよ、雑魚共がぁ!」
狙われている事を知った仲村渠は自らのSAであるスナイパーの銃口を真鍋へ向ける。
少し遅れて残った覇連大付属の選手達も援護の為にSAを構え始める。
「今だ、障壁展開!」
「はいーよっと!」
仲村渠に向かって走る鴻山総合学院の中1人が振り返る、副会長兼副キャプテンの蝶野。
手に取るSAは番傘。
一気に開き傘が崩れ行く部屋の地面から天井まで大きく広がり部屋を遮断する。
「くそっ!全員打ちまくってコイツを破壊しろぉ!!!」
「耐えろよ、蝶野!」
両校の背番号1が巨大になった番傘の壁越しに響く。
意地と意地のぶつかり合い、互いにかけられた2番の副キャプテンの命。
隔てられた壁に浴びせられる弾幕と集団に狙われたスナイパー。
勝者が…決まる。
「すまん、先に行く…」
弾幕を耐え続けた番傘が崩れ行く、儚く無情に。
そして我那覇は目にし、知る。
勝者は…居ない。
「は?」
壁は突き破られそこには何もなかった。
下を覗くもそこにはコンクリートの地面のみ。
そう、勝者は居ない。
どこにも。
『撃破情報
ダウン 鴻山総合学院2 覇連大付属2
撃破 鴻山総合学院1 覇連大付属1
アシスト鴻山総合学院3 覇連大付属
鴻山総合学院5ー6覇連大付属』
「くそぉぉぉぉぉ!!!」
叫びながら崩れ去るビルから退散する我那覇と選手達。
精神的支柱にしてチームの頭脳を失ったダメージは大きく、それは神田が想像してるよりも効果は絶大。
覇連大付属は血気盛ん、個々の強さのみで勝ち続けた集団。
弾幕は相手の戦力もやる気そご落としてきた。
それでも優勝が1回も無いのは戦略では無く落ち着かせるだけの器量と説得力のある力量を兼ね備えた選手がいなかったからだ。
その役目を担って来た仲村渠が居ない今弱体化は必至。
現に現場は混乱が巻き起こっていた。
「おいおい、これはまずいだろ…」
「どうするんですか!?」
「とりあえずあたり吹っ飛ばしてみるか!」
(どうする、どうすれば良い。驕っていたのが良くなかったか?
いや、迷うな…
俺は我那覇康二!沖縄の王にして、全国を制する男だ!)
「付いてこい、お前ら。
こうなった以上は作戦もクソも無い。
鏖殺、蹂躙、俺が最強なことを見せてやる。」
個人技を磨き続けた猛者の集まり、その頂点が動き始める。
神田の作戦が我那覇の本気を引き出す。
勝負の決着は近い。