そして2人は出会った
スピリット・アーマー。
魂の鎧の歴史は1000年とも言われている。
人間の心の形に反応し、その姿を変え、戦う者たち共にあった。
ある時は決闘に、ある時は戦争に利用されてきたが人類は歴史を紡ぐことでその力をルールで縛ることでエンターテイメントとして消化することに成功した。
スピリットアーマーは同名のスポーツとして世界各地に広まって行き学校の部活から世界大会まで行われ各企業がスポンサーで参入するなどし、その規模はどのスポーツよりも大きいものになった。
この物語は過去のトラウマからスピリットアーマーを辞めた青年と自分の運命を大きく変えようと抗う青年が出会い、そして全国大会を目指すものである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4月20日 私立鴻山総合学院
千葉県市川市にある学校で私立でありながら進学率も高く、有名大学へ進学する者も少なくない。
もちろん部活動も積極的だ。
野球は甲子園出場4回、サッカー部は全国ベスト8、バトミントン部は全国制覇経験もある。
文化部も吹奏楽部は全国常連、美術部や写真部なども全国で入賞者を出している。
そんな本校だがスピリットアーマーに関しては全くと言っていいほど実績がない。
最高成績県内ベスト8、初戦突破はここ5年どの大会でも果たせていない。
「まずいなぁ…」
空を仰見ながら1人の青年が呟く。
来ている制服は綺麗に着こなされ腕には腕章が付けられ『生徒会長』と書かれている。
「なにがだ?」
「勝てん。」
「あー、スピリットアーマーか。」
「そうだ。」
「無理やろ、この学校にはお前しかいい選手がいないし。」
「それじゃ困る。全国出れないと…」
「だったら港坂大習志野とか成田後世、それこそ木更津法令とかに行けばよかっただろ。お前の実力なら行けただろ。」
「それは私の実力ではない、学校の実力だ。」
「頑固だな〜。」
生徒会長の腕章をつけたその男は生徒会長であると同時に鴻山総合学院スピリットアーマー部の部長であった。
いくら私立と言えど強豪でない限り有望な選手は入ってこない。
そんな悩みを吐露しながら生徒会長は月に1度の校門挨拶運動を行う。
「にしても1年はいいよなぁ、希望に満ち溢れて。」
「そうだな…あ、あぁ!?」
生徒会長は登校する生徒に目をやりながら驚きの声を出す。
「どうしたんだよ大きな声出して。」
「あいつ!あいつなんでこの学校にいるんだ!」
生徒会長の視線の先には1人の生徒。
大きな欠伸をしながら歩くその生徒は制服を着崩し、髪は金色、如何にも適当な見た目だった。
生徒会長ならば指導対象に入る生徒だが声を荒げたのには別の理由があった。
「おい!お前、なんでこの学校にいる!」
「え?受験して合格したから…」
「そうじゃない!なんでスピリットアーマーをやっていない!」
「面倒いし、もうやる理由もないし。」
「面倒い!?ふざけるな!」
これまで冷静な顔で業務をこなしていた生徒会長は鬼の形相で1人の生徒に詰め寄る。
「おいおい!いきなりどうしたんだ、1年に向かって!」
「こいつはスピリットアーマーやってないって言うから!」
「戦力不足でおかしくなったか!?」
生徒会長を抑える副会長の腕章を付ける男、それでも勢いは止まらない。
「良いか!こいつはな…去年全国に行った中学のエースだぞ!」
「はぁ!?」
こうして気怠けな元エースと、強気のエースは出会うのであった。