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本物の怪物

真鍋和希

その男は生徒会長であり、部長であり、そして医者の卵でもあった。

開業医である父に元看護師の母、兄弟は4人で全員が医者志望のお手本の様な一家。

しかし三男である和希はある日思った、思ってしまった。


(このままじゃ私は偉大な親の子供、偉大な兄の弟で終わる…)


そこから勉学に勤しみながら和希は必死に思いを叶えられるような、自分の全てを投げ打ってでも良いものを探しました。

そんなる日、中学3年に出会ったのです。

スピリットアーマーに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いきなりですまないが今日からこの部に学生コーチが来る。神田、挨拶。」

「えー、校長に食券で釣られた愚か者でーす。」

「普通そこは名前だろ。」

「はいはい、神田蓮太郎。1年。」


スピリットアーマー部の部室は凍りついた。

それもそのはず、見ず知らずの1年生がコーチ就任などと言う発表をされたのだから。

しかし神田はそれすら見越した様に言葉続ける。


「気持ちは分かる、知らん人間がいきなりコーチとか不安だな。だから俺の実力を示す。模擬戦部員全員VS俺、これでどう?勝ったら言う事聞く、負けたらこの話無し、単純っしょ?」


困惑する一同だが生意気な1年を倒す、と口々に発しながら部員達は準備を始めた。


スピリットアーマーの団体戦のルールを確認しておこう。

1、場所は連盟が認めた仮想空間フィールドをランダム展開しそこで行うこと。

2、勝敗は片方のチームが全員撃破されること。

3、撃破の基準はスピリットアーマーが壊され気絶、または解除した場合。

4、撃破者は仮想フィールド外へ飛ばされる。

5、撃破、アシスト情報はフィールド中にアナウンスされる。


1は競技施設に関する項目でスピリットアーマーの人気で便利な点。

他の種目は場所の確保が課題となりやすがスピリットアーマーは基本リング上の装置から仮想フィールドへ向かい、試合はそこで行われる。

地形、気候はランダムで展開されその場での対処が求められる。

2以降は直接のルールである。

単純に言うとスピリットアーマーは心の鎧、ダメージが蓄積すると壊れて気絶する。

これを撃破と呼び先に全員撃破された方が負けるのだ。

アシストは撃破とは別に撃破に貢献、または大部分のダメージを与えた物に贈られる。


項目にはないがスピリットアーマーには制限時間がない。

団体戦は短い時で時間試合は5分、長い試合で4時間にも及ぶ。


この日、鴻山総合学院の部員達は知った。

本物を。


「ぃって!」

「はい次。」

「がぁ!?」

「はい次。」

「クソォ!」

「はい次。」


光景だけ見れば人々は虐殺、あまりにもある力の差に驚愕するだろう。

たった1人の生徒が集団を相手に圧倒しているのだから。


スピリットアーマーには様々な種類がある。

剣、鎧、銃、特殊な物…

鴻山総合学院もそれぞれの個性を活かし神田に挑んだ。

しかしながら神田が展開するスピリットアーマーの攻撃を一撃喰らっただけで全員が撃破されている。

特殊でもなければ特別な事もしない、単純な暴力で振るわれる拳。

右手に展開した小手型のスピリットアーマーは確実に相手を屠る。


「おい、神田。」

「最後は変人会長か、早くきなよ。」

「舐めているのか、貴様?」

「なんで?他の部員さん達は一撃で撃破してるし、一撃も俺には当たってないのに?」

「貴様っ!何で鎧を展開しない!」


神田蓮太郎、そのスピリットアーマーは全身を覆う鎧。

圧倒的突破力、制圧力を持ちながらも消費が激しい事で有名。

真鍋が去年見た中学生の大会で神田は確かに鎧を展開していた。

今はどうだろうか?

片手のみである。

これは舐めている、馬鹿にしていると考えられるのではないだろうか?

実際真鍋はそう感じたのだ。


「あー、それね。悪いけど今のあんた達の前で使うほどの価値を感じねーな。使わせたかったらダメージの一つでも与えてみろよ。」

「上等だ!」


真鍋和希、一振りの刀を顕現させるスピリットアーマー。

切れ味はとても良く、鴻山総合学院在籍の間に撃破した相手の数は多い。

しかしながら仲間に恵まれず後一歩で敗戦を続けている。

つまりは個人のレベルは高い。


「喰らえ!」


大ぶりな剣撃が神田に振り下ろされ、つまらなさそうに神田は身を引き交わす。

これが正解なのだ、真鍋にとっては。


「かかったな!『燕返し』!」


一撃にして二撃。

降り降ろされた刀は等身を翻し上昇し開いた距離を詰め、神田へ襲いかかる。


「良いな、流石にエース格。だが少し甘い。」


刀は神田を捕えず小手によって上がる途中で止められる。

一瞬、その光景を見た真鍋に停止が起こる。

それが終了の合図。

刀は奪われ、刀身が砕け散り撃破アナウンスが鳴り響く。


「さて、俺の勝利な。今日から言うこと聞けよな?あ、辞めるのも禁止な。」


流れだけで言ったらまるで昭和のヤンキー漫画である。

しかしこの時は部員達は知らない、このコーチが起こす奇跡を。


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